4月15日、月曜日の晩、Gielgud Theatreで見ました。
原作はJohn Cassavetesの同名映画(1977)、演出はIvo van Hove、ミュージカルの楽曲はRufus Wainwright、と自分の好きなのが三つ揃いだったのでこれは行かねば、と楽しみにしていたら予定より早く打ち切りの話が出てきたので、やや慌ててチケット取った。
映画の”Opening Night”は大好きで(でも”Love Streams”(1984)のがもっと好き)、昨年7月のイメージ・フォーラムの特集でも見ているのだが、結論からいうと、映画とは別ものとして見た方がよいのかも、とふつうに思った。映画版のどっちに転ぶのか、何がどこでどう破綻してしまうのかの緊張感、そのこんがらがった組まれよう– Opening Nightに向かって冷たく固化していくかのようなそれが、映画と舞台とでは、さらに舞台劇でもミュージカルとなると、薄まるとこ濃くみえるとこ、違ってくるのは当然だと思うし。
映画版でGena Rowlandsの演じた、疲れていろんな妄想や過去のあれこれに怯えて頑迷に閉じこもりシャッターを下ろそうとする、自分の役柄にどうしてもコネクトできない主演女優Myrtleの存在感、その輪郭の強さは圧倒的で、彼女は演技だろうがなんだろうが… って居直るかのようにくっきりとそこにいたのだが、そういう状態にある人がミュージカルで歌って - ミュージカル的な輪を作ってそこに入ろう、入ってもらおうと思うだろうか? (”A Woman Under the Influence” (1974) -『こわれゆく女』で彼女が歌うシーンはあったけど、あんなふうに凍りつくかんじになっちゃうのではないか)
舞台は左手にフルバンド(9人くらい?)がいて、真ん中にあるのは枠の外れたリハーサルルームで、カメラを抱えた撮影クルーが俳優たちの動きを追って、その様子がリアルタイムで正面のプロジェクターに映しだされる(劇場の外に出たり、頭上からのアングルのもたまに入ってきて、これらは録画かも)、といういつものIvo van Hove仕様 – すべては地続きで逃げ場なんてどこにもないのだ、という。
舞台版のMyrtle (Sheridan Smith)は、外見は – その笑顔も含めてなんかかわいらしいかんじで、Gena Rowlandsの超然とした大女優のオーラと磁場はなく、どちらかというといろいろ気をまわし過ぎて疲れて壊れちゃったのかな、という程度で、彼女に憑りつく亡霊のNancy (Shira Haas)も演出家のManny (Hadley Fraser)もプロデューサーのDavid (John Marquez)もMyrtleの元カレで共演男優Maurice (Benjamin Walker)も、全員が爬虫類か化石のように冷たく頑固でとんちきだった映画版に比べるとまだリテラシーがあるというか、彼女なら立ち直ってくれるのでは、というやや暖かめでポジティブな空気のなかにいる。
公演初日に向けたリハーサルとその苦難の旅を秒読みで追っていく舞台、というとこないだ見た舞台 - ”The Motive and The Cue”が思い浮かんで、これは演出家と主演男優のふたりが演劇とは?演技とは?という根源的な問いのまわりをぐるぐる掘っていこうとするものだったが、こっちにはそういうのがなく、鍵となるMyrtleの苦悩や挙動についても、そもそもなんで? が十分に描かれていないので、あーやっちゃったよ… と だいじょうぶ、やれるはず! の間のどたばたとその繰り返しで終わってしまう。それはそれでスリリングだからよい、という見方もあるのだろうが。
で、でも、それを救うというか補うのがRufusの音楽で、バンドサウンドだからか、”Want One” (2003)~ ”Want Two”(2004)の頃のファットで暖かめの音と歌 – これの次の“Release the Stars” (2007)ほどぎらぎらしない - が見事に鳴る。基本のストーリーラインはどん底からの復活、だと思うのだがそこに感動的にはまってしまうよい曲ばかりで – “Opening Night”ってそういうドラマだったっけ? はあるとしても。
帰り、劇場の通路から出口に向かうところにRufusがいたの。最初は人違いじゃないかと思ったけど、何度も彼のライブは見ているし、他の人もあっ、て言ったりしていたので彼だと思う。とっととそのうさんくさい髭を剃って、今回の曲も含めたバンドでのライブをやってほしい。
そういえばRufusがカバーした”Perfect Days”、すごくよかったよねー。
4.24.2024
[theatre] Opening Night
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