6.20.2024

[film] Treasure (2024)

6月16日、日曜日の夕方、Curzon Mayfairで見ました。
バルセロナに行っている時に、この映画のPreviewとStephen FryとのQ&Aがあったのだが勿論行けなかった。

監督はドイツのJulia von Heinz、原作はオーストラリアのLily Brett - 彼女の両親は戦前のポーランドにいて、アウシュビッツで離れ離れになったそう - による”Too Many Men” (1999)。Lena Dunhamはプロデューサーとしても参加している。

1991年、NYのジャーナリストのRuth (Lena Dunham)は、ワルシャワの空港で父Edek (Stephen Fry)を迎えて、ずっと計画していた父の祖国を巡ってアウシュビッツを訪れる父娘の旅に出る。

まず予約していた列車に乗ろうとしても父は嫌がって(理由はわかるよね)、かわりにタクシー運転手のStefan (Zbigniew Zamachowski)を見つけて意気投合して彼を数日間雇うことにした、という。

ホテルにチェックインする時も娘と続き部屋にしてほしいってフロントにドル紙幣を渡したり、すべてがこの調子で一見おとなしそうな熊に見えるがなんだかんだ自分のペースを貫こうとする父と、その都度不機嫌さを露わにし、でもポーランド語もわからないので渋々彼に従っていく娘、というコンビによるロードムーヴィー。まずこの二人の組合せについては文句なしによいの。

かつて父の実家が経営していた工場にいっても、軽く追いだされてしまうものの、父の当時の記憶は正確であることがわかり、更に彼の家族が住んでいた家に行って、戦争前にここに住んでいたので中を見せてほしい、と中に入れてもらう。現在そこに住んでいる家族は、自分たちが入った時には空き家だったし、と強調するのだが、父はソファやお盆や茶器が自分の家で使っていたものだったことを確認して、でもそれを強く主張してもどうなるものでもないので、そこを出る。

なんだか納得がいかないRuthは、ホテル従業員を通訳として雇ってひとり再びその家に向かい、半ば喧嘩腰でお盆と茶器一式を向こうの言い値で買う交渉をして、すると向こうは更に彼女の祖父のものと思われるコートを持ちだしてきたり。

娘から見えなかったし語られなかった父の過去を少しづつにじり寄りながら明らかにしていく旅なのだが、夜中にひとり起きだして自分の腕にタトゥーを掘りだしたり、別れた元夫に電話してしまったり、Ruth本人もなんらかの闇と混沌を抱えていることがわかって、でも父親が子供の頃に経験した地獄には及ばないから、って自分を懸命に抑えているような。

直前まで行くのを渋っていたアウシュビッツで、父は、ガイドの説明を遮って列車が入ってきたのはここではなく、あそこだ、とその場所に立って線路跡を示し、あそこで母さんとはぐれてしまったんだ、と地団駄を踏んで一気に吐きだすように語って、だからここには来たくなかったんだ、と全員が気まずくなってしまったり。でも、そうであってもRuthはどうしてもここに来る必要があったのだと思う。

そういうのの反対側で旅の途中で知り合ったご婦人と父が仲良く部屋にいるのを見てしまったRuthは..

いろんなエピソードが重ねられていって、旅の終わりに住んでいた家の傍の地中から掘りだされた過去の写真を車の中で見ながらEdekが泣きだしてしまうシーンはとてもよいのだが、ここまで来るのにややいろいろ込められすぎていてそこにまっすぐ収斂していかないのがやや残念だったかも(Treasureとは。関心領域の外に眠っていたもの)。加えて父と娘の関係がどうしてそうなっていったのかを描くのは簡単ではないのだろうが。

でもポーランド語訛りの英語でぼそぼそ喋って伸び縮みする熊みたいなStephen Fryはともかく、俳優としてのLena Dunhamに現れる不安、当惑、苛立ち - その表情のどれもがすばらしい。彼女を最初に見たのはNYのIFCで”Tiny Furniture” (2010)が封切りされたときのトークで、なんて面白い人だ、って思ったのを思いだした。

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