11.26.2020

[film] Swallow (2019)

20日、金曜日の晩、米国のYouTubeで見ました。日本でももうじき公開される? 
エグゼクティブ・プロデューサーにJoe Wrightの名前がある。

監督/原作のCarlo Mirabella-Davisにとってはこれが最初の長編となる。ジャンルとしてはホラーになるのかも知れないが、ものすごく面白くて痛快で、ところどころ笑えたりもする。

どこかの都市の郊外の川に面した見晴らしのよいでっかいモダンな邸宅にHunter (Haley Bennett)とRichie (Austin Stowell)の新婚夫婦が暮らしていて、Richieは父から会社の経営を引き継いで、やがては財産も貰えるはずで、さらにHunterは妊娠していることもわかったところで、総合的に俯瞰的に見たところでは誰もが羨むとっても幸せな夫婦であり家庭であるはず。

はずなのだが、夫が会社に出かけてからのHunterはなんかもやもやと不満を抱えてつまんなそうで、自分でもどこがどうしてそうなっているのかを表に出すことはできなくて、携帯のゲームなんかを退屈そうにしていて、でもある日リビングに飾ってある置物をじーっと見つめると、そのうちのビー玉みたいのをえいって飲みこんでしまう。飲みこんで1日くらい経つとそれは体外に出てくるので、それを拾って洗って元のところに戻して落ち着く。そうすると今度は尖ったピンがついた画鋲のでっかいのを少し苦労して飲みこんでみようとして、吐きそうになりながらも飲み込むことができたので嬉しそうで、ただこれが出てきたときは当然流血して、でもやはり満たされる何かはあるらしい。

それと並行して申し分のないご家庭 – 少なくともRichieは幸せそう – に見えたふたりの間には、Hunterからすれば目に見えないいろんな圧や縛りにまみれているらしいことがわかってくる。この辺の描き方が絶妙で、DVがあるわけではないのだが、妻としてこれくらいはやっていて当然、こういうことは喜んで受けとめて当然、この状態で不満申すなんてもってのほか、って周囲から透明な壁を築かれて壊すことも越えることもできない。それらを全て集約した出来事としてやってきたのが妊娠で、自分の身体に起こっていることなのに自分ではどうすることもできない。自由がほしい、とまでは言わないが、自分の身体くらい自分でコントロールできるようになりたい。

自分の外にある何かとの間でそれを可能にするのがSwallow(のみこみ)という行為で、過食や拒食、自傷なんかは周囲に心配かけてしまうし他人になんか突っかかるのはやばいけど、これなら気付かれることもないし、消化されずに自分の体を通過してきたオブジェはちゃんと手元に戻ってきてくれる(愛おしい)。ここまでだったら、John Waters先生あたりが作りそうなホームコメディになりそうな。

だがそのうち妊婦の定期健診でスキャンをしたら赤ん坊の横になんかあるけど..  ってなって慌てて開腹したらとんでもないのがでるわでるわで、家族(除. Hunter)は驚愕して頭を抱えて、とにかく彼女には使用人(♂)をつけて飲みこめそうなものを全て片付けて24時間行動を監視させて、セラピストもつける。家族(除. Hunter)にとっては、生まれてくる赤子を人質に取られているようなものなのでとにかく必死で、そんななかHunterはセラピストに自分の出生について打ち明けて..

彼女の挙動は医学的にはPica – 異食症 – と呼ばれる症状なのだが、その角度からの言及はしない。閉塞された状況に置かれた主婦が徐々に飲みこみモンスターに変貌していく、というホラー、というよりは彼女をそこに追いこんでいったRichieとその父母、それを朗らかに取り囲むソサエティのありようの方がよっぽど怖いわ、っていうのを前面にもってきて、最後に描かれるエピソードでは更にその先に踏みこんで男性が支配する社会にダイレクトに切りこもうとする。

昨年のTribeca Film FestivalでBest Actressを受賞したHunter役Haley Bennettさんのつーんとしたつまんなそうな顔(日本だとモトーラ世理奈さんかしら)が素敵で、その顔が彼女の暮らす邸宅のインテリアのプラスティックなかんじによくはまる。 あんなところにいたら小物とか土とか飲み込みたくなるのもなんとなく。


少しづつ見ているSeason 4の”The Crown”はEpisode 8まできた。おもしろいので毎日Recapを書きたいくらいなのだが、EP8で、当時の自分がいかにサッチャーを嫌っていたのか、その理由も含めてありありと思い出した。 とにかく「国を強くする」っていう考え方が嫌だったんだわ。いまも。

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