11.06.2020

[film] La Belle Noiseuse (1991)

10月31日、土曜日の昼、Criterion Channelで見ました。31日でいなくなるリストにあったので。
邦題は『美しき諍い女』。公開時にも見ているし、原作の『知られざる傑作』も読んでいるのだが、どちらも忘却の彼方にあったので、とっても新鮮に見ることができた。

監督Jacques Rivette、原作Honoré de Balzac、脚本Pascal Bonitzer、撮影William Lubtchansky、音楽Igor Stravinsky、主演にMichel Piccoli, Jane Birkin, Emmanuelle Béart って、夢のようにゴージャスなスタッフでキャストでオペラのように揺るがなくて、これならあと6時間でもそれ以上でも見ていられる。

南フランスのホテルに滞在している(David Bursztein)とMarianne (Emmanuelle Béart)の若いカップルがいて、画商のPorbus (Gilles Arbona)に連れられて近くの古城に暮らす画家のÉdouard Frenhofer (Michel Piccoli)とLiz (Jane Birkin)の夫婦を訪ねる。 Édouardは画家としての活動は休止しているようだったが、もう使われていないアトリエに足を踏み入れて、かつて描いていた – そして途中で止めてしまったらしい - 10年前の絵のことに触れられるとやや過剰に反応して、その様子を見たNicolasはÉdouardにMarianneをモデルにその絵 – “La Belle Noiseuse”と呼ばれた - を再び描いてみる気はないか、と持ち掛ける。

しばしの沈黙の後、Édouardはやってみよう、と言い、でもNicolasはそれをMarianneがいないところで彼女の合意なしに決めちゃったので彼女は当然ふざけんなって激怒して(当然)、でも当日になるとひとりで城に現れる。Édouardは淡々とアトリエの椅子や家具を動かし画材一式を用意して、初めはノートにペンと墨で、それから紙にチョークで、最後は絵具で、そのサイズは段々に大きくなって、Marianneに対しては立たせて座らせて、着衣で脱がせていろんな姿勢を取らせて、様々なバリエーションの絵を描いては捨てるように重ねていって、徐々に何かに近づいていっているようなのだが、それが何なのかどんなものなのかは、Marianneに短い指示とポーズを固定させるばかりで全く語らない。

当初激怒していたMarianneは一日モデルをした後に疲れたのでもう来ないかも、と言い残しながら翌朝には再び現れて、求められるままにいろんなポーズを取って彼の目や筆の動きと対峙していくうちにÉdouardに対してなのか、描かれつつある絵画(or 完成されてしまう絵画?)に対してなのか、挑みかかるような目と態度に変容していく。単なる画家とモデルの関係が画布を挟んでそうではない何かに変わろうとしているかのような。それはどこで何を起点に起こりなにを目指しているのか、当事者たちにもわからないかのような。それがもたらすのは恐怖なのか恍惚なのか絶望なのか。

彼らの周辺で別世界に行ってしまったふたりを恐々眺めているのが、Édouardが最後に手掛けていた作品のモデルだったLizと、Marianneを売ってしまったことを後悔しているNicolasで、でも気付いた時にはどうすることもできないのだった。

これ、建てつけとしては明らかにクラシックなホラー映画のそれで、カメラも割とそういう動きをする - 画家の手元と部屋の全体の往復とか城の構造とか。怖れを知らない若いカップルが古城を訪れて、そこに暮らす伝説の画家とその妻 – 過去の何かを引き摺っている不自然なカップルと出会って、隠蔽されていた彼と彼らの過去の秘密 – 秘教的な何かに触れて引き返すことができなくなる。そしてまさにその核心に届きそうになった時..   結局その何かは壁の奥に塗りこまれてその蓋を閉じてしまう、と。

絵を描くことを第三者には触れようがない特別な経験として描いて、そこに第三者としての映画はどこまで迫ることができるのか、それはいまの世界とどう繋がっているのか、というテーマの広がりがあって、同時に絵を描くということを画布と対象の間に起こるなにかとして捉えて - それってなんなのか、”OUT 1 : Noli Me Tangere” (1971)で繰り返されるリハーサル風景と同じなのか違うのか、などなど。

Michel Piccoli、すごいねえ。巨匠と変態の紙一重みたいな佇まいって、彼ならではの。


ロックダウンの初日、でも別にこれまでとそんなに変わらないような。お店は人数制限しているところもあればそうでないとこもあるし。とにかく夕方に買いものに行く時には日が沈んでいるのがなんか寂しいかも。暗いと遠くまで行く気にも新しいお店を探してみる気にもならないし。
 

ジョージア ... 行け(祈)。

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