6.11.2024

[film] Britannia Hospital (1982)

5月25日、土曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。

BFIでは5月に映画監督Lindsay Andersonの特集 - “O Dreamland! Lindsay Anderson’s Dark British Cinema”をやっていて、そこから何本か見ていて、ものすごく好きになれるような作品・作家ではないと思うものの、いろいろ強烈で勉強になる。この作品、BFIの宣伝文には”Mark E. Smith’s favourite film”と書いてあったので、それなら見ないわけにはいかないな、って。

監督Lindsay Anderson&脚本David Sherwinで、Malcolm McDowell演じるキャラクターMick Travisが活躍する3部作、一番有名な”if....” (1968)に続いて“O Lucky Man!” (1973) ~ “Britannia Hospital” (1982)があり、自分が見た順番は“Britannia Hospital”~ “O Lucky Man!”だった(”if....”は数年前に見たから外した)。Mick Travis以外にもキャラクターは被って出てくるそうなので、順番にぜんぶ見ればよかった。

割と立派なBritannia Hospitalの新棟がオープンしようとしているがProfessor Millar (Graham Crowden)は変な装置で人体実験をして簡単に人を殺していたり、VIP患者として入院しているアフリカの独裁者(たぶん当時のアミン大統領)に抗議するデモが門の外では繰り広げられ、でもオープン記念で女王(H.R.H.と言われる)がお忍びで訪問しようとしているなど病院の管理者Potter (Leonard Rossiter)たちはてんてこまいで、Mick Travis(Malcolm McDowell)は取材クルー(Mark Hamillがノーギャラで出ている)としてなんとか病院の内部に潜りこもうして、中に入ることはできたものの簡単にMillarの餌食になったり、救急車に紛れこんだ女王(となぜか日本の皇室も)が現れて視察を開始するものの…

当時からあったNHS(National Health Service)の機能不全をおちょくったブラックコメディー – というよりは病院の中も外も狂った連中がひしめく坩堝で、ショッピングモールを徘徊するゾンビよりも高い頻度と確率で変なひとにぶつかって、人も平気で殺されたりするのだが、全体のカオスが広がっていって止まらなくて、そのカオスのありようも背後に絶対的に邪悪で狂ったななにかがあるとかそういうものではなく、単にまぬけだったりふぬけだったり、道に躓くかんじで転がっていくドミノで、どうすることもできない。

この辺の犬に吠えられたから吠え返して噛みついたりして止まらなくなって転がっていく - のをしらーっと眺めるノリは確かにThe Fallのそれに近いかも。


O Lucky Man! (1973)

5月27日、休日の月曜日の晩に見ました。今回のLindsay Andersonの特集のメインとして扱われているので見なきゃ、だったのだが184分と聞いてびびる。けどぜんぜんあっという間だった。

冒頭、モノクロで昔のコーヒー農園で働く労働者がコーヒー豆を数粒盗んであれよあれよと簡単に有罪にされる場面が描かれて、“Now”って現在(1973年)の話になる。

もうひとつ、音楽担当のAlan Price - The Animalsのバンドがスタジオで演奏するシーンがところどころで挿入されて、そのライブ感がすごくよくて - この音楽はBAFTA Award for Best Film Musicを受賞している。彼は次の”Britannia Hospital”でも音楽を担当。

この作品でのMick Travis (Malcolm McDowell)は真面目なコーヒー豆のセールスマンで、イングランド北東部にセールスに行ったら軍の施設に入っちゃったり、医療機関で(↑にも出てきた)Dr. Millarに治験されたり、なんだかんだを経て都会に出ると恋人Patricia (Helen Mirrenかわいー)の父で悪い実業家Sir James Burgess (Ralph Richardson)の秘書となるが、はめられて彼の悪事をまる被りして5年間投獄され、そこで模範囚となっていろいろ学んで出所するのだが、今度は人が善くなりすぎてすっからかんになり、途方に暮れて町を彷徨っていると映画制作のキャスティング・コールに参加することになり、監督のLindsay Andersonから役を貰って…

“Britannia Hospital”は病院を中心にそこに凝縮された悪なのかなんなのかどうしようもないどたばたの混沌を描いていたが、ここは大英帝国の起源にまで遡る長い歴史と、そこで英国 - 都会から田舎まで - がやってきたいろんなことをTravis個人の歴史に強引に収斂させる逆ロード・ムーヴィーみたいなことをやっているような。

主人公があんま深く考えずにいろんなのに巻き込まれて、淡々とさてどうしましょう? ってやっているだけの、なんとなくゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を思い起こさせる壮大なんだかちんけなんだかよくわかんないドラマで、でもどこかしら英国的にみみっちいというかせこいというか、ぜんぜん大作のかんじがしない、という..

おもしろいおもしろくないでいうと、まったくだれなくてものすごくおもしろくて、よくこれらのエピソードを3時間繋いで運んだもんだなー、って。(上映後拍手が起こっていたし)

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