6.21.2024

[film] Sasquatch Sunset (2024)

6月17日、月曜日の晩、Curzon SOHOで見ました。

監督はDavidとNathanのThe Zellner brothers、台詞は一切ないけど脚本はDavid Zellner、プロデュースにはAri Asterや出演もしているJesse Eisenbergの名前がある。2024年のSundanceでプレミアされた。

最初はまた猿(人)が出てくるやつか... だったのだが、猿人ではなかったみたいで、でも、ものすごく変な映画であることに変わりなく、4人(or 匹?)の猿人? じゃない 雪男- Sasquatch - 別名ビッグフット(スーツを着て演じているのはRiley Keough, Jesse Eisenberg, Christophe Zajac-Denek, Nathan Zellner - 女性以外は誰が誰だかほぼわからず)が出てきて、他にもヤマアラシとかカメとかアナグマとかスカンクとかクーガーとかいろんな動物が出てくるけど、英語が喋られることはなくて(唸ったり呻いたりはする)、連中の動きはサイレント映画のそれに近い。どちらかというと『はじめ人間ギャートルズ』- 彼らは喋ったけど - とか、和田ラヂヲとか昔のガロ系の風が吹いてくる漫画の寂寥感を漂わせたりもする。

結末を書いてしまうと絶対つまんないのでそれを避けながらー。

映画はこの4匹が過ごすSpring – Summer – Fall – Winterの各季節をロメール風に追っていく。彼らは♂3で♀1で、それぞれがどういう関係にあるのかは不明だが、一組が交尾しているのを2匹がぼーっと見ていたりする絵があるのと、食べるときは一緒だし寝る場所を作るときにも一緒に草などを運ぶし、なにかあると一斉に木の棒を打ち鳴らしたりしているのでコミュニケーションを取る方法はあるように見えるのだが、基本なにを考えているのかはわからない。

自然の掟とか動物の本能みたいのについて、なんとなくはわかるので、彼らが何をしようとしているのか、どう動こうとしているのか、その結果がどうなるか、等の推測はついて - この辺はサイレントを見ていく感覚に近い – 毛繕いとか、毒キノコを食べておかしくなるとか、引っ掻いて匂いをくんくんしながら止まらなくなるとか、いろいろ微笑ましいところはある。

けれども、それらを並べていくだけでは当然おもしろくないのでどうするかというと、子供にもわかる下ネタのほうに行って、上から下からいろいろ出たり出したりがあり、それはもう抑えることができないような本能系のやつで、そのうち子供も外に出てくるし(ぽちゃ、ってかんじ)。

彼らとしてはなんの作為もなく森を歩き回って生きているだけなので、それをどうやって我々に見せるか、ただ森のなかで生きている、というのはどういう状態を指すのか、を描こうとしたのではないか。生の反対側にある死も当然描かれるのだが、ヒトだったら滲んできそうな悲しみ、のようなのからは少し遠かったり。

例えばこれを森に暮らすムーミンでやったらどうなるか、というとたぶん失敗したのではないか。すごくおもしろかったりおかしかったりかわいかったりするわけではない、そういうのからぎりぎり遠くにあろうとする場所で、彼らが生息しているその景色(Sunset)が見えて、それだけで十分なのかも。それか、Kelly Reichardtの”First Cow” (2019)にあった世界の、その遥か前、のような場所に位置づける、とか。

あと、これなら字幕をつける必要もないからすぐに公開してもいいんじゃないか、とか。 ただゆるキャラみたいにかわいいのとも違うので、興行的には難しいかもー。


この週末、これからボローニャの方に行ってきます。最初は展覧会を見にいくだけの予定だったのに、映画祭などをやっているのを知って頭のなかでとぐろが…

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