5.09.2024

[theatre] Underdog: The Other Other Brontë

4月29日、月曜日の晩、National TheatreのDorfman Theatreで見ました。
原作はSarah Gordon、演出はNatalie Ibu。Brontë三姉妹のお話で、ポスターではお揃いの紅いドレスの3人がヒップホップのレコードジャケットみたいにこちらを睨んでいる。

Brontë姉妹はふつうに好きで、前回赴任の帰国前(2021年4月)にはハワースに行って一日歩いて風に吹かれておおー、ってやってきた、くらい。

舞台の中心にはヒースの丘なのか、お花や草がきれいに、ではなく割とごちゃっと適当なかんじで植わっていて、それを囲むかたちで通路がぐるりと回転してその上を人とか馬車とかが流れていく – こちらに見えるのは半円部分のみ、というセット。

上演前に座っていたら(端の席)、いきなり肩をぐいって掴まれたので誰? って振り返ったら「あたしよあたし、Charlotteよ!」って酔っぱらいのようなCharlotte (Gemma Whelan)がそこにいて、他の客や反対側の方にも行ってちょっかいだしたり啖呵をきったりしながらステージにあがる。

この劇の3姉妹のなかで一番元気で威勢がよいのが紺のドレスの彼女で、Anne (Rhiannon Clements)もEmily (Adele James)も色違いだがシェイプはおなじで、どた靴を履いている。 あと、評判の悪い飲んだくれの長男Branwell (James Phoon)も出てくるが汚れ役のようなかんじで顔を出す程度。

先に書いたように一番元気で喋りまくり全体をドライブするCharlotteがいて、少し控えめでやさしそうな(でも書いてみたら彼女が一番XXXだった)Anneがいて、ちょっと浮世離れしたようなEmilyがいる。3人がそれぞれに夢と希望をもって自分の小説を書いて、それがそれぞれに当たったりして、男であるだけでまず認められてしまうような社会で、自分たちに対する世の中の評判や扱いが変化していって、その変化を受けるかたちで姉妹それぞれの愛や関係はどう変わっていったのか、変わらなかったのか、を特にCharlotteとAnneの関係を軸に描く。タイトルにある”The Other Other.. ”の”The Other”が誰で、”The Other Other”は誰なのか、どうとでもとれるような – というか、”Underdog”も含めてそういうことを言うのは姉妹を外から見ている世間のほうで、彼女たちはずっとこんなふうに …  という描きかた。

姉妹それぞれの代表作とか、その内容、それが世に出て評価されたタイミングや順番を知らなくても…とはやはり言い切れなくて、たぶん英国の19世紀の田舎の牧師の家に生まれた女性たち、というあたりも含めて彼女たちが小説に向かった - 小説を書いて出版するというのがどういうことだったのか – 背景のようなことを知っていた方がもっとおもしろくなったに違いない。3人のばらばらなやりとりとその反対側の粗野でバカで画一的でしょうもない当時の男たちの対比はコミカルで十分笑えたりするのだけど。

『ジェイン・エア』の作者であるCharlotteについてはなんとなくわかるけど、『嵐が丘』の作者であるEmilyについては作品世界も含めてあまり触れられていない(静かで謎めいているところで止まっている)のはしょうがないか.. というか、彼女たちの振る舞いとかお行儀とかじゃなくて、なんでこの三姉妹があんなにもすばらしい作品を - 世界中で読み継がれたり映画化されたりし続けている古典を創ることができたのか、(断片でなんとなく、はあるけど)その創作の謎と秘密にちょっとでも迫ることができていたらなー というのは望みすぎだろうか…

どうせなら全三部作にして、これはCharlotte篇、とかにしてもよかったかも。


R.I.P. Steve Albini..

あまりに突然すぎて、昨晩地下鉄のホームで声が出てしまった。 あと20日を切ったこの月末、バルセロナで会えるはずだったのに。
ギターの弦を引っかくノイズ、声帯を抜けるスクラッチ、打突の鳴りと震え、世界と空気の間に必ず現れるあらゆる摩擦音をそのままアナログのテープに傷として精緻に正確に刻んでかさぶたにする。そうやってできる音のみがマスターで、それを作ることのみに注力したエンジニア - アーキテクトでもコンポーザーでもプロデューサーでもない - すばらしい腕をもつ大工で、彼の仕事はすぐにそれとわかるしいつまでも劣化しない。その仕上げ - 触感と食感にうっとりしてしまうのでメロとか詞とかはどうでもよくなる - というのは言い過ぎか。 

ありがとうございました。

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