8月31日、水曜日の晩、NYのSt. James Theaterで見ました。
Sufjan Stevensの2005年のコンセプトアルバム“Illinois”をテーマにしたミュージカルで、ブロードウェイに来る前はPark Avenue Armoryでやっていたそう。
ミュージカルの方はタイトル末尾に”e”が追加されて”Illinoise”になっている。
今回は出張があったのでひと晩だけ抜けて(許されていいに決まってる)、見にいった。出張がなかったらプライベートで休暇を取って見にいくつもりだった(というくらいの)。
しかしブロードウェイ、チケット高いよね。
Sufjan Stevensの“Illinois”がリリースされた後の彼のライブはNYのBowery Ballroomで見て、衝撃を受けてその後の彼のクリスマス・ショーも見て、その後のリンカーンセンターでのAmerican Songbookのショーも見て、渋谷クアトロのも見て、結構見てきた方なので、今回のはなにがなんでも、だった。
“Illinois”は個人的には生涯ベストに入ってくるくらいの作品 – The Whoのいくつかと同じくらい少年の思春期(のぐちゃぐちゃ)を描いた名作だと思っている。 なんで今? というのはあったが。
演出と振付はNY City BalletのResident ChoreographerであるJustin Peck(本作でTony AwardのBest Choreographyを受賞)、ストーリーは共同でJackie Sibblies Druryが加わる。90分、休憩なし。
ステージの上の棚に配置されたバンドは歌い手3人を含む14人編成、ダンサーは12人。”Illinois”からの曲はバンドによって演奏され歌われるが、追加の台詞やダンサーたちが歌を口にすることはない。元の楽曲の世界がもっていた純度のようなものは維持されたまま、その境界線上で、ダンサーたちがイメージを広げていくような – “e”の追加により、Illi-noiseになった - よいノイズとして。
シンガーたちは羽を背に背負って高いところから歌うのだが、そういえば元のSufjanのライブでもバンドの他にチアリーディングの恰好(全員まっしろ)をして羽をつけた男女がコーラスをしたり踊ってチアしていたのを思い出す。
ダンサーたちは、いろんな普段着を多く着てて、曲によって扮装や役割やメイクをとっかえひっかえしつつ、主人公たちの周囲をずっと舞ったり組んで踊ったり。
彼のアルバム”Illinois”については、当初アメリカの50州ぜんぶをテーマにして州別に作っていくと宣言していて(その後撤回)、今作はイリノイの歴史や文学や暮らしについてリサーチをした上で作っているのだが、制作(作詞作曲、演奏、編集など)は彼ひとりで、アストリアとブルックリンで行っていて、スタイルはフォークからゴスペルから現代音楽まで、とてもパーソナルな個の内省をうながす – 彼の作品はぜんぶそうだけど – 作品になっている。
1893年にシカゴで開催された万国博覧会に象徴される明るい都市の未来と連続殺人鬼John Wayne Gacy, Jr.が露わにした都市の闇、主人公であるHenry (Ricky Ubeda) 個人の記憶 - サマーキャンプとか、宗教的体験など – を重ねて並べたりしつつ、彼の身に起こる別れと出会い、孤独と再会、復活と啓示など、誰もが辿っていく成長の断片を連ねて、そこには度々ランタン(蛍?)を手にしたダンサーたちが虫のように寄ってきたりする。その渦に感応して開いたり閉じたりしていく花びらの動きが、このアルバムを貫くエモーションの明滅をうまく表現できていたように思う。配られたPlaybillにはHenryが劇中で書いていたイラスト入り手書きのJournalの抜粋が挟まっていて、この辺もたまんない。
ヴォーカルは全員とても、本人よりも上手かも、と思ったけど、男性の声はやや滑らかにうますぎてSufjanの声の寂しいひとりぼっちのかんじがもう少しあれば、とか。
“Illinois”のアルバム世界を緻密に申し分なく再構築したこの舞台と、Sufjan Stevensのライブとどっちがよいかというと、どっちもすばらしいのだが、みっともなく恥ずかしいとこも含めてぜんぶ素で晒してしまってうまくいったらわーってなるライブも捨てがたいのよね、になるのだった。
あと振付はTwyla TharpとかMark MorrisとかNew Yorkのモダンダンスを見てきた者からするとなんだかとてもクラシックで懐かしい動きのがたくさんあったかも。
Sufjan作品でいうと、2007年にBAMで一度だけ上演/上映されたThe BQE (Brooklyn–Queens Expressway)をリバイバルしてくれないだろうかー。
8.06.2024
[theatre] Illinoise
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。