6.19.2024

[film] Wilding (2023)

6月15日、土曜日の夕方、Curzon BloomsburyのDocHouseで見ました。

ドキュメンタリーの登場人物(一部俳優が演じているけど)でもあるIsabella Treeによる分厚い著書“The Book of Wilding”はベストセラーになっていて、Q&Aつきの上映会はあっという間に売り切れてしまい、映画館もドキュメンタリーにしては珍しく人が入っている。ガーデニングや土いじりが好きな英国人にはたまらないやつなのかも。

西サセックスのKneppでSir Charles Burrell(Charlie)が先祖代々の5.5平方マイルの土地/農地を20代で相続した時、土地は長年の肥料で汚れて死んだ状態で、大学で近代農業を学んだ彼が農業をやろうとしてもずっと使っていくのに耐えられる状態にはなく、いろいろ試した結果負債まみれになってしまったので、一旦飼っていた牛とか代々持っていた農機類もぜんぶ売って手放し、汚れた状態を自然に近い状態に戻してみようと考える。

長年に渡って木だけではない菌根類のネットワークが地中には張り巡らされていて、そのネットワークが破壊されてしまったようなので、そこも含めて修復していく必要がある、と木の専門家の話を聞いて、更に参考にしたのがオランダで干拓計画が失敗して、放棄された土地に動物たちを呼びこんで半野生状態の生態系を回復させたプロジェクト – これについてはドキュメンタリー映画 - ”De nieuwe wildernis” (2013) -『あたらしい野生の地―リワイルディング』がある - で、CharlieとIsabellaはこれに倣って馬とか牛とか豚を野に放って彼らの好きにやらせてみる。

木とか草とか土が自分たちの力で野生状態に戻る(re-wilding) - そこに「治癒力」みたいな物語ぽいのとか、「xx法」みたいな権威を絡めようとするのはヒトの勝手で、そのために放たれた牛や馬たちが特にがんばってなにかをしたわけではなく、彼らは自分たちのやりたいように食べたり走ったり転がったりして、いくつかの季節を経ただけで(ヒトの側にどれくらいの、どんなメンテナンスみたいなのの苦労があったのかは映像には出てこない)、草木とか鳥や虫がじゃんじゃか戻ってくる、って、これが本当ならてきとーでよいことー。

勿論、土壌としては繋がっている近辺の農家からは何を目指してるのか知らんが勝手なことしないでくれる? とか、無責任に放置しないでただ野菜をつくれ、みたいな苦情がくるし、アザミみたいな“injurious weed”が生えて、これが繁殖したらやばい、ってなると、アフリカから大量に渡ってきたpainted lady butterfliesの毛虫がきれいに食べ尽くしてくれたり、そんなこんなも泥にまみれた豚さん(すごくかわいいのだが、一部は俳優豚らしい)らにはどーでもよいことだし。

こうして英国では珍しいTurtle dove(キジバト)が来て、ナイチンゲールとかムラサキシジミも来て、昨年まだ日本にいた時に聞いたニュースだと思うが、ビーバーが英国で400年ぶりくらいに復活してダムをつくったのは確かここだった(きちんとライセンスを取得して連れてきたらしい)し、最後のほうではコウノトリがやってきて煙突に巣をつくる。動物たちはその土地に自然にやってきたものではないけど、そんなの動物にとってはどーでもよいことで、彼らが気持ちよく過ごせるのであればそれでよいのでは、とか。

自然に任せる、ってアメリカでもドキュメンタリー”The Biggest Little Farm” (2018) で同様の苦難に首をつっこんだ農家を志す夫婦がいたが、あちらはあちらでぜんぜん別の苦労があって、「自然」のありようも接し方も違って当然とは言え奥が深いなー って。日本でもやっている人はいそうだけど、あの国は農家には冷たいし周辺への対応も面倒くさそうだから難しそう。『悪は存在しない』にも繋がってくるテーマだねえ。

そのうち行って、豚さんとかに会えたらなー。


M&Sのチェリーがスペイン産からケント産のに変わった。スペインのよかおいしい気がする。

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