5.28.2024

[film] The Vagabond Queen (1929)

5月18日、日曜日の昼、BFI Southbankの日曜日のサイレント映画特集で見ました。
ずーっとやってて、まだやっているシアターの改修、NFT3のがおわり、意味不明の階段をのぼって中に入る必要がなくなり、足元が少し広くなって、ドリンクホルダーがついた。NFT1も早くして。

上映前、いつものようにBFIのBryony Dixonさんによる解説がある。

英国がサイレント末期に立ちあげたBritish International Pictures (BIP)による制作で、海外から映画人を呼び寄せて映画産業に本腰をいれようとしていた流れで作られて、本作の監督Géza von Bolváryもハンガリー - ドイツから呼ばれて、撮影のCharles RosherもハリウッドでMary Pickfordの全盛期を支えて、F. W. Murnauの”Sunrise: A Song of Two Humans” (1927)を撮った大御所で、この作品で呼ばれて英国に渡った際に、噂ではあるがAnna May Wongの渡欧にも関わったと言われる、など。 書いていないけど、これの一つ前のサイレント特集で見たのが彼女の主演でものすごくかわいそうな”Pavement Butterfly” (1929) だった。

あと、主演のBetty Balfourは「英国のMary Pickford」と呼ばれていたくらい有名だったって。
下宿屋から王室までぶち抜いて突っ走るどたばたコメディで、彼女の何が起きてもへっちゃらで飄々とした振るまいは確かにMary Pickfordぽいかも。とにかく楽しくて痛快。

元のフィルムには伴奏音楽が付いているのだが、その音は使わずにいつものピアノの人 - Stephen Horne - に演奏してもらう。 あ、邦題は、自分がWebで調べた範囲では見当たらなかったのだが『放浪の女王』、というのがケヴィン先生の『サイレント映画の黄金時代』本にはあった。

ロンドンのぼろい下宿屋で小間使いをしているSally (Betty Balfour)はそこの一部屋に下宿している貧乏学生Jimmyと仲がよいのだが、がみがみ大家からは目をつけられて怒られてばかりで、そんなある日、バルカン半島の小国Boloniaから偉そうなシルクハットを被ったおじさんLidoff (Ernest Thesiger)が現れて、戴冠式を控えていて、でもどこからか暗殺の企てが噂として聞こえてくるPrincess Zoniaの替え玉としてパレードに出てほしい、無事生き残ることができたらご褒美にお金をあげる、と。 Jimmyの滞納家賃と彼が取り組んでいるブラウン管の発明のためにお金が必要だったのであまり考えずにやるよ、って返事をして、Jimmyと一緒に現地に行ってみると王室に潜りこんでいるいかにも悪そうなのとか、見るからにバカ王子は気持ち悪くよだれ垂らして迫ってくるしで、いろいろ大変。

パレード当日も王家転覆を企む一味がルートの要所要所に爆弾とか刀とかそれぞれの得意技を仕込んだ殺し屋たちが配置されて暗雲どろどろなのだが、お転婆Sallyはへっちゃらですり抜けたり、向こうが勝手に自滅してくれたり、地下に潜ったり、ゲームをクリアするみたいにクリアしていってようやく民の待つバルコニーにたどり着くと…

使命感も危機感もそんなにないまま、自分とJimmyのためにがんばるから見てて! くらいの無責任モードでMissionをすいすい渡っていくSallyがいかにもいそうだしかっこよくて素敵。ロンドンの下宿屋の小娘が小国の危機をまるごと救う、って当時の英国の狙いもちゃんと見えるし。 キートンやロイドほどぶっとんではいないけど、こういうサイレントもよいなー、って。

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