9.16.2024

[film] Starve Acre (2023)

9月9日、月曜日の晩、BFI Southbankで見ました。

原作はAndrew Michael Hurleyの2019年の同名小説、監督はDaniel Kokotajlo - この人の前作/長編デビュー作 -“Apostasy” (2017)は宗教 - エホバの証人の教義を巡る家族と内面外面のじりじりくる攻防を描いたスリリングで怖いやつだったことを思いだした。

音楽はMatthew Herbert、耳鳴りよりもやかましいのを頭の奥に吹きつけてくる。

70年代、ヨークシャーのなにもなさそうな田舎で、考古学者のRichard (Matt Smith) は父から相続した土地と家 - それがタイトルのStarve Acre - に妻のJuliette (Morfydd Clark)と喘息持ちで病弱な一人息子のOwen (Arthur Shaw)とロンドンから移り住んで、目的はOwenの治療・療養と、いろいろ発掘できそうな何かがありそうくらいで、冒頭にも家の壁に刻まれた詩のような呪文のような文言が唱えられ、すべては始めから定められ絞りこまれて配置された何か、であるかのように展開していく。

とにかく真ん中の家族のふたり - RichardとJulietteの、最初から取り憑かれているかのような空っぽの表情を見ただけで前向きな何かなどは棄てるしかなくて、突然動物に暴力的な振る舞いをしたOwenの治療を始めたところで彼は突然倒れて亡くなってしまい、その喪失感を埋めるかのようにRichardは一心不乱に穴を掘って伝説の樫の樹の根を掘りあてて、Julietteの妹のHarrie (Erin Richards)がケアのためにやってきたり、近所のスピリチュアル系の怪しいおばさんが現れたり、でも息子を亡くしたふたりがどうがんばっても抗えないような何かが目を塞ぎに。

フォーク・ホラー、って十分に解っているとは言えないのかもなのだが、外からジェイソンみたいな異物怪物が現れて日常を壊していくのではなく、どんなに異様なことが起こったり現れたりしてもそれは日常に回収されてしまう/そうなるように習慣や言い伝えや宗教的な問答のようなのも含めてその地域一帯の様式として出来上がっているので逃れようがない、中にいる人にも外から来た人にも恐ろしくて、でもいちばん恐ろしいのは、そのありようが正しく認識されないまま嘆きや畏れがそのまま放置されてしまうことで、それは例えばー…

そのうちRichardは、父の遺品の箱にあった何かの獣の骨格標本を見つけて、その骨のまわりにうっすら肉とか血のようなものが付きはじめた気がして、そんなはずはないと大学の同僚に診て貰おうと持っていったらそんなの跡形もなく、持ち帰ったら再び… はっきりと筋肉みたいのとか眼球のようなもの - その濁った膜の向こうで - が動きはじめて…

息子の死後に地中から見出されたもの、蘇ろうとしているものがある - それがおそらく息子に替わるなにかだったり彼の念を伝えてくれるものだったり、のはずだとしたら.. 既にいっぱい指摘があるように”Don't Look Now” (1973) - 『赤い影』の影とか、こないだの"Lamb” (2021)とか、これってどういうジャンルに置くべきなのか。

とにかく蘇った大ウサギ - hare - は、半分造りものっぽいのだが、ものすごくこわい。”Donnie Darko”のウサギの100倍禍々しくてやばいの。ウサギ苦手な人 - 特にあの目が怖いという人がいるのであれば気をつけた方がよいかも。

画面全体に漂う白っちゃけた荒涼感と始めに書いた夫婦の気が抜けたのか何かにやられているのかの無言/無表情がたまんなくて、そんな様子のまま手には金槌がー。あんなに怖くできるのはMatt SmithかBarry Keoghanか。

イギリスって、なんかあると地面を掘る傾向があるよね。アメリカは空を見上げるのかなー?

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