11.16.2024

[film] Heretic (2024)

11月6日、水曜日の晩、Curzon Aldgateで見ました。
A24制作、Hugh Grant主演によるホラー。作・監督はScott Beck、Bryan Woodsの共同。撮影はPark Chan-wookと一緒にやってきたChung Chung-hoon – とてもよくわかる。

怖そうなので見るか見ないか少し悩んだのだが、見ることにしたのは、Hugh Grantだから…? なぜ彼なら怖くないかも、と思わせてしまうのか。こないだの”Blink Twice” (2024)もそんなだったかも - Channing Tatumならいいか、とか。

熱心なモルモン教徒のふたり - Sister Barnes (Sophie Thatcher)とSister Paxton (Chloe East)が伝道のために一緒に戸別訪問をしている。Sister Barnesは力強く確信と使命感に満ちていて、Sister Paxtonはやや気弱で自信がなさそうで、そんなふたりが雨も降ってきたし、とっとと片付けましょう、とある家の入口に自転車を停めてロックして、ブザーを鳴らすとMr. Reed (Hugh Grant)が出てきて、英国人ぽいユーモアたっぷりのどうでもよい世間話をしつつ、妻がブルーベリーパイを焼いているから、とかなんとか、数回に渡って彼らを置いていなくなったりして、やがてSister Barnesがブルーベリーパイの匂いが蝋燭の贋物であることに気付いて、なんかこいつおかしいから出ようよ、ってなったところで鍵がかかっていて外に出られない状態になっていることを知る。

基本的にはHugh Grantの独壇場で、彼のすごいところは、なんで、なんのためにそんなこと – べらべら喋りまくるとか – をやっているのかぜんぜんわからない – 悟らせたり突っこませたりする隙を与えずに、その場を強圧的じゃないかたちでどんよりべったり支配してしまうことで、どう返したり対抗したりすべきか、と思い始めた頃にはもう遅い。

あとは、囚われたふたりとも宣教師なので力でねじ伏せるようなことは考えていない – それをやったら終わり、というのを自分も相手もわかっているので、でもそうやっているうちに気付いた時には泣いても騒いでもどうしようもなく無防備な状態にされていた、と。

しかもそういう状態にしてしまってからMr. Reedは宗教の話をふっかけてくる。すべての宗教の類似性とか根っこは.. とかなんとか、よくあるやつ。真面目な宗教者であればあるほど – ここではSister Barnesが食らいついて、でも落ち着いて蹴とばされて心証を悪くしたのはMr. Reedのほうだったようで、彼はますますこの娘にお仕置きしてやらねば、強く思ってしまったらしい。

時間までにどうにかしないと、とか、謎解きをしないと、とか、人質が.. とかではない、シンプルに、でもがっちりと幽閉されてあまり気持ちよくないものをいろいろ見せられて、先に何が待っているのか、なにをされるのかわからない、そういう種類の落ち着かない恐怖で、気の持ちようみたいなところで悲観も楽観もできて、その幅が結構広いので見ているほうはややしんどい(111分ある)。Hugh Grantが七変化したり、女性になって出てきたりすればまた別だろうが(ジャージャービンクスの真似はしてくれる)。

“Drive-Away Dolls” (2024)や“Love Lies Bleeding” (2024)にあったような邪悪な男(たち)に女子ふたりが立ち向かってぼろぼろにする・退治する、という最近の傾向を期待したのだが、そっちの方には向かわずトラディショナルで陰湿な監禁虐めサバイバルものになっていて、これが神学とかタイトルの「異教徒」の方に行ってくれたらもう少しおもしろくなったのではないか。

それにしても、クマを虐めて、今回は宣教師を虐めて、Hugh Grantはいつまでこんな小物感たっぷりの小悪党をやっていくつもりなのだろう… っておうちに着いてBBCをつけたら”Four Weddings and a Funeral” (1994) をやってて、なんだこれは… って思って気がついたらソファで落ちてた。

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