15日、日曜日の昼にCriterion Channelで見ました。邦題は『明日は来らず』。
監督は、同年に傑作コメディ - ”The Awful Truth”をリリースしているLeo McCarey。彼はこの作品でオスカーの監督賞を受賞しているのだが、彼自身が受賞すべきはこっちじゃなかった(got it for the wrong film)、と言っている。”The Awful Truth”も問答無用の傑作だとは思うけど、比べられるものではないけど、確かに”Make Way for Tomorrow”のがすごいと思う。
あまり映画を見ても泣かないほう(誰と比べて?)なのだが、どうしても何度見てもぼろぼろ泣いてしまうのが数本はあって、筆頭はNicholas Rayの”They Live by Night” (1948) -『夜の人々』で、そしてもこれもたぶん - まだ2回目だけど。初めて見たのは2010年に暮れにMoMAの映画部門で、絶対ハンカチ持参するように、って書いてあったのに無視していったらぼろかすにやられて、ううどうしようこれじゃ帰れない、って横とか後ろ向いたらアメリカ人もみんな同様にぼろぼろに泣いてた。
Bark (Victor Moore)とLucy (Beulah Bondi)の老夫婦が暮らしている家に既に独立してそれぞれ家庭を持っている5人の子供たちのうち4人 - ひとりはカリフォルニアで遠い - が集まって楽しく話し始めたところで、Barkがもう働いていないので、この家を手放さなければならなくなった、という。なんで突然そんなこと言うのよ、って子供たちは非難動揺するのだが、彼ら二人を一緒に引き取れる広さと余裕のある家のある子はいなくて、Barkは娘のCora (Elisabeth Risdon)のところに、Lucyは長男のGeorge (Thomas Mitchell)のところに別々に引き取られていく。
Lucyが滞在するGeorgeの家には17歳の娘がいて、Lucyが来てしまったので彼女はこれまでのように友達を家に呼べなくなったり、Georgeの妻が自宅の居間でやっているブリッジ教室の時間に現れて場をかき乱してしまったり、本人はまったくそんなつもりはないのだが、ゆっくりと息子の家族との間に溝が出来ていく。Barkも近所のユダヤ人の友人と楽しく過ごしたりしているものの、娘の家族からはやはり疎まれていて、風邪をひいて辛そうなBarkの様子を見たCoraは暖かい土地での療養が必要だからとカリフォルニアにいる娘の方に移ってもらう算段を進めて、Georgeの方も「Lucyのために」NYのアッパーステイトにあるケアホームを探し初めて、親は子供たちがどう思っているのかをそれぞれに察して、特に文句も言わずに出ていくことに同意する。 この辺は見ていてとっても辛くて奥のほうがひくひくしてくるのだが、泣くのはまだ早いの。
Barkがカリフォルニアに旅立つ日に子供たちは一同に会してお別れディナーをすることにして、でもその午後はふたりだけで過ごしたいから、と新婚の頃の思い出の場所を巡っていく。プロモーションをしていた車の後ろに乗せてもらって街中のドライブを楽しんで、思い出のホテルに着いてバーでホテルの人に当時のことを語ったら歓待してくれて、楽しくなったから子供たちの方はいいや(いいよ、って見ている方も頷く)、ってそのままホテルで食事をしてダンスをして… ここで出会う人たちがみんな天使のように素敵な人たち - ダンスホールのバンドリーダーの人とか - でふたりの思い出を暖かく祝福してくれる。
この辺からじわじわくる - 見つめ合うふたりが本当に嬉しそうで楽しそうで、心の底からその時間を慈しんでいるのがわかるから。
で、ふたりは駅のホームに向かってBarkは列車に乗りこみ、Lucyはホームでお別れのキスを... 大決壊。
さらに、ふたりがさっきダンスで踊った”A Let Me Call You Sweetheart”がふわりと被さってくると、大津波が ...
ふたりはまた会えるって互いに信じて疑わないの、でもひょっとしたらこれが最後になるかもしれないこともわかっているの。そういうとき愛し合うふたりはどんなふうに見つめ合って微笑んで手を振り、その手を離すのか。(こういうのって書けば書くほど野暮になる) いまコロナで、こんなふうに離れ離れになってしまった人たちもいっぱいいるんだろうな、って思ったら更に悲しくなって。
小津の『東京物語』(1953) にも影響を与えた作品と言われていて、あれも泣けるけど、泣けるからいいってもんじゃないし比較できるものではないのだけど、こっちのがなんかいっぱい溢れてくる。
泣いちゃうから見ろ、っていうのはいじめているみたいで嫌なのだが、この映画を見て泣くのは悪いことではないと思うの。
11.22.2020
[film] Make Way for Tomorrow (1937)
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