11.09.2024

[film] Anora (2024)

11月2日、土曜日の昼、Curzon Bloomsburyで見ました。ここからしばらくはLFFでプレミアされたやつの後追いシリーズが続く。

カンヌでパルムドールを獲ったSean Bakerの新作。(世間一般からすれば)隅っこの方で暮らす人々のちょっとした機微やごたごたをナイーブかつヴィヴィッドに、痛快に - そのよさ・痛快さってなんなのか、も含めて - 捕らえてきた彼がパルムドール、と聞くとちょっと驚くが、ものすごく評判がよいと聞いて。

Anora "Ani" Mikheeva (Mikey Madison)はNYの高級めのストリップクラブで働いていて、客としてやってきたロシアの富豪の息子 - 若くて明るい以外になんの取り柄のなさそうなバカっぽい子 - Vanya (Mark Eydelshteyn)に、ロシア語が少しできるから、という理由で引き合わされて、べたべた営業していると彼は彼女のことを気に入ったようで、翌日Briton Beachのほうの豪邸に彼女を呼んで、更に気に入った、ので$15,000で一週間一緒にいてもらうことにして、その流れで仲間たちとプライベートジェットでベガスに行ってどんちゃん騒ぎして、その酔っぱらった勢いに乗って、Aniと結婚してしまう。Vanyaからすれば、Green Cardも貰えちゃうからよいか、程度で。

すべては酒とドラッグとセックス、その快楽があり、Vanyaはそれをお金(大金)で買う、Aniはそれを売る - 仕事/サービスとして応える。互いにそれで十分だと思っていたのだが、「結婚」 - 紙の契約によってそれらの色というか扱いが変わってしまう - ことをボンボンのVanyaはわかっていない、けど、セックスワーカーであるAniは十分にわかっていた… これにくっついて指輪とか毛皮とか…

やがてVanyaが「結婚」なるものをやらかしてしまったらしいことを知った富豪の手下でVanyaのお目付役のおじさん(Karren Karagulian)とその部下 - どう見てもちんぴら - 2人(Yura Borisov, Vache Tovmasyan)が彼らの「結婚」をキャンセルさせるべく乗りこんでいって、Vanyaはその現場から逃亡していなくなり、豪邸にひとり残されたAniと彼らの必死の、必死であればあるほどばがばかしくておかしい戦いと消えてしまったVanyaを探して寒そうなBrooklynの盛り場に出ていく彼らの、これもばかばかしい彷徨いが物語の中心にきて、やがて猛り狂ったVanyaの両親がプライベートジェットに乗って現れて…

全体としては、言われているようにスクリューボール・コメディ形式のPretty Woman、ということになるのだろうが、結末は結構苦くてせつない。最後にいつもの現実に戻る、夢から少し醒めてアザとかカサブタに気づく、という辺りはいつものSean Bakerだと思うけど、こんなにもそこらに転がっていそうな世知辛い結末にしなくたってさー、というのが少し。 “Home Alone”みたいにAniが家に侵入しようとするちんぴら達をぼこぼこにする話にしてもよかったのに。

あとこれ、愛とセックスをめぐるお話しのようで、ふつうの職場の労使関係でも起こりそうなお話しで、要はお金があって人数固めて支配している側がいつも勝つ、っていういつもの、と思って諦めることもできるか。

だだっぴろい豪邸で、ふりかえる度に犬のように交尾しているふたりの姿などがたまんなくよかった。

あと、既にいろんな人が言っているようにMikey Madisonの強さ、しなやかさがすばらしい。反対側に出てくる男性たちはみんなむかつくくらい普通でちっちゃく固まっていて、いちいちあったまくるのだが、手下のひとりとして出てきたYura Borisovは、“Compartment No. 6” (2021)に出ていた彼よね?

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