10月26日、月曜日の晩、BFI Playerで見ました。
LFFで見た”Ammonite” (2020)のFrancis Leeの長編デビュー作。今でもたまに劇場でかかるし、ストリーミングではどこでも普通に見れる、英国ではそういう息の長い作品になっている。
ヨークシャーの田舎で羊や牛の牧畜をしている農家にJohnny (Josh O’Connor)がいて、父は倒れて半身が利かなくなり、祖母は生活全般があって動けないので、彼に一家(含.家畜)のこれからの全てがのしかかろうとしているのだが、どうしろってんだ、って半分やけになって絶望してて夜にパブで飲んだくれて目があった男子とトイレでやってゲロ吐いて気がつけば道端で.. みたいな荒んだ暮らしを繰り返していて、そうやって朝帰りしていると出産で子牛が死んじゃったり、はっきりとやる気もなければ未来もないかんじ。
ある日、農場支援プログラムみたいなところからルーマニア人のGheorghe (Alec Secareanu)が派遣されてきて軒先に部屋を借りて、同じ屋根の下で一緒に暮らし始める。Johnnyは初め彼のことをジプシーじゃないか英語は喋れるのか、とか冷たい目でからかうのだが、彼は瀕死だった子羊を蘇生させたり、死んでしまった子羊の足先を4本ちょんてハサミで切って毛皮をするする剥いで、それを瀕死の子羊の方に被せて着せると親羊が構ってあげるようになったり(ここ、実際にやっている作業なのだろうけどちょっと感動した)、羊飼いとしての手腕は確かなようで、ふたりは飲んだくれ野郎ちゃんと仕事しろ vs. ジプシー野郎国に帰りやがれ、とか小突いたり吠えたりしつつ仕方なく手を貸しあうようになって、やがて..
地の果ての 羊牛以外に誰も好んで寄ってこないような土地 – God’s Own Country - で心身共に羊牛並みに汚れて疲れて明日の見えない男たちが半泥のなかで取っ組み合って、そのままキスして抱擁に至って崩れ落ちる。(あんま読んだことないけど)世でBLと呼ばれているのかもしれない若く青くきらきら眩しいイメージは全くない。彼らの恋はそれによって浄化や救いがもたらされる類のものではなく、泥のなかで更に泥にまみれて地中に埋もれてひとつになる、或いは単なる暇つぶしなのか - そういう大地を耕す経験のように描かれていて、そのシンプルさ故に十分な説得力と力強さがあると思った。神話で描かれた剥き出しの、ただ起こってしまいました、それだけのような。
もちろんそれは親たち&世間に知られないわけがなくて、”Brokeback Mountain” (2005)のような悲劇になったらやだなー、とはらはらしながら見守るのだがそれはなくて、どこまでも一途でストレート – or 獣のそれのよう – な恋物語で、ぜんぜん悪くないの。人も獣も恋におちる、例えばこんなふうに。以上。
”Ammonite”での恋の描き方もこれと似ていて、農場の泥が海辺の潮とか石の味に変わりはするもののひとつの愛の誕生を描いて、その始まりにおいてはLGBTQもないの。ただ動物のように寡黙で荒々しい生々しい交わりがあるだけで、神の国とはそういうものなのか?(ふたつの映画のセックスシーンの猛々しさはこれまで映画で描かれてきたそれとは違うかんじでなんかよいの)
なんでヘテロじゃないの? って思う人がいるのかもしれない。そこのところ - なんでそう思ったのか - は各自考えてみよう。
Josh O'Connorの堕落っぷり乱れっぷりが見事で、そこだけでも。“Only You” (2018)も公開されてほしい。
開票が始まった。もう既に吐きそうになので、寝ます。
11.04.2020
[film] God's Own Country (2017)
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