11.16.2020

[film] Recorder: The Marion Stokes Project (2019)

8日、日曜日の晩、BFI Playerで見ました。 ドキュメンタリー。
フィラデルフィアのアフリカン・アメリカンの女性Marion Stokesは70年代後半から2012年、83歳で亡くなるまで、複数のTV局のニュース番組を24時間 - 30年間ずっと録画し続けて、死後そのビデオテープが約30,00本残されている、と。彼女はどうして、なんのためにそんなことをしたのか?

まずは彼女が暮らしていたフィラデルフィアの裕福なエリアのアパートが紹介され、そこで彼女の世話をしていた運転手とか世話 - 日々のビデオの操作を含む - をしていた男女とか、彼の最初の夫との間の息子から彼女の人柄とか暮らしぶりが紹介される。

あの時代の公民権運動の只中を生きたアフリカン・アメリカンとして社会主義者になり、キューバを含めた世界情勢に敏感で、TVプロデューサーとして67年から69年まで、フィラデルフィアのローカル局で社会正義をテーマにしたトーク番組を作った。ここで二人目の夫となる白人でリベラルのJohn Stokesと出会って、彼との出会いが彼女の社会(変革)に対する理想を強めて後押ししていった、と。

ひとつのきっかけは1979年11月にイランで発生したアメリカ大使館への占拠/人質事件で、この事件の詳細をリアルタイムで報道するためにTV各局は東海岸の23時にニュース番組を組み(そうだったのかー)、更には24時間ニュースを流し続けるCNNが開局された(そうだったのかー)。それまでのニュース番組のありようを大きく変えたこの事件は、ニュースを通して人々の意識や関心を世界で起こっていることに振り向けることに貢献した。こうしたニュースメディアの動勢を記録しておくって、ひょっとしたら大きな可能性を秘めたなにかになるのではないか、と当時発売されたばかりのベータマックスのビデオデッキを複数台買いこんで、24時間エンドレスの録画を始めた、と。

そうやって記録された中で紹介されるのが例えば、2001年9月11日の、あの火曜日の朝8時40分くらいから、モーニングショーをやっている各局の画面が緊急ニュース映像に次々に切り替わっていくところ。あの朝、会社の窓から煙が出ているWTCを見て、なんだこれ? って思っていたんだなー。とにかく逃げるべし(次のアタックがくる可能性があったから)って自分のアパートに戻ってしばらくの間、ニュースしか見るものがなくて、これずっと録画しておこうかな、と少し思ったことも思い出した。(でも録画したとしても見れなかったかも。いまだに辛くて見れない。)

Marionが収集したのはビデオテープだけではなくて、アップルのPCも初期の世代から入れ込んでものすごい数を買いこんでいたとか。単なる新しもの好き説もあるようだが、70年代末から80年代初ってやはりいろんな可能性があった時期だったのではないか(パンクとかも)。90年代以降にこれをやってもただのサブカルとかオタクとしか呼ばれない。

残された30,000本のテープは大学のアーカイブに寄贈されデジタル化が進行しているそうで、今後の貴重な資料になることは間違いない。 けど、思ったのは、こないだの大統領選のもそうだけど、メディアの主軸 - 少なくとも半分くらい? - がインターネット上のソーシャルメディアに移ってきたことで、デジタルでスマートでインタラクティブになったことで、いくらでも起こりうるようになったフェイクに書き換え/差し替えに消失の問題をどうするか、ってことよね。あるいは、情報として「誤り」とまでは言えないけど言葉の使い方や発話者やそのトーンを恣意的に操作することでいくらでも「世論」を形成したり押したり推したり炎上させて「ネタ」にしうる今の「ニュース」のありようになどついて。

いまはもうフェイクや情報操作はいくらでも起こりうる - ソースが国だろうが新聞だろうがTV局だろうが個人だろうが - という前提を置いて注意深くニュースに接していくしかない。っていうのと、そうなったときに土台になるのは、社会正義とか平和とか人権とか国家とか、それってどういうものか/どうあるべきなのか(これって右左とか両論を置いて云々できる相対的なものではない)についての一人一人の認識とか知恵とかで、これって情報に接する機会とか規制とか頻度の話ではなくて教育というインフラがどうあるべきか、っていうことなんだよね。 にっぽんがもうだめだと思うのはここのベースが既に徹底的に破壊されているから(今のあの国の政治家を、メディアを見てみ)。

といったことを考えるのにとってもよいネタにもなるので、日本でも公開されてほしい。


今日から”The Crown”のシーズン4が始まって、評判もよさそうなので最初の2話くらいを見た。これまでのはだいたい3〜4話くらいで挫折していたので、今回はもうちょっとがんばりたい。
 

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