1.15.2026

[film] Menus-plaisirs - Les Troisgros (2023)

1月2日、金曜日の晩、BFI Southbankで見ました。 “Anaconda” (2025)を見た後、今年最初のドキュメンタリー作品。

1月のBFI Southbankでは、この作品のニューリリースに合わせてFrederick Wisemanの特集があって、Curzon BloomsburyのDocHouseでも小特集がある。 フランスにパートで住んでいるらしい監督本人が来てもおかしくなさそうなのに、これらの特集に顔は出さないみたい。

日本では『至福のレストラン 三ツ星トロワグロ』という邦題で既に公開されていた作品。上映時間4時間。

90年代からLa Comédie-Française、パリオペラ座、Crazy Horse等を対象に撮り始めたフランス文化シリーズの流れ、でよいのか。

ロワール地方にあるレストラン数軒 - Troisgros家が経営するビストロから高級なのまで、マーケットでの食材調達から仕込み、レシピやメニュー、ワインの検討など内部の議論から、調理の現場とそれを供するテーブルのセッティング、皿の仕上げ、客の嗜好やアレルギー対応、接客を経たあとの客の反応まで、更には食材 – はっぱ、きのこ、チーズなどを提供する農家のあれこれまで、ナレーションも字幕による説明もほぼなく、でも画面上でなにが起こっているのか、どうなったのか、は見ればわかるようになっている。

レストランのドキュメント – 特に三ツ星を獲ったりしているところの裏側などは、TVなどでいくらでも紹介されるようになっているので、だいたい何をやっているのか、どうなるのかはわかって、TVのそれと違うのは、それを食べたひとが「おいしいー」とか聞きたくもないようなことを言わないこととか、大失敗や問題が起こって解決のために偉い人がやってきてざわざわしたりの緊迫した盛りあがりもない。食べた人がテーブルで微笑んでいるシーンはあるが、何を食べてそうなったかはわからないし。すべてがそれに関わる集団作業の流れ、個々の分担作業として確立され、客を迎えて食事を終えて帰るまでが流れるようなサービスとして供され、それがどんなふうにして実現されるのかを細部まで静かに追っていく。

レストランの世界は特殊なものではなく、世界のどこにでもあって、それは監督がこれまで描いてきたいろんなビジネス、職場、裁判所、美術館、図書館、地方自治体、などと変わらない、それなりの普遍性をもった何かを追求していく世界である、ということ – でもひとつ気になったのは、これがフランスにあるフランス料理のレストランである、ということ。 指導された若いシェフが分厚いエスコフィエかなんかの料理書を見る場面があった(そんなの読んでないの?って思った)が、フランス料理の食材やソース、味付けや盛り付けに関する伝統を伝統芸的に継承してやっている側面もあって、つまり中華料理の現場とフランス料理のそれとでは、違ってくるところも多くあるはずで、それってどうして、どこからくるものなのか?というのを細かい分岐のなかで考えさせてくれる - これもまたいつものWisemanの映画なのだが。

自分の味覚の基礎は90年代のNYのフレンチ - Lutèce, Cirque, Montrachet, Chanterelle, Bouley, Danielなどで作られたので、ああーおいしそうだなーいいなー、ばかりだった。イノヴェイティブなんてジャンルも概念もなくて、ひたすらバターとクリームまみれだったけど、お腹が破裂しそうになることも多かったけど、なんだこれは、の連続だったし。でももうほとんど残っていない。あれらを味わってお腹にいれることはもうできないのかー っていうのも思った。

イギリスのフレンチは、そんなに数は行っていないのだが、やはりNYのそれとはまったく違っておもしろい。特にチーズとか、スティルトンのすごいのってめちゃくちゃすごかったし。

最近のWisemanの取りあげる世界、彼が3~4時間かけて映しだす世界って、美術館でも図書館でもバレエでも、今回のフレンチレストランでも、自分が好きなところ(逃げこむ先)ばかりなので、ここで静かに淡々とがんばっている人たちの世界に触れてしまうと、世界ってそんなに悪くない、とてもよい場所のように見えてしまう。

でも実際にはなんでこんな… って打ちのめされてばかりなのよね。

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