5.11.2024

[film] The Fall Guy (2024)

5月3日、金曜日の晩、BFI IMAXで見ました。

これの上映が20:30からで、17時からはRough Trade Eastで新譜が出たばかりのCamera Obscuraのインストアライブがあったので、早めに会社を抜けて行った。ライブは2部構成で最初の早い時間のはサイン入りのレコードがついてて、後のはライブ後のサイン会がついている。客がみっしりであまりよく見えなかったけど、新譜からの曲も含めて元気そうに歌ってくれてよかった。”Let's get out of this country”と”Lloyd, I’m ready to be heartbroken”もやってくれた。英国に来る前、嫌なことがあると”Let's get out of this country”を頭のなかで流してがんばったことだよ。

さて”The Fall Guy”。いちおう、バンドのThe Fallとは関係ないから。 監督は”Bullet Train”(2022)の、スタントマン出身のDavid Leitch。わたしは”Bullet Train”のどこがおもしろいのかちっともわからなかったので、どうかなあ、だったのだがこれはおもしろいと思った。あれ、たぶんブラピが主演だったのが… ではないか。CGバックが当たり前でその虚構にくるまれ、そのプレゼンスが申し分ないので、それらをバックにいくらでも深刻かつ大仰な大ドラマ製作が可能となった最近の重厚長大作傾向のなか、スタントマンはこんなにもすごいんだから、を改めて打ち出しつつ – というかそれ故にか - 内容的にもB級のすかすかで燃えたり飛ばされたり落ちたり、たまんないバックステージもの。

人気俳優Tom Ryder (Aaron Taylor-Johnson)のダブルをやったりしているスタントマンのColt (Ryan Gosling)とカメラオペレーターのJody (Emily Blunt)は恋人同士だったが撮影中にColtが高いところから落下して背中を痛めて現場から遠ざかってからは疎遠のまま、やがて映画監督にまで昇りつめたJodyは変てこSF西部劇”Metal Storm”を撮ろうとしていて、主演がTom RyderなのでプロデューサーのGail (Hannah Waddingham)はColtにスタントに戻ってきてほしい、と引退状態だった彼にコンタクトしてきて、でも現場に戻ってみたら偉くなったJodyは冷めてつんけんしてて、やがてどこに消えてしまったのか現れないTomを探しに出たColtは、行く先々で理不尽に襲われて、浴室で死体を発見して、はじめのうちは調子よくスタントの技で捌いていったりするのだが、なにかがおかしいことに気付く – のだがそもそもスタントの世界は何が起こってもおかしくない世界でアクションによってそれらしく見せたり切り抜けたりするのが仕事なので簡単には終わってくれそうにない。

Jodyがカラオケで”Against All Odds (Take a Look at Me Now)”を熱唱するのと並行して走行中の車のなかでColtとStephanie Hsuと犬がくんずほぐれつのじたばたを繰り広げていくとことか、ところどころおもしろいとこはある、のだが、見せ場①、見せ場②、③.. みたいに見せるために見せてます、みたいなところがちょっと。あと、これは狙ったのだろうけど、悪役がだれだか、最初からわかっちゃうのよね。

後半は、だれかの代替としてアクションを可能な限り本物ぽく見せるだけ、という影の存在のスタントマン故の不条理なありようが滲んできたり、Jodyの恋もどれだけ叩いても虐めても絶対に死なない非現実を生きる男Coltとの間で変てこなSMのようになっていって、そこにKissの“I Was Made for Lovin’ You”のメロが何度も被さったりして、ぜったい大丈夫に決まっているけどなんか気を抜けない – 目を離せない、というむずむずした状態を維持しつつなんとなく能天気に最後まで走ってしまう。これを痛快!ってみるか、なんか騙されたかも… ってなるか、によって分かれるのかしら。

でもEmily BluntとRyan Goslingが一緒にいる絵はなんかわるくないのでよいかも。

映画の現場におけるインティマシー・コーディネーターがクローズアップされてきた流れと同じで、映画的な「おもしろさ」の背後にはこれだけのメンタル・フィジカルへのダメージを引き受ける人たちがいるのだ、という、そこをひっくり返してみたドラマで、興行として当たってほしいし、光が当たってほしいな、とエンドロールの撮影風景を見ると余計しみじみ。

第二弾も用意されているそうで、それならぜひTomCと対決してもらいたいものだ、と。

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