1.03.2026

[film] Sentimental Value (2025)

12月24日、クリスマス・イブの水曜日の晩、Curzon Sohoで見ました。

監督は”The Worst Person in the World” (2021)のJoachim Trierで、脚本も同作と同じくEskil Vogtとの共同、主演のRenate Reinsveも同じく。
昨年のカンヌでプレミアされてグランプリを受賞して、来年のオスカーの外国語映画賞にもノルウェー代表でエントリーされている。

高名だけどキャリアとしては下がりめ、と周囲から見られている映画監督のGustav Borg (Stellan Skarsgård)が妻でサイコセラピストのSisselと暮らした一軒家がオスロにあり、Sisselが娘たちを育てて亡くなった後、Gustavはここを出ていって、今は次女のAgnes (Inga Ibsdotter Lilleaas)が夫と息子とそこに住んでいて、長女のNora (Renate Reinsve)は有名な舞台女優になっているが、冒頭では本番前に舞台恐怖症になっていたり、既婚の男性Jakobと関係を持ったり、不安定ながらどうにか乗り切ったりしている。

母への虐待を間近で見てきたNoraにとってGustavはずっと天敵で顔も見たくない関係にあったが、彼が突然コンタクトしてきて、準備している次の映画に出てくれないか、という。オファーされた役は戦時下のナチスによる拷問がトラウマとなってあの家で自殺した母(Noraたちにとっては祖母)Karinを元にしたキャラクター = 主人公で、Agnesが暮らして、自分も沢山の思い出があるあの家で撮影するという。

ずっと父に不信感と嫌悪を抱いてきたNoraは受け取った脚本を読まずに拒否して、子供の頃Gustavの映画に出演させられてあまりよい思いをしなかったAgnesも理解を示すが、オスロの家がいまだにGustavの所有になっていることに憤慨して、もともとあった父と娘たちの間の溝と不信は深くなっていく。

でも、Noraが拒否したGustavの映画の方はハリウッドの昇り龍女優Rachel Kemp (Elle Fanning)が興味を示して、彼女がNetflixとかにも声を掛けて動いてくれそうで、Rachelは撮影現場となる家にもやってきて、Gustavとの仕事をとても楽しんでいるようで、娘たちはそれをしらーっと眺める。

やがてNoraのJakobとの関係は破綻し、Rachelは自分にこの役は相応しくないと降板し、結果映画への出資の話もなくなって、もともと酒飲みで体を壊していたGustavは外で酔っぱらって倒れて…

父と娘たちの間の溝を埋める話、というよりは、あの家で祖母はどうして亡くなったのか、そんな家と高圧的な父の元でNoraは何を見ていたのか、そして父の用意した脚本には何が書かれていたのか - 父はなぜこれをNoraに演じてほしいと思ったのか、これらをNoraとAgnesのふたりの関係のなかに紐解いて、姉妹ふたりの抱擁のなかに浮かびあがったものとは。

rationalでもlogicalでもない “sentimental” valueというと情緒的な、まあいいじゃないか(小津の映画にも出てくるアレ)的なものとして捉えられてしまうのかも知れないが、それよりは、「あの時どうして...」の思いを姉妹が紡いでいくようなものだと思って、Gustavはもうどうでもいいか、と。(日本だと勘違いした親父たちが大量発生して大絶賛しそうなのがちょっと嫌)

もっと強いトーンで、父と娘の対決を正面から描くことも、Gustavをもっと嫌な奴として描くこともできたはずだが、そうはしなかった。とてもやさしい、北欧的なドラマなのかも。
“Rois et reine” (2004) – “Kings & Queen”を撮ったArnaud Desplechinだったら、この家族をどう描いただろうか。(あの映画も主人公の名前はNoraだった)

予告ではFacesの”Ooh La La”が爽やかに流れてきて、冒頭にTerry Callierが聞こえてきたり、音楽のセンスは変わらずよい。 Gustavが老いぼれた制作スタッフに会いにいくシーンで唐突に飛びこんでくるRoxyの”Same Old Scene”とか。 “Same Old Scene”が聞こえてくると、わけもわからず動揺してしまう自分にはなんとかしたい。


新年最初の新作映画は、Jack BlackとPaul Ruddの”Anaconda” (2025)でした。
新年最初のドキュメンタリーは、”Menus-Plaisirs Les Troisgros” (2023)をようやく。4時間で2Lくらいよだれがでた。
この状態で明日はパリ日帰りしてくる。

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