9.12.2024

[film] Against the Crowd: Murrain (1975)

もうじき感想は書くと思うが、公開されたばかりのフォーク・ホラー映画”Starve Acre” (2023)がなかなか怖くて(自分基準)、その監督であるDaniel Kokotajloが選んだ特集 - “Roots, Rituals and Phantasmagoria”がBFI Southbankで進行していて、有名な映画だと”Eraserhead” (1977)とか”Don’t Look Now” (1973) - 『赤い影』などがプログラムにある。自分の知らない土地と風土、そこにあるらしい風習や風景などが逃れられないなにかとしてよそ者を縛ったり殺したりにやってくるフォーク・ホラーって、異国に暮らすものがサバイバルを学ぶという観点(なんてあるわけないだろ)からも重要だと思うし。 これの前にやっていた” Discomfort Movies”の特集もその名の通りいやなかんじだった。なんでそんなにいやなのばっかり見せようとするのだろうか。

Against the Crowd: Murrain (1975)

9月7日、土曜日に見たのはTV放映されたドラマ2本で、60~70年代の英国のTVドラマってフィルムで撮られていてクオリティが高い(のが多い。自分が見た範囲では)のと、だからと言って箱を買うほどのマニアでもなく、こういう機会があれば見るようにしている。

上映前に”Starve Acre”の原作小説の作者Andrew Michael Hurleyからのイントロがあった。 
監督はJohn Cooper、ITVの制作で55分。

イギリスの田舎の村に、豚の疫病のようなのが流行ったというので獣医(David Simeon)が村に派遣されるのだが、村人からは変な目で雑な扱いをされ、彼ら全員からあの魔女のせいだ!と忌み嫌われている隣家にひとりで暮らしている老女のところを訪ねてみると..

原因不明の豚の病があって雑貨屋の子供が熱にかかって寝ているだけ(でも医者にはかからせない)で、因果関係はないし、特に怖いことが起こるわけでも映るわけでもないように見えるのだが、頑なにあの魔女のせいと信じてやまない村の男たちそれぞれの顔とか、ひとりで暮らして村八分にされて孤立している老女の住んでいる家の暗がりとかそこに置いてあるものとか、彼女の声のトーンとか、人々の狭間でやはり動けなくなっている感のある雑貨屋のひなびた店の様子とか、それらすべての組み合わせがどんより、天候のせいだけでなく村全体が暗く不吉な抜けられない穴のなかにいるようで、なんでこんなに禍々しく見えるのだろう? 息苦しくなるのだろう? ってなる。

もちろん、これらを禍々しくかんじさせてしまう何かって、全部ではないにせよ自分の内にも多少の要因はあるはずで、それってなんなのか? という話でもあるのだが、まずひとにはやさしくしよう、って。

あと、この景色とか温度感、日本の田舎にもまだあるよね(偏見)。 反ワクチンとかの根のはりかたも似ている気がした。


Omnibus: Whistle and I'll Come to You (1968) 
 

BBCの制作で42分。 監督はJonathan Miller。

初老でひょろっとした大学の先生(Michael Hordern)がイースト・アングリアの海辺の古いホテルにやってくる。ホテルは古いけど格式あるかんじで、食堂でのディナーは正装だがサービスも含めてどこかひんやりしていて、でも先生は気にせず昼間は発掘調査かなんかに出て、鼻歌を歌いながら地面を掘っていて、そこで出てきた骨みたいのを磨いてみたら模様が浮かびあがって笛のようなものだとわかり、そいつを軽く吹いてみると… (まず、そんなの吹くなって)

客室管理も厳格でちゃんとしたホテルのベッドの寝ていないほうの片方の布団がなんとなく乱れていたり、どこかで変な音がしたり、定番の怪談もどきのようだが、暗がりまで隅々丁寧に撮られているだけで十分、”Shining” (1980) 並みの怖さを被せることができる、というか現実として泊まるのがいやになる要素がいっぱい、目と耳を塞ぎたくなる怖さ。 

海辺の遠くのほうで揺らいでみえる人なのか何かなのか判別できない影とか、干してある漁網かなんかが人型に固まってくるところとか、絶妙なところを突いてきて、うまいなあ、なんて感心する余裕なんてない、無差別にざくざく殺していくホラーよかこっちの方が遥かに怖い、というか効く。先生がそんなに怖がっているように見えないところまで怖い。

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