11.15.2025

[theatre] Romeo a Juliet

11月5日、水曜日の晩、Shakespeare’s Globe内にあるSam Wanamaker Playhouseで見ました。

このシアターの舞台照明は蝋燭で、俳優が演じながら燭台の沢山の蝋燭に火を灯したり消したりして、売店では使い終わったちびた蝋燭をお土産として売っていたり(最初なんだこれ?って思った)。

制作はグローブ座と提携したウェールズのTheatr Cymruで、4日間公演の初日。グローブ座でウェールズ語の芝居がかかるのは初めてだという。原作はWilliam Shakespeare (1597)、翻訳はJ.T. Jonesによるもの(1983年)、演出はSteffan Donnelly。

高さのあるこのシアターで、舞台上の細工は特にしていなくて、楽隊もシンプルに3名。蠟燭の灯り(によって浮かびあがるもの)を際だたせていくクラシックな演出- 悲劇に向かうにつれて明度が落ちていく - がとても素敵。服装は革ジャンを着ていたり現代のそれだが、特に凝ったものではなくて、ごく普通の。

英語とウェールズ語が混じる劇、ということで、事前に英語キャプションを通訳表示するスマホアプリの案内がきて、シアターにもダウンロード用のQRがあって、一応念のためダウンロードはしておいたのだが使わなかった。客席から見ていてもスマホを見ながらの人はそんなにいなくて、やっぱり舞台の上の動きと発声に集中したいし、こういうエモがぶつかりあうような劇であれば尚更かも、って。

Romeo (Steffan Cynnydd)のいるMontaguesは主にウェールズ語を話し、Juliet (Isabella Colby Browne)のいるCapuletsは主に英語を話すのだが、当然両家が会話をする際にふたつの言語は混ざりあい、両家が衝突する場合にはその違いが強く際立って、ふたりが愛を交わす部分では衣服のように取り除ける柔らかい覆いになったりして、なるほどなー、にはなる。他方で、言語の違いによる違和やギャップなんて、ごく普通にそこらにあることでもあり、言語間の差異と分断がこの悲劇に(誰もが期待するであろう)決定的ななにかを持ちこんだりもたらしたりしているか、というと、そこまでではなかったかも。

でもそれは置いて、殺しの場面の凄惨さや、愛を語る場面のとろけるような甘さ、もちろん最後の悲劇は、ストレートに生々しく伝わってきて、センターの、特に際立って強いなにかをぶちまけないRomeoとJulietの柔らかく寄り添う姿が最後まで残る。ふつうにそこらにいそうな素の若者たちで、それがなんかよくて。

日本でも家父長制が強く残っていて互いにぜんぜん通じない方言を使って譲らない両家をモデルにやってみたらおもしろいかも。(まじでどうしようもなく通じないやつ)。もうすでにやっている?

ウェールズ語って、音だけ聞いているとポルトガル語みたいに聞こえるところがあった気がしたが、ぜんぜん関係ないのだった。


Ragdoll

11月3日、月曜日の晩、Jermyn Street Theatreで見ました。

1974年のPatricia Hearst誘拐事件(過激派組織シンバイオニーズ解放軍に誘拐・監禁されたが、その後犯人と行動を共にしていることが明らかとなって大騒ぎになり、やがて有罪判決を受ける)に着想を得て、Katherine Moarが書いた劇が原作。演出はJosh Seymour。 休憩なしの75分。

事件から数十年が過ぎた2017年(には何が起こった年か?)、同事件で「被害者」とされたHolly (Abigail Cruttenden)が、かつて彼女を担当した弁護士Robert (Nathaniel Parker)のオフィスを訪ねてくる。 Robertは彼女の弁護で脚光を浴びてセレブ弁護士となったが今はちょっと疲れた顔で、事務所を畳もうとしているらしい。舞台の真ん中にはものすごく豪華(そう)なソファが置かれていて、彼のかつての栄華を伺わせるが、そもそもなんでHollyは彼のところに現れたのか。

HollyとRobertの間に懐かし気な、親密な雰囲気はなく、かといって刺々しい喧嘩腰でもなく、会話のやりとりを通して皮を剥くように過去の記憶を取り出して転がしていくと、若い頃のふたり – Holly (Katie Matsell)とRobert (Ben Lamb) – が舞台上に現れるようになり、最初のうちは過去のふたりと現在のふたりが交互にスイッチしたりしていたのが、最後のほうでは4人一緒に出ているようになり、この多層化がとてもおもしろい効果を生む。

Hollyは誘拐されて犯人達に脅迫されてレイプされてその後の強盗に失敗して捕まって、Robertが弁護した裁判に負けて収監されて、Robertはセレブ弁護士としてぶいぶいだったのだが… 過去は変えられないけど、過去にあったことはあったことで消えることなんてなく、それは間違いなく現在に繋がっているので現在のことなんだ、逃げられると思うなよカス、というのと、抱かれたらぐんにゃりする猫(ragdoll)だって生きてるんだしなめんな、って掘り返されるべき昔のケースはいっぱいあるんだと思う。 まさに今の合衆国大統領だってな… 

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。