11.28.2025

[film] Madame X (1966)

11月23日、日曜日の午後、この午後はずっとBFI Southbankのメロドラマ特集に浸かった。
 
この特集のビジュアル - シャンパングラスの上で赤い涙を流している女性はLana Turnerで、特集を見ていくと、やっぱりLana Turnerしかないな、と思ってしまう。
 
原作はフランスのAlexandre Bissonによる同名戯曲(1908)、Turner自身が映画化権を買い取って、プロデューサーのRoss Hunterのところに持ちこみ、Douglas Sirkに監督して貰おうとしたが、彼の健康上の理由で不可となり、テレビ畑のDavid Lowell Richが監督することになった。それ以外の撮影Russell Mettyや音楽Frank Skinnerは、この時期のRoss Hunter組。これをSirkが監督していたらどんなにか… って震えがくるくらいにすばらしいやつだった。 邦題は『母の旅路』 - これはぜんぜんだめよね。
 
Holly Parker (Lana Turner)がコネチカットの富豪のところに嫁いできて、夫のClayton (John Forsythe)は外交官で海外を飛び回っていて、姑のEstelle (Constance Bennett)はHollyを見下して監視している。やがて男の子も生まれて幸せだったのだが、夫がいないところで、遊び人のPhil (Ricardo Montalbán)から頻繁に誘われるようになっていて、でも夫が昇進してワシントンDCに行くことになったので、関係を終わらせるべくPhilのところに行ったら押し問答になり、跳ねのけたら彼は階段から落ちてあっさり死んでしまう。動転したHollyは逃げるようにその場から立ち去るのだが、現場にローブを置いてきてしまった。
 
姑Estelleはこれの前からHollyの挙動を怪しいと思って追跡していたので、事件のことも当然把握していて、これが公になったらClaytonの将来はなくなる、とHollyを脅迫して偽りのパスポート一式と当座のお金を渡して家から追放してしまう。こうして別人にされた彼女はデンマーク~メキシコへと流れて、お金もなくなって酒に溺れて体を壊して、メキシコの酒場で知り合ったアメリカ人に自分の身の上をつい喋ってしまったら、それをネタに今や州知事になっているClaytonを脅迫したろか、って言うので頭にきてそいつを撃ち殺してしまう。
 
あっさり逮捕されたHollyは、取り調べの際にも名前を明かすことを断固拒んで(だからMadame “X”)、どこからどう見ても有罪だし、裁判所が選んだ弁護士は、正義感しかないような新人の若造(Keir Dullea)で、しかしこいつは生き別れとなっていたHollyの息子であったことがわかってきて、法廷にはClaytonやEstelleもやってきて…
 
最初にクラス(階級)のテーマが出てきて、最後はかわいそうなママの話で終わる、こないだのMelo-dramaramaでの講義展開そのままで、名前を奪われてぼろぼろになって路頭を彷徨う彼女の姿だけで十分かわいそうなのに、最後にあんなの、予想もしていなかったし周囲の人々はみんなずるずるに泣いていた。

しかしこの後、陪審員に向かって激烈に正義を説いていたClayton Jrが、実母をあんなふうにした元凶が自分の祖母であったことを知ったら… の方に興味が向いてしまう。

“Leave Her to Heaven” (1945)と同じく豪邸で始まって法廷で終わるドラマでもあるな。


The Wicked Lady (1945)
 
↑のに続いてBFI Southbankで見ました。次の2本は英国のフィルム・スタジオGainsborough Picturesの2本立て。当時大ヒットを記録した作品だそう。邦題は『妖婦』。
 
原作は1945年のMagdalen King-Hallによる小説“Life and Death of the Wicked Lady Skelton” – どうもそういう人が実際にいたらしい説がある。
 
17世紀の英国の田舎で、Carolineが自分とSir Ralph Skeltonの結婚式に親友のBarbara (Margaret Lockwood)を招いたら、彼女はSkeltonに一目惚れしてその場で誘惑して、みんなのいる前で花婿を略奪して、Skelton夫人となる - これだけでもびっくり - のだが、田舎の生活は退屈で、友人と賭けをしてブローチを失った彼女は、有名な路上の盗人Jerry Jackson(James Mason)に倣って覆面して路上で待ち伏せして馬車を襲って奪い返す、これがうまくいったのでその快感で盗賊をやめられなくなり、やがて本物のJerry Jacksonとつるんでいろいろやらかすようになって..  この後も自分の正体を知った屋敷の使用人を簡単に殺したり、Jerry Jacksonを売って絞首刑台まで運んでいったり、波乱万丈の昼メロの数倍アクの強いドラマがごろんごろん展開していってみんなで唸りながら見ているのだが、イギリスの田舎ならこんな人が出てきてもおかしくないかも、くらいのかんじにはなる。

Gainsboroughの看板女優となったMargaret Lockwoodは、実際にはとても素敵な人だったそうな。
 
 
Madonna of the Seven Moons (1945)
 
↑のに続けて見ました。これもGainsborough Picturesので、邦題は『七つの月のマドンナ』。
Margery Lawrenceによる1931年の同名小説が原作で、監督はArthur Crabtree。
 
Maddalena (Phyllis Calvert)は修道院にいた10代の頃にレイプされて、その後で請われて結婚してフィレンツェに渡って、お金もちのお屋敷で幸せに暮らしていたが、しばらく離れていた娘が戻ってきたある晩に突然失踪してしまう。夫によると以前も突然消えてしまった時期があったという。
 
彼女は地元のギャングのNino (Stewart Granger)と一緒に、以前とはぜんぜん違う風体と振る舞いで暮らしていて(でも名前はおなじ)、やがて必死になって彼女を探す元の家族は…
 
レイプのショックで多重人格者になっていた、ということが後の方で明らかになっていくのだが、最初の方はなにがなんだかわからず、でも最後の方はかわいそうでしんみりと終わる。キリスト教のマグダレーナのことかな、とも思ったが、教会が出てくるのは最初と最後だけだしー。
 
メロドラマ特集は、12月も続くんだよ。

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