11.22.2024

[art] Paris -

11月7日の木曜日、会社を休んでパリ日帰りでいろいろ見てきました。出張もありそうだし、年末に向かっていろいろありそう、というかあるし、ここらでさらっておかないとかも、と。日帰りでパリ(マドリードも)って、みんなふつうにやっているのかしら? 時間との戦いで、戻りの電車はぐったり死んでしまうので、数日間泊まれればそれに越したことはないのだけどー。いつか時間を掛けて街を歩きたいなー、ってずっと思っているのだが、永遠に無理かも。

今回は(前回も、か)主要美術館など、いくつかを走り抜け。


Figures du Fou - From the Middle Ages to the Romantics

Musée du Louvreでの「愚者の形象」展。中世の写本から始まって、愚者や道化や狂気はどんなふうに表象されてきたのか、彫刻から絵画からいろんなシンボルまでExpo的に並べてある。日本のお化けや妖怪に近い - 日常の言葉やコードが通用しないなにか、非日常への畏れと誘い、と落としていくと民俗学的な展示になりがちなところをうまく絵を繋いで見せていったような。

映画”Joker: Folie à Deux” (2024)とコラボしたと聞いて、えーあれとはぜんぜん違うんじゃねえの? とか。

ボッシュがあって、ブリューゲル(父子)はもちろん、ロマン派~ゴヤまで。彼らが描いていた当時、こんなふうなバカ博覧会でネタ化されて並べられるなんて思いもしなかっただろうなー。そして出口のところにぽつりとあったクールベのなんとも言えない不気味な孤独さ - この辺が転換点だったのか。


Revoir Watteau - An actor with no lines Pierrot, know as Gilles

同じくルーブルで、↑のと関連しているのかもだが、ヴァトーの『ピエロ (ジル)』(1718-1719) がその修復を完了して、その記念で古今のピエロや道化を描いた作品を特集展示している。ピカソとかフラゴナールのピエロとか、写真だとピエロに扮したガルボやサラ・ベルナールの肖像なども。

それにしてもヴァトーのピエロ、見れば見るほど不思議で哀しそうで引き込まれる。 あのロバさんとか。
これだけじゃなくてピエロのイメージって、↑の愚者のとは別に、エモに訴えてくる不思議なところがあるよね。


Apichatpong Weerasethakul - Particules de nuit

Centre Pompidouに移動してこれ。Apichatpongのインスタレーションは恵比寿や清澄白河で他の作家の作品と混ざった状態で見たことはあったのだが彼の作品のみ、しかも隔離された別館で開催されていて、ほぼお化け屋敷状態ではないか、と。

小部屋が7〜8つくらい? 座って見れるのも歩いて変化を見るのも、こちらが見る・見ていくというより向こう側がこちらを捕捉してくるような妖怪の不穏な動きでやってくるイメージとか光の粒たち。そこに人が写っていたとしてもそれはもう人ではない何かになっている。それがTilda Swintonさんであっても。

光が消滅していく夕暮れや消滅した状態の夜にカメラを持ち込んで、そこに写りこんでくるものを定置網みたいに好きに放っておくとあんなふうになる、の? そこから光とか闇とか陰って、一体なんなのか、何でできているのか、と。


Surrealism

Centre Pompidouでのでっかい展示。本拠地はここパリだから忘れんな、というめちゃくちゃ気合いの入った展示だった(えらく混んでいたが)。

シュールレアリズムというと、小学生の時に坂崎乙郎の新書の説明を - 教科書の他に家にあったのはあれくらいだったの - 何度も読んだものだったが、あれに掲載されていた作品の殆どが並んでいたのではないか、というくらいのてんこ盛り。Leonor Fini、Remedios Varo、Leonora Carringtonなど、女性作家も沢山。物量で歪んで圧倒されていく現実など。

カタログ、これは買ってよいかもと思って手にとったのだがガラス棚にあった重いやつの方を欲しくなり、そっちにしたらその後も重すぎてしんだ。


Chantal Akerman: Travelling


今回はJeu de Paumeでのこれを見に来たの。セクションごとに代表的な作品とその関連資料を並べてあるのだが、昨年のシネマテークでのアニエスの展示と比べるとそんなでもない気がしてしまったのは、Chantalは作品にぜんぶ出てて、出してあって、それで最初に街をぶっ飛ばしてしまっているので補足の説明とか経緯とかそんなにいらないのかも。他方で、アニエスは猫なので、猫の足跡はぜんぶ追いたくなる、というか。

カタログもJoanna HoggらによるRetrospective Handbookも既にロンドンで買ってあったので、ポストカードとトートを買った。


Harriet Backer (1845-1932) The music of colors

オルセー、カイユボット展は予約いっぱいで入れずー でもこれがよさそうだったので入る。

ノルウェーを代表する女性画家で、ピアニストだった妹がいたりピアノを弾いていたりする室内の情景を多く描いていて、それは同じく部屋にいる女性を描いたデンマークのVilhelm Hammershøi (1864-1916)ともフィンランドのHelene Schjerfbeck (1862−1946)とも微妙にあたりまえに違っていて、展示スペースにピアノ曲が流れていたように、音楽が聞こえてきて部屋の空気がうっすらと膨らんでいるように見えなくもない。

あと、最後に本がいっぱいになった本棚の絵があって、それだけですばらしいではないか(積んであったらもっとよいな)、とか。


Céline Laguarde (1873-1961) Photographer

20世紀初フランスの女性写真家の特集展示 - ”Étude”とだけ題された女性の肖像写真たちがただただ美しく、ピクトリアリズムとはこういうものかー、と。


Paris Photo

Grand Palaisでの展覧会 - ではなく、写真に関する見本市の初日。これまでLondon Photoには行ったことあったが、パリのは初めて。こんなにでっかい規模のものだとは思わなかった。みんな豪勢に商談などをしている異世界で、せいぜい上のフロアで出版社や書店の展示を見ていく程度。Spector BooksのブースでJonas MekasのNew York Diariesなどを買った(← 写真とあんま関係ない)。 あとTwin Palms Publishersで、”Fifty Books: 1981–2024”ていう記念冊子をただでもらった(彼らのサイトで$45で売ってる..)。

ここまでで十分よれよれになり、それでもLa Grande Épicerie de Parisで食材などを見たり買ったりしないと気が済まないので、カートを押してヨーグルトとかバゲットサンドとかハムとかを買いこんで、地下鉄で北駅に向かって、22時過ぎにおうちに戻ったの。


というわけで日本にきて、ようやく週末なのだがあれこれ苦手すぎてぜんぶしんどい。

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