8.07.2024

[art] Sleeping Beauties: Reawakening Fashion

8月2日、金曜日の午後、Metropolitan Museum of Artで見ました。
飛行機が発つのは23時過ぎ(結局ここから更に2時間遅れやがって)で、そこを目がけて行けるところまで行く。

14時くらいに入ったのだが、この展示は館内で別の予約(無料)が必要で、QRコードを読んでキューに入ると、75分待ちと出たのでううう、ってなる。この時間のない時に1時間がどれだけ貴重かわかってほしい、ってぶつぶつ言いつつも1時間なら簡単に潰せてしまうのがMetのおそろしいところで、どこになにがあるかだいたいわかっているので、それらを回っているうちに1時間が過ぎる。他の展示でおもしろかったのは” Ink and Ivory: Indian Drawings and Photographs Selected with James Ivory”。 4月にここで見た展示 - ”Indian Skies: The Howard Hodgkin Collection of Indian Court Painting”と並べて、英国の文化人にインドのアートがどんな影響を与えたのか、を見る。

展示品は約250、うち75が新規収蔵品。展示会場の経路は腸のイメージ(ぐるぐる)になっていて、ここで体験したことは体外のトイレに排泄されるだけでなく養分については美術館とか業界の方に吸い取られるのだよ、と。

通常のファッションの展示にあるような人型に嵌められて植木のように直立しているものばかりではなく、デリケートすぎるからかふわりと横に寝かせて置かれているものもある。ガラスで隔てられているものもあればそうでないものもあり、近寄りすぎないように、って人工音声のアラームが頻繁に聞こえてくる。

目で見て眼福、のものだけでなく触覚、嗅覚、聴覚に訴えるものもあるし、素材観点では糸と布だけでなく海のもの、空のもの、石に花に虫に鳥に、ヴァーチャルのも含めて森羅万象の生物無生物あらゆるものが並べられ、従来のわーきれいー から先にというのか奥にというのか、踏みこんだものになっている。

服やアクセサリーとして人の手で縒り合されたものは、それだけでファッションとして立ちあがるわけではなく、まずは眠れる美としてあって、それをファッションとして呼び覚ますのは自然と感覚のインターアクションであり秘儀とか魔法のようななにかなのだ - ブランドでもSNSでもなく – というあたりまえのことを語ろうとしていて、更にはそれを引き起こす場所としての美術館や今回のような展覧会、あるいはMet Galaのような社交イベントの果たす機能、についても忘れずに強調されていたような。あとデジタルがもたらした精緻化と解像度の深化もあるか。 

それはそれでよくわかるし、ストーリーとしてちゃんとしたものだとは思うけど、結局社交界とかハイブランドとか、それを支える富裕層のもんよね、ってなってしまう。自然が、とかいうのならまずちゃんと護ってから言えよ、って。

あと、2011年のここでの展示 – “Alexander McQueen: Savage Beauty”からの繋がりを強く感じた。野生からの転生とか。

カタログは函入りのえらくちゃんとしたやつで、これも結局は富裕層向けの記念品よね、って買うのやめてしまった。


Paula Modersohn-Becker: ICH BIN ICH / I AM ME

いつもは逆のルートで行くのだが、今回はMet → Neue Galerie New Yorkの順で見ました。

ドイツの初期表現主義の画家Paula Modersohn-Becker (1876-1907)の特集展示。
31歳で最初の子を産んでその18日後に亡くなってしまった彼女の家族との絵画、リルケとクララの肖像、いろんな子供達に猫、等もよいが、沢山のセルフポートレートが目をひく。それぞれの肖像は顔立ちや手法もひとりひとりが随分違って見えて、でもそれぞれが「わたしはわたしだよ」と静かに、確かに言ってくる。

女性画家で初めてヌードの自画像を描いた有名な“Self-Portrait at 6th Wedding Anniversary” (1906)もあって、その穏やかさ、静けさにうたれる。絵の中の彼女はお腹が大きいのだが、描いた時点で彼女は妊娠していなかったって…

これはカタログを買った。Neue Galerieのカタログは時間をかけて集めていて、そういえば前回の展示“Klimt Landscapes”のは買っていなかったのだが、重いのでまた今度。

いまTate Modernでやっている”Expressionists”の展覧会でもGabriele MünterやMarianne Werefkinといった女性画家の作品が多くあって、いろいろ見てみたくなったかも。

時間があったらWhitneyにも行きたかったのだが、湿気がいっぱいで疲れたので無理しないことにして、の本屋のRizzoliに行って、散々楽しく悩んで、一冊だけ - Julie Satow の”When Women Ran Fifth Avenue”のサイン本買った - デパート好きだから。


行きのフライトでは”Disenchanted” (2022)を見て、戻りのフライトでは”Turtles All the Way Down” (2024)を見た。後者はなかなかよい青春映画 - 原作はJohn Green - だと思ったが、前者は1作目があんな楽しかったのに比べるとDisenchanted、としか言いようがなかったかも。

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