5.03.2024

[film] Challengers (2024)

4月26日、金曜日の晩、Curzon Mayfairで見ました。

Luca Guadagninoの新作で、映画館でかかるこれの予告がずーっとうるさかったので早く見てしまいたくて初日に行ったのだが、客席は半分埋まっていなかったかも。

テニスもエロもあんまし興味はなくて音楽が”Bones and All” (2022) に続いてTrent Reznor & Atticus Ross組だったから、くらい。

脚本はJustin Kuritzkes – “Past Lives” (2023)の監督Celine Songの夫で、これもまた長めのレンジで描かれる三角関係のお話し、ではあったか。

冒頭、2019年、New Rochelleの”Challenger” – というテニス大会でPatrick Zweig (Josh O'Connor)とArt Donaldson(Mike Faist)のふたりがテニスコートでにらみ合いながら試合をしていて、それを客席からTashi Duncan(Zendaya)が眺めている、その試合の成り行きと2006年、仲良し高校生だったPatrickとArtがダブルスでUS Openでタイトルを取って意気揚々となり、当時からセレブとしても昇り龍だったTashiと知り合ってからの10年以上に渡る3人のあれこれを、テニスボールを打ち合うみたいに時代を行ったり来たりしながら描いていく。

メインとなるのは冒頭のゲーム、結婚して広告等でもパワーカップルになっているTashiとArtがグランドスラムまであと1歩のところで怪我などで疲れが見えているArtに自信をつけさせるべくNew Rochelle(NY郊外ローカル)の大会にエントリーしてみたら、すっかり落ちぶれて車中で寝たりしているPatrickと決勝でぶつかって、どっちもここでこいつに負けるわけにはいかない、って苛立ったり挑発しあったりしながら一進一退の試合をしていくふたりの様子とそれを客席からクールに見つめる彼女、それぞれの脳裏に去来する愛憎のあれこれが… というそれだけ。

テニスというスポーツの特性とその勝負におけるドラマ性を追う、というよりは、ぴかぴかのプリンセスにやられてしまったふたりの王子が競い合ってひとりが彼女を射止めるのだが、ずっと水面下でどろどろは続いていたのでした、という(だけの)お話しで、別にテニスじゃなくてもボクシングでも柔道でも対面でぶつかり合うゲームなら適用できそうな気がした。(あーでも、ダブルスで組んでいたふたりがシングルで別々になってとか、ひたすらテニスボールを追っかける、いうのはあるのか。追っているのはボールなのあたしなの?とか)

Tashi=Zendayaも怪我で引退する前はテニスプレイヤーで、その獰猛でかっこよいパワープレイにふたりはまずやられて、夜中、ふたりの相部屋に現れたTashiのふるまいで呪文をかけられたようになって(既にいろんな人が指摘しているように”Y tu mamá también” (2001)よね)以降のふたりの視野は決定的に変わってしまい、それくらいTashiが突出してかっこよく無敵ですごい - 夫のArtが犬のように懇願するように言う”I love you”にTashiが冷たくそっけなく”I know.”って返すシーンの飼い主の強さとか – こういうのから、ある種のサイコホラーのようなのに向かうのではと思わせ - 人と人がくっついてなめあったりキスしたり人肉食べたりする際の変態ぽい描写 – “Call Me by Your Name” (2017)の頃からそこは一貫している – はあるので、最後はラケットとネットでばりばりと、みたいなのも妄想したのだが、最後があんな方に行っちゃうのは、ふうん、て。

ラストの方、ゲームの一進一退は果てのないセックスのような反復運動を延々繰り返し、カメラがラケットの傍からボールの中にまで入ったりする変態ぶりで、そのバカみたいな機械的な運動にTrent Reznor & Atticus Ross組の軽めでコミカルな律動がうまくはまっていて楽しいったら。彼らの音の殆どは気持ちよいくらいの飛び道具機能のみ。 他の音楽だと、エモーショナルな夜のシーンでCaetano Velosoの”Pecado”がフルで流れて、それはそれは。

Luca Guadagninoは、次の(もうpost production に入っている)”Queer”(原作William S. Burroughs)- 音楽担当も変わらず -を期待したい。変にかっこつけてないで、ど変態B級サイケみたいのを垂れ流してくれればいいのに。

日本での宣伝、そうとうやかましくてうざいのになりそうだな、と思って、宣伝といえば最近映画館で流れてくるMagnumのアイスクリームのCMのばかばかしいやつ – アイスクリームが列車なの... - があって、”The Passenger”のふやけたカバーみたいのが聞こえてきたのでどこのどいつだ? って後できいてみると..(驚)

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