6月6日、木曜日の晩、Curzon Sohoで見ました。
Jim Jarmuschの”The Dead Don't Die” とはまったく関係ない。
上映後に監督・主演のVigo MortensenとのQ&Aがあるとのことでチケット取ったら、共演のVicky Kriepsも一緒に参加します、ということでうれしいな。
Vigo Mortensenが監督、脚本、プロデュース、音楽、主演までやっている - 彼の監督デビュー作 – “Falling”(2020)もそうだったけど - 西部劇。
冒頭、見るからにならず者 – でも身なりはちゃんとしている男 - が銃で何人かを殺して、明らかに冤罪で別の人が縛り首にされて、という上からの不正が蔓延る荒んだ町の様子が描かれ、フランス語圏(カナダ)への入植者としてやってきた3人家族が兵士として出ていく父親を見送り、その少女はおとぎ話に夢中になりジャンヌ・ダルクを幻視している。(もうひとつの冒頭のシーンは、ネタバレにもなるかもなので書かない)
大きくなった少女Vivienne (Vicky Krieps)は市場で寡黙なデンマーク移民で大工のHolger (Vigo Mortensen)と出会って互いに一目ぼれして(すごくよいかんじ)、一緒に暮らすことになり、Holgerは自信に満ちてなんもないだだっ広いところにここだ、って家を建てようとして「なんにもないじゃん」って彼女に文句を言われるのだが、黙って耕して、彼女は庭に向かって草木を植えていく。同時にお金を稼ぐために町のバーで給仕のバイトも始める。やがてHolgerは内戦の志願兵として(お金が貰えるからって)相談もせずにひとりで出て行ってしまう。
物語は、Vivienneの子供の頃の話、彼が戦争で出ていってしまった後、ひとりで暮らすVivienneに起こる酷いこと、Holgerと男の子が馬に乗って旅をしていく様子をゆったりと、ランダムに脈絡なく繋いでいって、最後の最後に復讐のお話しになっていくのだが、時間と共に憎しみを溜めて紡いで一直線に復讐に向かってあれこれ逆立てていく普通の西部劇にある構成にはなっておらず、いろんな場面と時間をゆっくり回っていくその中心にあるのはHolgerとVivienneのあのなにもない庭とふたりが夢みた愛に満ちた世界で、そういう点で従来の西部劇とはちょっと違うかも – もちろん自分が西部劇を知らないだけかもだけど。
タイトルの”The Dead Don’t Hurt”は、Holgerと男の子が旅をしていく途中で、自分たちの食事用に鳥を撃ち落とした時、男の子が「鳥は痛いんじゃないの?」と聞くと、Holgerは”The dead don’t hurt”とだけ返す – これがタイトル。いま痛みを感じているのだとしたら、それは生きているから、ということなのか、自分のある部分はもう死んでしまったので痛みなんて感じないのだ、ということなのか。あるいは(もういっこある)。
Holgerはたいしたことは殆ど喋らなくて、これはVivienneが生きて夢見た世界のお話しとして、あの時代にまっすぐ生きようとした女性の映画として見るのが正しいのかもしれない。”Corsage” (2022) - 『エリザベート 1878』とほぼ同じ頃のアメリカ西部で生きようとした女性のー。
ラストの海辺がほんとうに美しくて、帰りたくなくなる – Q&Aがあるので帰らなかったけど。
上映後のQ&A、客席の聞きたいことはどうしてもVicky Kriepsの方に集中してしまう。
俳優が監督をするという点で”Serre moi fort” (2021)のMathieu Amalricと今回の違いはあったか? とか、質問ではないけどMeryl Streepにそっくりに見えるところがあると – これは本当にそうで、少しびっくりしたわ - とか。
6.12.2024
[film] The Dead Don't Hurt (2023)
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