22日、日曜日の晩、Film ForumのVirtualで見ました。ドキュメンタリー。
NY、マンハッタンの北の方にある病院Mount Sinai Hospitalで2016年に設営されたMount Sinai Center for Transgender Medicine and Surgeryにやってくる患者たちと医師Dr. Jess Tingの奮闘を描く。
NYはトランスジェンダーの手術やケアに保険適用をできるようにした9番目の州で、それに伴いMount Sinaiは専用のセンターを立ちあげて、それまで形成外科の医師だったDr. Jess Tingは新たな領域に挑戦すべくここの最初の専任としてやってきた。
性同一性障害のことは、10月に見た仏のドキュメンタリー”Petite Fille” (2020) – 英語題”Little Girl” で7歳の少女(と家族)の生々しく痛ましい苦悶の記録を見たし、自身の生まれてきた性をもう一方のに替えるというのが本人はもちろん周囲の家族も含めてどれくらい大変なことか、それなりに理解しているつもりだった。でも、このドキュメンタリーで実際に5人のケースを見てみると、まだ自分はぜんぜんわかっていなかったかも、と改めて思った。
年齢も性別も境遇もそれぞれ異なる患者の人達に共通しているのは、とにかくこの手術をずっと切望していた、自分が生まれてからここに来るまでにどれだけ理不尽に悩み苦しめられ自殺を考え(実行し)、闇と絶望の生きていない状態の中にあったか、それをいよいよ終わらせることができる、どんなにこの日を待ったことか(ああ神さま)、と誰もが強く語り、施術前に家族やパートナーとお祈りの涙を流し、終わるとそれが歓喜の涙に変わる。その様子 – 人が医学の力で生き返る、再生する(Born to Be)その様を目の前で見るって - 難病とか重大事故のは別として – そんなにあることではないかも。
それを可能にするDr. Jess Tingがなんかよい人で、超絶技巧をもつカリスマ医師、みたいな雰囲気はぜんぜんない、朴訥なおじさんふうで、本当はジュリアード音楽院からコントラバス奏者になるつもりだったところから転向したというキャリアも含めて、患者や医療チームとのやりとりがとても素敵で。
でもそんな彼の治療と施術を求めて今は2年超えの待ち行列ができていて、スタッフの数も倍に増やしているのだが追いつかないって。ここだけの現象かも知れないけど、これだけの人々が待っている = 苦しんでいる、という事実は知っておいた方がよい。見た目の外見では決して判断されないが故の苦しみ、を想い測るのは難しい。本人や家族や社会の努力でどうにかできる部分もあるが、やはりそれだけではぜんぜん足らないのだと。
ここに登場する5人の患者は境遇もいろいろで、50歳を超えるアフリカン・アメリカンの男性→女性になるCashmereさんは街角に立つSex Workerだった過去を振り返りつつみんな死んでしまった.. と言うし、同様に男性のトップモデルだったMahoganyさんは女性になることを決意した途端にすべてのキャリアと収入を失ってしまった、と言うし、暖かい家族に支援されて転換後に白人女性のモデルとして活躍を始めたGarnetさんは、女性になった途端に思いもしなかった方角から覆い被さってきた社会のいろんな壁や圧に耐えられなくなって自殺未遂を図ってしまうし、トランスジェンダーに関しては過去の陰惨な歴史も含めて継続的な議論と確認と救済が必要で、それは彼らというより我々 – 健常者と呼ばれる – の側のことなのだ、って。少なくともトランスもゲイも見えないもの(or お笑い見世物)としてごまかして存在しないものにしてしまうような社会にするのは止めないと。(→J. K. Rowling、ほんとがっかりだわ)
あと、Dr. Jess Tingがずっと取り組んでいるvaginoplastiesやphalloplastiesについて(まずは辞書をひいてね)も紹介されて、言葉では説明されるのだがここの映像には出てこないので想像するしかない。でも患者みんながわーお! とか言ってびっくりして笑ったりしているのでどんななのかなあ、って。
で、そういうのも含めて勇敢に戦っている彼らを見るのって悪くないの。
あと、こんなふうに性別の属性を変える重さ大変さと比べたら結婚後の姓を変えずにそのままにしておくことなんて、屁でもないだろうに。ここに拘る連中の不気味さ(拠って立つところの不明瞭な気持ち悪さ)ってほんとなんなのかしら?
11月があー。 もうなにもかもどうしようもないけど、一応いっておく。
11.30.2020
[film] Born to Be (2019)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。