8月12日、月曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。
中国語タイトルだと『弟弟』 - “Younger Brother”という意味 - だが、これはアメリカ映画。(Edward Yangのは”Yi yi” (2000) ね)
作・監督はSean Wang。今年のサンダンス映画祭のUSドラマ部門でAudience AwardとアンサンブルがSpecial Jury Awardを受賞している。
2008年に西海岸のフレスノで13才だったChris Wang (Izaac Wang)の、多分に監督のあの頃のことなどを反映しているであろうcoming-of-ageもの、というと”Superbad “ (2007)とか、Eighth Grade” (2018)とか、”Mid90s” (2018)とか、いくつか簡単に思い浮かんで、あれらって主人公の軽妙さと苦さと、それを乗り越えるか乗り越えられないかの線上に見え隠れするいろんな思いとかエモが結果としては爽やかななにかを運んでくれた気がするのだが、これはちょっと違って、ずっと苦いまま、なんかもやもやしている。
家にはいつもご機嫌でかしましく、なにかとDidiと子供っぽい姉弟喧嘩を繰り広げる姉Vivian (Shirley Chen) と画家になるのが夢でいまも描き続けているママ(Joan Chen)と、なんにでも口を出してくるおばあちゃん (Chang Li Hua - 監督の実の祖母だそう)/ママにとっては義母(姑)- がいて、父は海の向こう台湾に出稼ぎに出ていて帰ってこない。英語ができないおばあちゃんとママの会話は中国語で、姉弟も中国語ができないことはないみたいだが、ほぼ英語。
学校にはいろんな人種の子達がいて、それぞれで固まるわけでもばらけているわけでもないのだが、結果的にそうなって束ねられる集まりの外観がなんか嫌で、別のグループや子達と付き合ってみて、その流れでMadi (Mahaela Park) っていう女の子に惹かれて彼女と会ってみたりするのだが彼女からは「アジア系にしては」魅力的、とか言われてそれって… と微妙な空気になって関係を切っちゃったり、それらの関係が吹き溜まってくる箱がFacebookが出てくる前にあった(まだあるのかな?)MySpaceで、彼はそこにバカでガキっぽいビデオをアップして得意になっていたのだが、いい加減そういうのも恥ずかしくてやめたくなってくる年頃で、なのでちょっとかっこよく見えたスケーターの輪に入ってビデオを撮ってみたりするのだが、クールな彼らからするとぜんぜんいけてる映像にはなっていなくて自己嫌悪がきたり。
他にもつまんないことで友達を殴っちゃったり、いろいろあって母親ともぶつかって家に帰ってこなくなり、でも母親はそんな事態にもぜんぜん動じないでお姉ちゃんの時にもあったのよ、とか。
結局誰ひとりDidiを受け容れてくれる人や集団は現れず、じゃあ”Quadrophenia” (1979)みたいに海に向かって突っ走るかというとそれもできず、これまでのcoming-of-ageものとは結構ちがう方 - 主人公がもやもやを抱えこんだまま蹲ってこちらを向いていて、なにかのきっかけで弾けたり開けたり変わったりすることもなく、ひとり内に篭って悶々としてばかり - そこにアジア人的な家族や集まりのありようが絡んでくるのでどうしようもなくどん詰まりなかんじが漂い、でもそれがよいのかも、ってしばらく経ってから思うようになった。
そんな彼の居場所から少し離れて最強なのがママで、あの家でひとり一番苦労して疲れているであろう彼女が最後に媚びることも同調もしないであの調子なのはえらいなー、ってDidiよりも印象に残ってしまうのだった。
8.26.2024
[film] Dìdi (2024)
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