6.25.2024

[film] The Sugarland Express (1974)

6月22日、土曜日の晩、ボローニャの映画祭をやっているCinema Arlecchinoで見ました。

時間は21:30 - この裏、21:45からは野外の聖堂前のでっかい広場で『捜索者』(1956)の70mmリストア版がWim WendersとAlexander Payneのイントロ付きで上映、というのがあったのだが、見たことがなかったこっちにした(でも『捜索者』の70mmだって見たことないといえばそうなのだが)。

Steven Spielberg監督作にこんなタイトルの映画あったんだ? と思って邦題を見たら『続・激突!/カージャック』だって… もうさー、過去に売らんがためで付けられてしまったこういうしょうもない邦題、じじい達が懐かしんで偉そうに振り回すだけなんだからちゃんと見直さない? こういう歴史は修正していいと思うよ。

映画祭の予約サイトがしょうもなかったのは書いたけど、この映画を予約したConfirmationのメールが来ていなくて文句いったら、割と普通に起こっているらしく、「どの辺がいい?」って空いている席にさっさか案内してくれた。TIFFもそうだけど、映画祭のチケット予約システムって、どこのフェスのもなんであんなにしょぼくて使えないのばっかりなのか?

映画館は昔からある町の映画館ふうで、シアターはひとつ、十分にでっかく座り心地よく見やすくて、これから映画を見るんだわ、のどきどきがやってくる。 シネコンの小さいシアターって、大きめの会議室に入るみたいで盛りあがらないよね。

予告も挨拶もなしに時間が来たら電気が落ちてすっと始まる。かっこいい。

実際の事件と実在した人たちを元にしたお話し、Steven Spielbergの劇場用映画第一作で、John Williamsが彼の映画音楽を担当した最初で、Toots Thielemansのハーモニカがずっと残る。撮影はVilmos Zsigmond。

冒頭、浮浪者みたいな人が道路脇の廃車をがさごそしている横の道路にLou Jean (Goldie Hawn)が降りたち、歩いて刑務所まで向かって服役中の夫Clovis (William Atherton)に会うと、自分たちの赤ん坊Langstonが里親に引き取られちゃうので、なんとかしないのならあなたと別れるから、って詰め寄り、わかったよ、ってClovisが言うとふたりはそのまましれっとそこを出て、老夫婦のボロ車を乗っとり、そのポンコツをチェックに来たハイウェイパトロールのSlide (Michael Sacks)を人質にして、今度は彼のパトカーで里親と赤ん坊のいるSugarlandの地を目指す。

Slideからのエマージェンシー・コールを受けたCaptain Harlin(Ben Johnson) – よい人っぽい - はとにかく人命を最優先に、と警護するフォロワーや車の数を広げて騒いでおおごとにし、敵を簡単に仕留めたり終わらせたりできないようにして彼らから少し離れて注意深く見つめる – というより見守るように追っていく、とメディアの騒ぎも広がって沿道はお祭り騒ぎになっていったり。

犯人の方も人質のSlideと少しずつ打ち解けて共犯のような関係ができていって、ガス欠の時にもチキンを食べたくなった時にもうまく一緒に切り抜けて、彼らの後に連なるでっかいコンボイはどこまでもいつまでも続いていくかに見えたのだが。

逃避行カップルの刹那や悲壮感やとげとげしさはなくて、それはまず逃げる、というより子供の待つSugarlandに向かう – そこに行きたい/行かなきゃという思いが雪だるまになってつんのめって加速して、そのLou Jeanのつんのめりに全体が引っ張られていくので、そりゃそうなるよな、っていう展開にはなんの無理もない。それを可能にすべく道路も車も銃弾もぜんぶが彼らに道を譲って送りだそうとしている。

“Thelma & Louise” (1991)でも”Natural Born Killers” (1994)でも、後年の映画への影響はいくらでもあるみたいだが、自分は”The Blues Brothers” (1980)の、あの隊列をなすことで無意味が束になって転がっていくような追っかけシーンを思いだした。あと少しだけ”They Live by Night” (1948)とか”Days of Heaven” (1978)とか。とにかくGoldie Hawnがすばらしすぎる。

フィルムは70年代映画にあるあたたかめのかんじはあまりなくて、やや暗めのクールなトーンで終始していて、なので最後の夕焼けのところがとてもしみた。あそこに映ったのはClovisの影なのかも。

終わって、『捜索者』の方に行ってみようかな(歩ける距離)、と思ったのだが既にこの日は32,000歩あるいて足がぱんぱんだったので、やめた。こないだのバルセロナもそうだったけど、あんな夜中にみんなふつうに町を歩いていてよいなー。

そして翌日は朝から雨なのだった…

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