10月27日、月曜日の晩、Curzon Bloomsburyでみました。
監督はScott Cooper、脚本は監督とThe Del Fuegosのギタリスト - Warren Zaneの共同、撮影はMasanobu Takayanagi。
“A Complete Unknown”でTimothée Chalametが周囲から眉をひそめられつつエレクトリックに向かうBob Dylanの像を演じたように、Jeremy Allen Whiteが絶頂期に周囲の困惑を振り切ってアコースティックに向かっていくBruce Springsteenを演じている。
“A Complete Unknown”に”Deliver Me from Nowhere”と、どちらのタイトルも謎めいていて本当のところは? みたいにぼかしているものの、本作はBruce本人がNYFFにもLFFにもやってきて直にプロモーションしているので、”Deliver Me from Anywhere”にしたってよいくらいかも。
冒頭はモノクロで描かれるBruceの幼少期の姿で、酒浸りで暴力的な父(Stephen Graham)の下で母(Gaby Hoffmann)と怯えながら固まって暮らしていて、そこから成功した”The River” (1981)のツアーで”Born to Run”を熱唱するBruce Springsteen (Jeremy Allen White)の姿にジャンプして、誰もが金字塔となるであろう次作での大爆発/大儲けを期待するのだが、彼はColts Neckに一軒家を借りて、Flannery O’Connorの本を横に置いたりしつつ、Mike Batlan (Paul Walter Hauser)にマルチトラックのカセットレコーダーを持ってこさせて、アコギ1本で録音を始める。
町をうろついて、シングルマザーでウェイトレスのFaye (Odessa Young)と仲良くなったりするものの、どこに向かっているのかは本人にもわからないまま彷徨っているようで、都度子供の頃の虐待の記憶が蘇ったり、昔の殺人事件のニュースが目に入ってきたり、外から眺めれば成功の後のスランプ… のように見えるのだが、レコード会社の上の連中はそんなの理解できなくて、プロデューサーのJon Landau (Jeremy Strong)だけが静かに彼を見守っている。
やがてBruceはギター一本でカセット録りしたデモの音そのままの状態のをどうしてもリリースしたい、ってゴネて、これがやがて”Nebraska” (1982)になるわけだが、これくらいのことは当時のインタビューでも語られていた気がするし、彼のような音楽をつくる人のドラマとしてそんなにおもしろいものでもないような - 湿った質感の映像はとても素敵なのだが。
むしろ”Nebraska” の後、”Born in the U.S.A.”(1984)の最初のシングルが、ぱりぱりの”Dancing in the Dark”で、アルバム全体もBob Clearmountainミックスのプラスチックな質感になった/してしまったことの事情とかの方を知りたい。時代?
あと、これを音楽映画とするなら、ライブや演奏シーンの映像が圧倒的に少ないのが不満としてはある。アメリカのストーリーテラーとしての彼もあるけど、80年代から3時間超えのライブをずっと続けてきている、そっちの方のパワーの謎と驚異を描くことだってできたのではないか。ドキュメンタリー “Asubury Park: Riot, Redemption, Rock & Roll” (2019)で描かれたあの時代の海辺の町を舞台に。
わたしがはじめて”Born to Run”を聞いたときは既にJohnny Thundersの”Born To Lose”を聞いた後だったのでBruceには乗れず、一番聴いたのは”Darkness on the Edge of Town”だったが、この辺りから、彼の聴き手周辺ってミュージシャンも含めて走るんだぜ、みたいなバカが大量発生して(うんざりするくらいいっぱいいたのよ)ひどかったのでちょっと距離を置いてしまったまま。 みんなまだ走ってるのかな?
ニュージャージー関連でもうひとつ、10月25日の土曜日の昼、Charing Crossの書店Foylesで、”Jon Bon Jovi in Conversation”っていうトークイベントがあった。イベントの2日前くらいに告知がきて、お代は£70(うちサイン本が£60)もしたのだが、なんとなくどんな人なのか見たくて取った。11時開始の先着順の入場で9:30に行ったら既にすごい列だった。
今回リリースされた本”Bon Jovi: Forever”、本として値段は結構高いのだが、80年代からのライブの記録やチケットの半券まで、ものすごい細かさと物量で見てて飽きなくて、ファンの熱がこもるとこういうことになる、よいサンプルだと思った。
トークは、本当に率直に語るよい人で、アスリートかアストロノーツかロックミュージシャンになるしか抜け出すことができないニュージャージーの荒野からどうやって、について、裏か表かわかんないけど、Bruceの話にも繋がるような気がしたのと、闘病の話になったら(ケアしてくれた人への感謝で)声を詰まらせてしまったり。
オーストラリアから来ている人、80年代からずっと追っかけしている人(彼に指さされてた)、よいファンに囲まれてきたんだなー、って。
11.04.2025
[film] Springsteen: Deliver Me from Nowhere (2025)
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