8.03.2024

[film] Longlegs (2024)

7月25日、木曜日の晩、Curzon Aldgateで見ました。
ポスターだけでなにやら十分怖そうだし、予告は幽霊ばっかりみたいなもやもやでわけわかんないし、でも翌日はDeadpoolとWolverine を見ることになっていたので変なのが残っても洗い流してくれて大丈夫かも、と。

冒頭、T.Rexの”Get It On (Bang a Gong)”の歌詞の一部が字幕で映されて、エンディングには曲そのものが流れて、これが映画のテーマに近い何かを明確に指し示しているかというと、そんなでもない気がして、どちらかというとグラムの匂いたつような陽気さ、狂躁状態がもたらす不気味で解読不能な何かがじんわりとやってくるような。

最初のシーンは古いスライドのような真四角にちかいフレームの中、少女が家の前に停められた不審車に近寄ったらそこからお化けのように登場してわけのわかんない言葉を吐きちらすLonglegs (Nicolas Cage)と出会うところで、でもこの白塗りおばけみたいなのがNicolas Cageだったのかと知るのはエンドロールで、この段階ではトラウマとして残りそうな変な動物のきもち悪さばかりが貼りついてくる。

そこから時間が経って、おそらく冒頭の少女が成長してFBIのエージェントLee Harker (Maika Monroe)となって、不気味かつ気味の悪い連続殺人事件 - 突然家族を皆殺しにして自分も死んだり - を同僚 - 最初の彼はあっさり殺される - と組んで追っていくのだが、その過程でHarkerには不思議な能力があることがわかって、それを使って犯人もしくは犯人像に迫っていくと、そいつは、一連の事件の背後にいそうななにかはHarkerの幼時のあの記憶に深く根差したなにかであることがわかってきて…

ホラー仕立て、というほどホラーでもない(そんなに飛び散ったり切り裂かれたりしない)謎解き、呪い解きのミステリーで、見えない何かが伝播していって、それを追いかけて見ようとしたらその時には既にもう.. となるのがわかっているのになんで彼女はFBIなんかに入ったのかしら? という囚われの連鎖 - Longlegs - を描く。TailではなくLeg。

ぼさぼさの白髪に白塗りのしわしわで変なラメのジャケット羽織って部屋にはT.Rex “The Slider”のでっかいポスターが貼ってあるグラム・ロッカーで、捕まったら簡単に.. って、Nicolas Cageのいつもの「怪演」なのかも知れないが彼にとっては簡単すぎるし弱すぎると思うのでもっとめちゃくちゃやって暴れてほしかった。不死身設定にしてシリーズ化すればよいのに。

反対側でHarkerを演じたMaika Monroeさんの崩れない硬さがよくて、彼女、”It Follows” (2014)に出ていたひとかー。(今作と同じようなやつでは..)

黒沢清の”Cure”(1997)に似ているところは確かにあるのだが、あの映画にあった誰も責任とれないとらない風に吹かれろ、みたいな手放し状態がもたらす不可視の、底なしの怖さはこっちにはないかも。 ぎりぎりまで決着・白黒つけたいみたいだし、律儀にいろいろ言葉で説明してくれるし。でもなんか、すこし真面目にやり過ぎている気がした。怖いシンボルとか兆候はひと揃いあるのだから、もっと好きに動かせばもっと異様で異形ななにかが前面に出てきたと思うのに。

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