11月15日、土曜日の晩、Curzon Victoriaで見ました。
監督はNicholas Hytner、脚本はAlan Bennett - このふたりによる新作は”The Lady in the Van” (2015)以来だそう。
1916年、第一次大戦中のヨークシャーの架空の町で、郵便配達の青年が戦死の通知を家族に届けたりして暗くなっているところで、コミュニティのコーラス団が団員を募集しているので行ってみよう、って見に行ったらなんとなくテストを受けさせられて気がつけば団員になっている。そんななか、指揮者が戦争に行ってしまったので新たにリーダー/指揮者として採用されたDr Guthrie (Ralph Fiennes)と寄せ集められた個性的な団員たちとのやり取りとどうなることやら、等を描いていく。
Dr Guthrieは敵国であるドイツに長く暮らし芸術を愛する、という点から始めはバッハの『マタイ受難曲』を採りあげていたのだが反ドイツの声も強くあったのでエルガーの『ジェロンティウスの夢』を歌うことにする。あと掘り下げられることはないが彼はゲイで、つまりあらゆる点で(この時代には)不適格な属性の人なのだが、音楽に対する思いと情熱、指導力は確かなのでみんな彼の言うことを聞いて練習に励んでいく。
団員の方も個性豊かで、元からいたメンバーに加えてDr Guthrieが軍の病院やパン屋からスカウトした面々がいて、団員同士の男女の恋があり、よいかんじになったところで戦地から片腕を失った彼が帰還してきたり、本当にいろいろあって、エピソードが散りすぎていることはしょうがないのか、とりあえずエルガーを歌うクライマックスに向けて… となったところで本番の日に現れたエルガー(Simon Russell Beale)本人は結構嫌な奴だったり。
やがて楽団メンバーにも招集がかかるようになり、戦地に赴く前の晩、ひとりは憧れていた娼婦のところに行って、ひとりは憧れていた彼女のところに行くが無事に戻ってきたらね、ってやんわり拒まれたり。ラストの出征のシーンも、あまり盛りあがるような、感動的な描き方はしていなくて、そこはよいかも。
全体としてものすごくいろんな人、エピソードが散らばっていて朝ドラみたい - 朝ドラほぼ見たことないけど - なのだが、Ralph Fiennesひとりがずっとしかめ面のすごい重力で全体を繋ぎとめるべく指揮棒を振っているのだった。そこはまるでこないだの『教皇選挙』のようだったかも。
Move Ya Body: The Birth of House (2025)
11月6日、木曜日の晩、BFI IMAXで見ました。
毎年やっている音楽ドキュメンタリーフィルムの祭典 - Doc’n Roll Festivalからの1本で、このフェスはいろんな映画館に散らばってランダムに上映があるので、気付いたら見逃していた、のものも多くて、今年のではButthole SurfersのとCoilのが痛かったよう。
上映前に監督Elegance Brattonの録画されていたイントロが流れて、自身のハウスミュージック体験の初めは90年代初のNYのLimelightっていう元教会の建物だったところだ、って語っていて、おー、あたしはあそこでGang of FourとかGeneを見たよ、ってなった。
70年代後半、ディスコ・ブームが馬鹿な白人たちによって潰されて行き場を失ったシカゴのアンダーグラウンド・シーンで、数キロ先でも聴こえるような強い輪郭と断線されたって途切れることのないぶっとさをもったリズムを生みだすこと。それは当時のシカゴのまるでアパルトヘイトの人種隔離された居住区画と常態化した人種差別からの解放を担う革命の音楽でもあった、と。
当時その突端にいて、とにかくシンセで音を作りたかったVince Lawrenceとその周辺の仲間たちに話しを聞きながら、当時の革命の様子をダイナミックに描いて、それもやがては白人に搾取されてしまうことになるのだが、とてもおもしろかった。ここからどうやってNYやUKに飛び火していったのか、とか。主人公も編集も、そんなにドラマチックに盛りあげる方にいかないところもよくて、この淡々とした静けさが今も続いている大きなジャンルのベースを作ったのだねえ、って。
11.22.2025
[film] The Choral (2025)
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