11.28.2025

[film] Wicked: For Good (2025)

11月22日、土曜日の午前、BFI IMAXで見ました。
“Part I”を見たのが昨年の12月1日だったので、もうほぼ1年前、というのにびっくりする。

関係ないけど、最近リリースされた映画で、昔なら必ず(見なければ、と思って)見ていたようなのを見なくなってしまった。Ali Asterの”Eddington”とか、Luca Guadagninoの”After the Hunt”とか、Yorgos Lanthimosの”Bugonia”とか。 演劇とか他に見る/見たいのがいっぱいある、というのもあるけど、現実がじゅうぶんひどく、気持ちわるくなっているので、べつに彼らの映画に教えてもらっていちいちぐったりうんざりしなくてもいいや、って(なんか疲れている)。

公開後2日目、土曜日の午前なのだが、結構入っていて、子供連れも多いけど、みんな真面目に静かに見て、曲が終わるごとに拍手していた。10月のLFFでも期間中にギャラリーで”Wicked”のパネル展があったのだが、映画のキャンセル待ちよりもすごい行列が会場の外まで続いていて、熱心なファンに支えられているんだなー、って思った。やはりミュージカルのファンが多いのかしら?

元のミュージカル版(2003)を見ていなくて、更にもうひとつの映画版“The Wizard of Oz” (1939)も昔に見たきり - これの公開に合わせてBFIでは何度か上映されていたのだが、逃してしまった。“The Wizard of Oz”のオリジンに触れているところもあるので、1939年版は見直しておいたほうがよいかも。

以下、相当とんちんかんになっていると思うが、ざっくりとした感想を。ネタバレとか、もういいよね。

前作の終わりに帝国によって悪い魔女、の烙印を押されたElphaba (Cynthia Erivo)は森の隠れ家で虐待されている動物たちのためにひとりでゲリラ的に戦っていてかっこよいのだが、Galinda (Ariana Grande)は、割と落ち着いて彼女は彼女だから、みたいに眺めながらFiyero (Jonathan Bailey)との婚礼の準備を進めている。 Elphabaの妹のNessa (Marissa Bode)が帝国の外に勝手にでることを禁じたあたりから拗れてきて、それを魔法の重ね塗りでどうにかしようとするので、あれこれおかしくなって嵐になって…

魔法はなにかを実現したい、世界をこうしたい、っていう思いの延長にあり、それらはヒトの上下や種の間でぶつかったりして当たり前で、そこには学園から始まる強い弱いとか序列もあって、それらのバランスで人はWickedになるし竜巻だって起こるし、という混沌とした様が、Part Iよりも強く、ドミノ倒しで、どうなっちゃうんだろう… というトーンで描かれていって、最後に落ち着く先も、結局わたしがこうなればいいんだね/こうするしかないのね、というところで、こんなふうに成り立っている世界は間違っているからぶっ壊そう、一緒に戦おう! という方にはいかない。世界は世界が求めている落ち着きを取り戻して”There's no place like home!" っていう家父長制&帝国万歳ワールドに戻ってしまう。よいこはそうでなくちゃいけないのか。 声を重ねて調和をはかるミュージカルだと、こうなるしかないのか。

「オズの魔法使い」のライオン、カカシ、ブリキ男のオリジン、事情がわかったのはへー、だったけど、そういうのなくたって、ただそこにいたから、とかで一緒に、仲間になったってよいのに、というのはちょっと思った。バックグラウンドチェックがそんなに大切か。ライオンもカカシもブリキ男も、みんな中味が空っぽのスカスカだから一緒になったんだと思っていたのに、それぞれにあんなシガラミがあったなんて…

自分の結婚式の当日にGalindaではなくElphabaのところに行ってしまうFiyeroの件、昨日ここに書いた”The Wicked Lady” (1945)を思いだした。男女逆だけど、ここでも”Wicked”が使われている。

いっぱい出てきた動物たちにもっと動いて、大暴れしてほしかったのに。ヤギ先生には思いっきり語ってほしかったし、空飛ぶ猿も含めて、みんなおとなしすぎないか – それが本来の世界だから、そこに戻ったのだから、だったらつまんなすぎるし。

もちろん、おおもとのL. Frank Baum原作の“The Wonderful Wizard of Oz” (1900)は子供のために書かれたのだし、映画版は第二次世界大戦が勃発した1939年に出たものだし、ミュージカル版の出た2003年は、911の直後で、世界の分断が始まろうとしていた - なので、まずとにかく「世界」は維持されなければならないものだったのだ、ということはわかるけど。正義 = 波風を立てないこと、ではないよね。

でもElphabaの飛ぶ姿はかっこよかったし、ElphabaとGalindaが一緒にいる絵も歌もよいから、いいか... くらい。

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