9.09.2024

[film] 狗阵 (2024)

9月5日、木曜日の晩、Curzon Aldgateで見ました。
今年のカンヌの「ある視点」部門でグランプリを受賞している。英語題は”Black Dog”。監督はGuan Hu(管虎)。

2008年の夏、北京オリンピックと皆既日蝕を目前にしたゴビ砂漠の近くの小さな町。 冒頭、砂漠の道にどこからか大量の犬が走って湧いてでて(合成かな?) バスを横転させてしまう。お金をすられたという乗客がいたのでバスの運転手が警察を呼ぶと、ひとりでいたLang (Eddie Peng)に目を留めて、お前かー、って言う。

Langは刑期を終えて出てきた地域では名の知れたワルだったらしいのだが、無表情でほぼ喋らず(喋れないのか?というくらい喋らない)、地元に着いても勝手にどこかに行ってはならない措置を取られ、仕事もあてがわれるまま - まるでやるきなし - なのだが、彼が過去にやったこと - 人殺しらしい - をずっと根に持っている連中というか一家もいる。電話で連絡の取れた姉は離れたところにいて、動物園で働いているらしいアル中の父の面倒を見てくれないか、と言われる。

町では再開発に向けた住民の退去と大量の野良犬駆除作戦が始まっていて、あちこちで檻に入れられた野犬が騒いでいるのだが、一匹だけ、Langが立ちションをした後に必ず現れては消える黒い犬 - レースに出るようなハウンド系 - が目に入るようになり、そのうちそいつに獰猛で捕まらないので懸賞金がかけられているのを知るのだが、懸賞金とは別にそいつと仲よくなりたいと思って手を出したらあっさり噛まれて狂犬病になったらどうしよ? になったり。

そんなふうに噛まれて痛いめにあっても、過去の事件のせいなのか元からなのか、どれだけ誘われたりよくされたりしても町とそこの人々に馴染むことのできないLangと黒犬は近寄っていって、でも.. となるような大きな勢力が1人と1匹の前に立ちはだかるわけでもないのだが、砂漠からの風と再開発の波に押しやられるように人の群れる方から彼らは逸れていって止まらなくて、そこに流れてきたサーカスの一座とか、父親が寝たきりになってうち棄てられた動物園の動物(トラ)とか、ヘビ屋のヘビ - 食用みたいだけどほんとか? コブラとかいるよ - などが絡んでくる。

悲惨でも残酷でもなく、なんとかなるさも同調への諦念もない、どれだけぼこぼこにされ痛い目にあっても犬の目で淡々とどうなっちゃうのか.. を引いて見ていて、そこに砂漠の風が吹いてきて動物たちが野に解き放たれて、全体としてはシュールな辺境もの、のような。 こんな場所が本当にあるのだとしたら王兵にドキュメンタリーとして撮ってほしい。

地元の若衆を束ねている人がJia Zhangkeに似ているかも.. と思ったらJia Zhangkeだった。あと、Lang役のひと、坊主頭でちょっと青山真治に見えるところがあって.. 流れ者の話だったりするし、彼であってもおかしくないかな、とか。

Langの部屋にはPink Floydの”The Wall”のポスターがあって、着ているTシャツもそうで、彼のバイクにもロゴがあって、彼の壊れたカセットから歪んだ音で流れてきたりする。つまり、Pink Floyd vs. Led Zeppelin 、という映画でもある、と。

あと、エンドロールで、いかなる動物も虐待されていませんマークがでるので、だいじょうぶだと思う。

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