11.02.2024

[film] Teaches of Peaches (2024)

10月24日、木曜日の晩、Barbican Cinemaで見ました。
毎年やってくるDoc'n Roll Film Festivalのオープニングで、ロビーは人で溢れかえっていた。上映後にPeaches(Merrill Nisker)とのQ&Aつき。

“The Teaches of Peaches” (2000)のリリース20周年を記念したツアーの記録を中心に、これまで彼女がどんなことをやってきたのかを振り返る - キャリアを総括するようなものではないから間違えないように、と上映後に本人が釘をさしていた。

00年代の音 - Roland MC-505のエレクトロを中心にぶいぶい鳴らしてアゲて、ざっけんじゃねーよ! って蹴散らしていくバンドがいっぱい出てきて、おとなしくて暗めの人たちはDFA - LCD Soundsystemとかの方にいってフロアの床を地味に蹴って、よりパンクな方はLe TigreとかM.I.A.とかPeachesとかに行って踊ったり拳をあげたり噴きあがっていた。 自分はどちらかというと前者の方だったけど、すぐ隣だったり近くだったりしたので、ライブも何回かいった。 あの頃、PeachesやLe Tigreの存在に救われた子とか多かったのではないかしら。

現在住んでいるベルリンのスタジオで、ツアーに向けたリハーサルの合間に、昔の映像が流れてPeachesの前にやっていたThe Shitのバンド仲間だったChilly Gonzalesからのコメントとか、90年代ぼろアパートに一緒に暮らしていたFeist - ローラースケートをはいて謎のキラキラでバックボーカルしている姿が笑える – からのコメントとか。当時からずっとああだったのかー、などと思っていると、子供たちを前にアコギを抱えて歌のおねえさんをしていた時代の映像が微笑ましい。

20周年のだから、と特別に気合いを入れたり思いや抱負を語ったりすることなく、メンバーと一緒に淡々と変てこ衣装やメイクを仕込んでリハで確認してライブでぶちかまして次にいく、その後ろ姿がかっこいいったら。

Peachesの教え - "Fuck the Pain Away"は、20年経っても色あせていないし、たぶんPainは消えることなくまだあって、でも"Fuck xxxx Away"だ! って泡をぶちまける。 彼女のヴォーカルって、どんなに激しく荒れたやかましいライブになっても、言葉としてきちんと届く・届かせるものになっているのだということが映像を見ているとわかる。

彼女とのQ&A、想像していた通りの素敵なひとで、ベルリンに住んでいると今は言論統制とかいろいろあると思いますが.. と問われて、即座に、Free Palestineだ、そんなのあったりめーだ、って強く (大拍手)。


Devo (2024)

10月25日、金曜日の晩、同じくBarbican CinemaのDoc'nRoll Film Festivalで見ました。

開始が18:15で、この日はそのまま↓のにハシゴしたくて、会場間の移動時間を30分とすると結構ぎりぎりなのだがなかなか始まってくれなくて、イントロもゆっくりで、このフェスのそういうずるずる運営がいやだ。

これまでありそうでなかった(あったのかな?)Devoの歴史ドキュメンタリー。

Kent State UniversityでGerald CasaleとBob LewisとMark Mothersbaughが出会って楽器も何もないところから始まるのだが、オハイオの州兵に学生たちが撃たれたあの事件 – Neil Youngの歌ったあれ - が起こった当時の学生だった、というのに驚く、のと彼らが作った冊子とか落書き、ばかばかしい写真に映像、証言とかも全部取ってあってどれも当時から一貫していたのがおもしろすぎる。 NYに出てからBowieに惚れられてEnoを紹介されて、というその過程もDe-voとしか言いようのない野心を欠いた(ように見える)転がりよう - ところてんが押しだされるみたいに種も仕掛けもないかんじなのがすごい。

日本では(たしか)江口寿史の漫画でギャグのように紹介されていたのだが、実際にStiffから出た”Jocko Homo"を聴いたら痛快に尖がっていて、びっくりしたのを思い出す。Talking Headsより断然パンクじゃん、と当時思ったし、いまも少し。

低迷期を抜けて再び盛りあがろうとしていた90年代辺り – 残り10分くらい - で次のがあるので泣きながら抜ける。 バンドの立ちあがり~黎明期の一番クリスピーで膝を何度も打ってしまうところを確認できたのでよしとした。 資料が十分に網羅されていてわかりやすく、音楽ドキュメンタリーの見本のようにとてもよくできていた。 いつか再見したい。

結成から約50年が経って、人類は着実にDevoしてきたと思われるのだが、バンドはその逆になっているのではないか? という辺りについて最後にコメントを聞けたのではないか、とか。


S/he is Still Her/e: The Official Genesis P-OrridgeDocumentary (2024)

10月25日、金曜日の晩、↑のに続けて BFI Southbankで見ました。BarbicanからSouthbankに向かうバスが来なかったので仕方なくタクシーを使った。今年赴任してからタクシーを使ったの2回め。

ロンドンプレミアで、客席にはPeachesもいたらしい。 Genesis P-Orridge (1950-2020) のドキュメンタリーは2022年にMOMAの配信で”Other, Like Me: The Oral History of COUM Transmissions and Throbbing Gristle” (2020) を見ているし、その前にも”The Ballad of Genesis and Lady Jaye”(2011) というのがあったし、少しだけまーたかよ、にもなるのだが、これは”Official”ドキュメンタリー、だという。たしかに、アーティストの - 人としてもだけど - 生きざまとしておもしろすぎ、というのはあるかも。人生そのものがアートでした、というよく使われる文句がこの人ほどイメージとして鮮明に表出して、その変貌も含めてアート的に痛快に転がっていった例を知らない。そして本人はそれらを特に狙ってやっていったわけでもない、いろんな人たちとの出会いのなかで巻きこまれるように紡いでいった(本当かどうかはわかんないけど)ように見えるぐんにゃり柔らかい動物のような不思議さと不穏さと。

生まれ育った頃からCOUM~TG~Phychic TV辺りまでのことは、ヌードの肖像画を描いてもらっている晩年の彼/彼女の様子と並行して語られ、内容としてはほぼ知っていることばかりだったのだが、90年代、QueensのRidgewoodに移り住んでLady Jayeと出会った辺りからがおもしろくなる。 Love and RocketsのKevin Haskinsが語るRick Rubinのスタジオの火事で焼けだされた時のこととか(他にもいっぱい)。

上映後に監督のQ&Aがあったのだが、夢にGenesisが出てきてドキュメンタリーを作ってほしい、と言われたので本人に会いにいった、とか、聞き手のひとも自分のことばかり喋っててちょっとつまんなかったかも。そういう磁力みたいのがあった人、であることはよくわかった/しってた。

一瞬、“Pretty Hate Machine”のジャケットが映ったりもする。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。