8.10.2024

[film] Thelma (2024)

8月4日、日曜日の昼にCurzon Mayfairで見ました。
今年のサンダンスでプレミアされた作品。 軽く素敵なコメディだった。作・監督・編集はJosh Margolin。

LAにひとりで暮らすThelma (June Squibb ..94歳だって)はあまりできのよくない孫のDanny (Fred Hechinger)をかわいがっていて、でもその流れでまんまとDannyを語るオレオレ詐欺 - 事故を起こして逮捕されちゃったよう助けて - に引っかかって自宅内でかき集めた現金一万ドルをポストに放り入れちゃって、しばらくしてがーん … てなる。

お金を取られてとても困る、ということではないものの、その前にDannyと一緒に”Mission Impossible 6” (2018)でTomがBlackfriarsの橋を走り抜けていくシーン – これ何度見ても絶対むりなやつだから – を見て彼すごいねえ、なんて言っていたThelmaは、改めて手元の新聞に書いてあった”Mission Impossible”の大見出しを見るとなにかがめらめらと燃えあがるのを感じ、ひとりで現金を取り戻すべく立ちあがる。

のだが、頼りになりそうな知り合いに電話してもみんな死んじゃっていて、仕方なくそんなに仲よくなかった、いまは介護施設にいるBen (Richard Roundtree)に会って、彼のスクーターを半ばひったくるように盗んで、でも彼も追いかけてきたので一緒に行くことにして、それから知り合いのMonaのところに行って彼女の寝室にあった拳銃を盗んで、いろんな点でものすごく危なっかしい旅が始まる。

他方で突然糸を切るように出ていかれた側の家族、孫のDannyと娘のGail (Parker Posey)と彼女の夫のAlan (Clark Gregg)は、パニックと後悔とやつ当たりを繰り返し、言い争ってはぐしゃぐしゃになりながらThelmaの行方を追っかける。Dannyの自分はなんにもできない役立たずだ、という嘆きと、どうせ病弱の老人だからとタカを括る娘夫婦の見下しが心地よくひっくり返されていくのがたまらない。ものすごく心配しているが故の、であるとは言え、この辺は縮図としか言いようがない。

そして現金が送られた先の私書箱の前にBenとふたりで張りこんで、そこに現れた青年の後をつけて悪の巣窟であるしょぼい骨董品屋に乗りこんだら、そこにいたのがよれよれのHarvey (Malcolm McDowell)とその孫の男子で、ThelmaとDannyの関係とどこか似たような行き場も捨て場もないダメなふたり - 彼らのお店はもう潰れそう - を見て、ああ、ってなるのだがそれはそれとして彼の口座から金を戻そうとする(のだがPCからの振込だと当然うまくいかなくて..)。

全体としてはしょんぼり澱んでいたおばあちゃんが事件をきっかけに目覚めてめちゃくちゃをして周囲を振り回す.. という昔からある痛快家族コメディなのだが、おばあちゃんの年代の方に近くなっている身としては笑えるところでそんなに笑えず、自分がそういう事態になったらどうするか.. ばかりを考えてしまうのだった。孫なんていないけど。

そして、最後にすべてがおばあちゃんと孫の話に落ちてくると、それが見えてしまうと、それはそれで泣いてしまうのだった(孫はどれだけ歳をとっても孫であるからー)。 Dannyの像は監督自身の投影だと聞くと余計になんか…

反対側の悪役に典型的な悪漢タイプを持ってこないで、そちらにも孤立したおじいちゃんと孫をぽつんと置いたのも出来すぎのようでたぶん考えたのではないか。

中心にいる3人の老人たちがみんなすばらしい。June Squibbはもちろん、Richard RoundtreeもMalcolm McDowellも、迷いなくそのままそこらを彷徨っていそうな佇まいで、あの格のようなものはどこから滲んでくるのか。

そしてParker PoseyとClark Gregg夫婦のなんでもいちいち間に挟まってきてうざくどうでもよくかき回してくれる絶妙な距離感とか。

MIみたいにシリーズ化すればよいのに。


地震、起こりませんようにー。

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