12月23日、火曜日の晩、Picturehouse Centralで見ました。
原作はDenis Johnsonの同名中編小説(2011 - 初出はThe Paris Review誌で2002年)、監督はClint Bentley。 2025年のSundanceでプレミアされて、Netflixなので日本でも見れている?
20世紀の初め、アイダホの山中に木こりのRobert Grainier (Joel Edgerton)がいて、寡黙でひたすら森のなかで木を切って倒して当時真っ盛りだった鉄道事業の開発に関わっているのだが、現場で仲間が中国人労働者に対する差別と暴行(突き落として殺す)を目にして、それ - 中国人の幽霊のような - がトラウマのように何度も出てくる(原作では彼が差別に加担した描写もあるそう)。
仕事の様子は差別のパートを除いても過酷で、爆発物を扱うArn (William H. Macy)とかお喋りなFrank (Paul Schneider)とか、印象に残る仕事仲間も出てくるが、みんなころころ落ちたり簡単に亡くなったりしてて、墓のかわりに木の幹に彼らの靴がぶら下げられるだけで次の現場に移っていく。これらの流れや経緯については、主人公は喋らないのでナレーターのWill Pattonがゆっくり訥々と語っていく。音楽はBryce Dessnerで、終わりの方でNick Cave & Bryce Dessnerによる挿入歌が流れる。
やがてRobertは美しいGladys (Felicity Jones)と出会って冗談のように夢のような恋におちて、何度か仕事の旅で離れては戻り、を繰り返していくうち、小川のほとりに一軒家が建って、一人娘が生まれて、家族といるときはとても幸せそうで、家族から離れて仕事をしている時はとても辛そうで、でも家族のためには仕事をするしかないのでひたすら働いて家に戻ろうとする。
しかしそのうち大きな山火事で家族を失うと、彼の悲しみの底が抜けて、この辺から監督自身も認めているし崇拝しているというTerrence Malickそっくりの、宙に浮いたような画面になるの。いつも微笑んでいてこちらに手を振ったり手を差し伸べてくるもういない、手の届かない彼女たちの、家族の像、キスして抱擁する像。それはいつも、いつまでも美しく弧を描いて彼のまわりにあって、そうでしょうとも、としか言いようがないのだが、見ている方はどうしたものか、に少しなる。
思い出の中ではすべてが美しい。失われてしまった、二度と戻ってこないものであれば猶更、Robertのように転々と場所を移動し、放浪のなかで仕事をして稼ぐしかなかった男にとっては、というのはその通りなのだろうが、そこにただでさえくどく残るTerrence Malickの光景はやはりどうも… で、でもRobertはずっとそのまま、アポロの月着陸の頃まで生きたのだ、ってなると彼にとってのGladysの像はほぼ信仰の対象のようになっていたのだろうな、って。
Joel Edgertonの黙ってずっとそこにいて、ただただ切ったり運んだりをしているだけの、少しだけ一緒にいた家族をひたすら愛しただけの、長く伸びたレールの上をまっすぐ走っていくしかなかった人生が、最後の最期に、いきなり飛行機に乗るところまでくる。TrainからAirplaneへ。 飛行機の上、レールなんて関係ない、上下の感覚が失われる状態を通して、彼はようやくGladysを。
邦画がこういう映画でぜったいにぶっこまないと気が済まない「幸せ」みたいなのを微塵も感じさせないJoel Edgertonの熊みたいな仏頂面がただよくて、彼でなければ成り立たない話だったかも。
ぜんぜん、真逆といってよいくらい違うタイプの人と映画ではあるが、“The Life of Chuck” (2024)で描かれたChuck (Tom Hiddleston)の生涯のことを少し思った。 自分とひとつの家の内側にすべてを反転させて抱えこみ、その周縁を軽やかにステップを踏みつつ駆け抜けていったChuckの一生。おなじ宇宙でも、おなじアメリカの近代でもこうも違ってくるものかと。
ヴェネズエラのカラカスは90年代に仕事で行ったことがある。とても綺麗な街だった。ブッシュも相当バカだと思ったが今度のはあまりに酷すぎて恐ろしい。あんなことが許されてはいけない。
1.06.2026
[film] Train Dreams (2025)
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