10月26日、日曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。
ここの11月の特集で、”Love, Sex, Religion, Death: The Complete Films of Terence Davies”というTerence Daviesのレトロスペクティヴが始まっていて、これもMelodrama特集と並んで重いったらないのだが、英国にいるなら見ないと、ということで見始めている。特集の予告にはPet Shop Boysの"Paninaro"が流れたりして、なかなかよいの。
で、これはリリース25年周年を記念してBFIがリマスターしたものを特集と並行してリバイバル公開していて、全体にあまりに美しい絵が続くのでびっくりした。なんでこれが日本で公開されていないの?
原作はEdith Whartonの同名小説(1905)。翻訳のタイトルは『歓楽の家』。映画化されたWharton作品というと”Age of Innocense”(1920) - 映画版は1993 年 - が有名だが、これも負けていなくてすごくよい。監督・脚色はTerence Davies、撮影は”Elizabeth” (1998)のRemi Adefarasin。
UK - Germany - US合作で、20世紀初頭のNew Yorkが舞台だが撮影の殆どはグラスゴーで行われている。つまり、2000年のグラスゴーは100年前のNYであった、と。
20世紀初のNYの社交界で、Lily Bart (Gillian Anderson)は強い財力やバックがいるわけではないのだが、派手で華やかなのでそれなりの人気はあって、いつも話をする弁護士Lawrence (Eric Stoltz)をちょっとよいと思って頻繁に会ってはいるのだが、彼の収入が少ないので結婚相手としては考えていなくて、でもそうすると金融をやっている金持ちのSimon (Anthony LaPaglia)かただの金持ちのPercy (Pearce Quigley)くらいしか現実的な選択肢はなく、でも何度か誘いをすっぽかしたらPercyからは見向きもされなくなり、Simonは見るからにただの金持ちで中味なさそうだし、と、将来がいろいろ不安になってきたので友人の夫でやはりお金持ちのGus (Dan Aykroyd)に相談してみると投資のためのお金を出してくれて、でもその見返りとしてオペラの帰りに屋敷に連れこまれたので拒否したり、Simonからもプロポーズされるのだが、やっぱり嫌なものは嫌で、あれこれもうやだ! になっていたところで、友人のBertha (Laura Linney)夫妻からヨーロッパクルーズに誘われて行ってみるのだが、Berthaの不貞の噂話で疑われて結局孤立してひとり帰らされてしまう。
こんなふうにどこに行っても十分な財力も後ろ盾(男)もいないし、それを求めてもろくな選択肢も見返りもなくしょうもないのに当たったり勘違いされたり裏目に出てばかり、そうしているうちに友人がひとりまたひとりと離れていって結果的に社交界から孤立して脱がされるように借金まみれになり、職にも住む場所にも困るようになっていくさまを絵巻もののように淡々と描いていく。
抜けられない愛憎劇があるわけではないし、運命の急転をドラマチックに怖ろしげに描くものでもないし、そんな社会の非情を訴えるわけでもなく(少しはあるけど)、すべては壁のように動かし難いものとして巌としてあるだけで、カメラはもう少し将来のことを考えて人生設計すればよかったのに自業自得 - と指さされているかもしれないLily = Gillian Andersonの表情を正面からずっと捉えていって、でもそうされてもどれだけ落ちても揺るがずに正面を見据えているLilyがすごいの。最後にひとりめそめそ泣いてしまうのはLawrenceの方だったり。
Gillian Anderson、こんなにすごい人だったんだー、って。こないだ見た”The Salt Path” (2024)で、無一文になっても超然と山歩きと野宿を繰り返していた主人公の姿が重なるし。
11.05.2025
[film] The House of Mirth (2000)
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