6.09.2024

[film] Furiosa: A Mad Max Saga (2024)

5月25日、土曜日の午前、BFI IMAXで見ました。
“Mad Max: Fury Road” (2015)の前日譚で、監督はGeorge Millerで、Furiosa役はCharlize TheronからAnya Taylor-Joyになっている。

わたしは最初の”Mad Max”(1979)から”Mad Max Beyond Thunderdome” (1985)まで、ぜんぜん好きになれなくて、みんながほめるので名画座でまとめて見たのだが、暗いし怖いし暴力しかないしなんであんなことを繰り広げてあんなふうになってしまうのか、あれですごいとか興奮できるひとがぜんぜんわからなかった。

“Fury Road”をおもしろいと思えたのは、Sagaの基調音である「復讐」を軸としつつも、どこかに向かってがーっと逃げて、また戻ってくるというシンプルな逃走・追跡の反復運動のなかに車を含むあらゆるアクションとバカのサンプルをぶちこんで、その動きひとつひとつを女性たちの連帯するフェミニズム映画の方に収斂させていたことだった。ガソリンまみれの映画のなかにあんなかっこいい女性たちが立ち上がっていたことの奇跡。

今回のも冒頭で幼い頃に母を殺されて声を失ったFuriosa (Alyla Browne → Anya Taylor-Joy)の復讐の話しではあるものの、初めのほうでは子供だったが故にあてがわれた運命や環境に左右されてどうすることもできなかった無念さ悔しさが入ってしまうので、前作と比べるとアクションの確度とか弾け具合のようなところはどうしても弱くなる。だからつまんないかというとそんなことはなくて(だって子供だったんだからしょうがないし)どうやって生き残るのか、なぜ生き延びなければならなかったのか、を強く突きつけてくる内容になっていて、これが後の復讐譚の燃料であり消えない炎となることがわかる。

“Fury Road”では唯一の絶対悪 - 手下はぜんぶただの白塗りバカ - として圧倒的な強さで君臨していたImmortan Joe (Lachy Hulme)の他に、今回は母の仇であり絶対に許せないしいつかぶっ殺したい - けど彼女には何故か愛想がよくテディベアをくれたりするバイク軍団のリーダーDementus (Chris Hemsworth)がいたり、黙っていろいろ教えてくれたりするImmortanのとこの警護隊長のJack (Tom Burke)がいたり、ただ男は悪いのばかりではないよ、というより使える場合は都合よく使っておけばよし、程度の連中も出てくる。

どこかしらの組織に帰属して、そこの長に奴隷として仕えることでしか生きる道も術もない過酷な世界で、親や身寄りを失った女性はどうやったら生き延びていけるのか、FuriosaはImmortan Joeのとこに売られて、周囲に一切溶けこまず男の子としてやっていく道を選んで、ひたすら復讐の機会を待つ - 時間としては10年くらいのスパンだろうか? その間、世界はぜんぜん動かずにImmortan Joe - 頭よいとは思えない・ただ恐いだけ - による支配がずっと続いたのだとしたら、それはそれは恐ろしいが、いまの現実も硬軟あるけどそんなもんか。

いまの現実の話をすると、DementusとFuriosaの関係は自分にとっては微妙で、Immortan Joeよりはルックスも風体も洗練されていて、Furiosaの言うこと思っていることに両手を広げて鷹揚に理解を示し、彼女の母の件は部下がやったことだと嘯き、そうやって結果的に彼女を支配しようとする(している)。これこそが今のマスキュリニティがジェンダー(だけじゃない)をコントロールしようとする臭い手口で、こいつのありようを(結果としてどうなるにせよ)割と肯定的に描いていること、そこに映画評(業界向けのべったり)をやっている男たちが待ってました! みたいに絶賛している絵をみるとあーあ(げろげろ)、になるよね。怪物Immortan Joeまで待たなきゃいけないのか… って。

こんな状態のどこかに救いがあるとすれば(伝説のようなものでしかないにせよ)終始不機嫌と不寛容を貫いて動じなかったAnya Taylor-Joyの強さだろうか。もちろん誰もがFuriosaになれるわけではない、でも断固突っぱねて輪に加わろうとしないあの姿勢は見習いたい。

あとは”The Souvenir” (2019 - )のシリーズでも何考えているのか不気味な圧でただそこにいたTom Burkeもよかった。彼、引き摺られながらぜったい微笑んでいたはず。

ここんとこ、猿とかバイクの映画ばっかりな気がする、退化していくのもいいかげんにしてほしい。

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