5.09.2024

[film] Das Lehrerzimmer (2023)

4月28日、日曜日の夕方、BFI Southbankで見ました。

これの前には月1回のBFIのサイレント特集があって、4Kリストアされた”Großstadtschmetterling” (1929) –“Pavement Butterfly”を見た。Anna May Wong主演のドイツ-イギリス映画で、とっても悲しいお話しでよかった。この日はお昼に見た”There's Still Tomorrow”から女性が主人公の辛いお話しが3本続いたの。

英語題は”The Teacher's Lounge” - 邦題は『ありふれた教室』- 日本でももうじき公開されるのね。
監督はÌlker Çatak。昨年のアカデミー賞の外国語映画賞にドイツからエントリーされている。緊張感が途絶えない99分。

小学校で担任クラスをもって算数と体育を教えているCarla (Leonie Benesch)がいて、朝の挨拶(おもしろいねえ、楽しそう)から普通の授業風景になるのだが、そこに窃盗の疑いの告発があったらしく全員の財布を置いて教室を出て、とかきな臭い空気が漂い始める。トルコ人の子の財布に余分なお金が入っていることが確認されるのだが、それは親がコンピューターを買うために渡したものであることがわかったり、校長から学校としてはこういう犯罪に対してはゼロ・トレランスポリシーで対処します、という宣言があったり、ああなんかきつそう.. って。

そんなある日、Carlaは職員室の机にかけた自分の上着に入れておいた財布から現金がなくなっているのに気づいて、今度は財布を残してPCの監視カメラをONにした状態で置いておくことにする。すると、やはり現金はなくなっていて再生したビデオに映りこんでいたブラウスの模様から、同僚の総務担当のFriederike (Eva Löbau)ではないかと確信して彼女に詰め寄ると、彼女は激怒して、その場を飛びだしてしまう。後で校長がFriederikeに会っても同様、やっていないというので警察に通報するのだが、無断でビデオを撮っていたことが別の問題になる可能性もある、と。とにかくCarlaがひとり勝手に動いたのはまずかったよね、と同僚の間でも敵味方に分かれてしまう。

更によくないことに、シングルマザーのFriederikeの息子はCarlaの教室の優秀な生徒で、保護者会では先の窃盗事件の際に生徒に尋問が為されたことなどに不信感が出て、そこにFriederikeが現れて勝手にビデオ撮影をされたので警察が捜査をしている、と訴えたのでどういうことか? とざわざわしてしまう。

教室ではCarlaに対してなんでお母さんが(彼女はやっていないって言っているのに)? って問うOskarが彼女のPCを持ちだして川に投げ入れたりしたので暴力行為で謹慎処分となって、それを横で見ていた生徒たちは何が起こっているのか何か隠しているのではないか、真実を教えろ! 知る権利がある! って学校新聞で騒ぎたてて別の問題が立ちあがって…

一般的な話として、ビデオを確認した直後に直接被疑者のところに押しかけるのはまずい、とかあるのはわかるし、カメラに映っていたのは顔ではなくブラウスの柄だけだったので、本当に彼女だったのか、というのもあるし、場合によっては全員が悪くない可能性もあったりする中で、これだけの(終着点から見てみれば)軋轢と苦痛が生まれて解けない、というのはわかるようでわかんなくて、大変だなあ、しかない。

今頃日本で公開になった(のでびっくりしている)”System Crasher“ (2019)でも厳格にロジカルに主人公たちを追い詰めていく内外の規範とやればやるほどそこからはみ出て制御しようがなくなる何かの衝突があったが、ドイツという国なのか国民性なのか「システム」なのか、の大変さ – これらが自分に降りかかってきたらきっとCarlaみたいにトイレでビニール袋をくわえて泣いてしまう - がすごくよくわかる。

でも、緊張感がずっと続いて引っぱる割に、ドラマとしての決着はやや弱いかんじがあって、そこだけ。現実はこんなもんなのかもしれないし、決着はこれ - Done. ってそれを見せたらそれはそれでつまんなくなってしまうのかも知れないけど。

教育現場の教材 – こういうことが起こったらそもそもどう対処すべきなのか、を議論する材料としてはとてもよいのではないか(← 他人事)とか。

でもこれと同様のことって、教育の現場以外のところでも簡単に起こりそうな気がするし、特に真ん中に立つのがそんなに強そうでない、生真面目で叩きやすそうな女性だった場合とかに - という角度も。

主演のLeonie Beneschさんの現場の教師の緊張感と大変さ、それでも生徒と動いている時の楽しそうなかんじが残って、こういう先生は世界中にいるんだろうなー、がんばってほしいなー、しかなかった。 たまにロンドンの映画館でかかるCMに教師になろう、っていうのがあったり(軍隊に入ろう、もあるけど)。

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