10月27日、日曜日の午後、BFI Southbankで見ました。
こんなふうに映画祭の1週間後には殆どの新作が見れるようになるのだから、がんばって映画祭のチケット取る必要はない。 でもその皺寄せなのか11/1公開の新作が多すぎてやってらんない。この週末なんて5本見ても追いつかなかった。
ヴェネツィアでプレミアされて金獅子を獲ったPedro Almodóvarの新作 - これが彼にとって初めての英語劇なのだそう。原作はアメリカのSigrid Nunezによる小説 - “What Are You Going Through” (2020) 。
冒頭、NYのRizzoli(本屋)でサイン会をしている作家のIngrid (Julianne Moore) が並んでいた友人からしばらく会っていない友人のMartha (Tilda Swinton)が末期癌の治療をしていて状態がそんなによくないらしい、と聞いて病院 - あの橋、Queensboro Bridgeのようだがあんな角度のとこに病院あった? - に駆けつける。
ふたりは80年代、Paper Magazine - 当時の先端タウン誌 - の仕事で出会って、MarthaはNY Timesの戦場カメラマンだった。ふたりの会話とIngridのMarthaへの寄り添いぶりから彼女たちの絆の深さが見えてくるのだが、最後の望みをかけていた最新の治療法が失敗したことを知ると、Marthaはずっと考えてきたらしい自分の最期までをどう過ごすか、の計画を実行に移すべくIngridについてきてほしい - つまり自分の死を看取ってほしい、と。
考えや思いを共有してきたふたりなので、戦場で死と隣り合わせだったMarthaが考えたこと - 彼女がその決意を変えるとは思えないし、自分が断っても彼女は実行するのだろうし、とIngridは同意してレンタルしたNYのアッパーステイト - ウッドストックの方にあるモダンな山荘 - の設定だけど家のなかのコンセントの形状が違うのであれアメリカじゃなくて、ヨーロッパだよね? - に車で向かう。
隣りのベッドで看護するのではなく、ふたりの部屋は別々にする、だいじょうぶな時は部屋のドアを開けておく、Marthaが自分でもうだめだ、となった時には薬を飲んでドアを閉めておくから、という合図を(Marthaが)決めて、何が起こるのか予測できない共同生活が始まって…
戦地のボスニアに溢れていた死やベトナム戦争でPTSDを患って自殺のように火に飛びこんで亡くなってしまった夫を見てきたMarthaにとって、死はドアの向こうにあるアクセス可能ななにか、でしかない、ということがふたりの部屋の上下斜めになったレイアウトとか、朗読されるJames Joyceの”The Dead”などから明らかになって、あとはそこにVirginia Woolfの”A Room of One's Own”とかIngridの語るDora CarringtonとLytton Stracheyのこととか繋がってくるいろんな予兆など。
いつものPedro Almodóvar映画にある、見えないなにか(よくなかったり汚れていたり)を表に暴きだす際の亀裂とか断層のような要素や展開はそんなになくて、死という未知の領域に向きあうふたりの女性をまっすぐに描いているので、え?これだけ? にはなるかも。でもその分、ふたりを囲む文化周りの記号、その配置がいろいろで、冒頭のRizzoliも、ふたりが会話をするAlice Tully Hallのロビーも、壁に掛けられたPaper Magazineの表紙も、レンタルした家にあったEdward Hopperの”People in the Sun”も、あのレンタルした家の本棚の本も、ぜんぶ気になりすぎてあまり集中できなかったかも。 インテリアも、NYのMarthaのアパートからの眺めとか、作りものってわかっているのに見入ってしまう。
最後におまけのように足されてくるMarthaの娘の件も、これはこれで相当深く掘れたのかも知れないが、そちらは”The Souvenir” (2019)でやってしまったから?とか。
あと、Julianne MooreとTilda Swintonがドラマをするとしたらこの設定しかないのではないか、というくらいにこのふたりのありようって、最初から見えていて、そこから掘っていった、と言われても信じてしまうかも。それくらいー。ただ、もう少しぐさぐさやり合う修羅場のようになるのかも、とか思ったけど、静かだった。
ちょうど、古書でNoel Carrington(Doraの弟)による”Carrington” (1978)を見つけてめくり始めたところだったので少し驚いたり。
11.04.2024
[film] The Room Next Door (2024)
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