4.01.2024

[theatre] The Motive and The Cue

3月21日、木曜日の晩、Noël Coward Theatreで見ました。24日で終わり、と聞いて駆け込みでチケット取った。

原作はJack Thorne、演出はSam Mendes。元は2023年の4月にNational Theatreで上演されて好評だった作品がWest Endにきたもの。

1964年、John GielgudがブロードウェイでRichard Burtonを主演にシェイクスピアの”Hamlet”のモダン版を演出しようとした際のリハーサル現場のごたごたはらはらの緊張にまみれたありさまをRichard L. Sterne(当時それを横で見ていた俳優)の手記 - “John Gielgud Directs Richard Burton”などを参考にして書かれたドラマ。

1964年、名声は十分だが俳優としてのピークを過ぎた - ので演出家の方に向かおうとしているJohn Gielgud (Mark Gatiss)が俳優としてのりのりでElizabeth Taylor (Tuppence Middleton)と結婚したばかり、いろいろ脂ぎって燃えたぎるRichard Burton (Johnny Flynn)主演の”Hamlet”を演出する。

俳優としてシェイクスピア劇もHamletも散々演じてきて、世界の誰より隅々まで「向こう側」を知り尽くしているであろうGielgudは、当然のように「普通」の演出なんかしたくないし世の期待もそっちだと思っているし、Burtonの方は、このライブの舞台こそ俳優としての自分の真価を世に知らしめる格好の機会なので、このHamletを変に凝ったり捻ったりした珍妙な作劇のなかで見せたくない、と思っている。でも俳優として先達であるGielgudには敬意を払うべきだろうし、かといってウェールズの田舎者が調子に乗るんじゃねーぞ、みたいに舐められたくもないし.. など、真ん中にいる2人の意地とプライドをかけた第三者からすれば滑稽な闘鶏みたいな張り合いがある。

全員が集まる顔合わせの初日から、日を追ってリハーサルや中心のふたりのご機嫌、キャスト・スタッフ全員の雰囲気まで、時にElizabeth TaylorのいるBurton邸でのやりとり - どちらも正気の状態はあまりなく、Burtonはほぼずっとべろべろに酔っ払っている - も挟んで追っていくのだが、人間関係はぐじゃぐじゃの雪だるま式に酷くなっていって、見ている分にはおもしろいのだがどう収束するのだろう? と思っているとー。

ここでのElizabeth Taylorの絡み方がどうにも微妙で、この暫く後に出るBurtonとTaylorの映画 - ”Who's Afraid of Virginia Woolf?” (1966)を意識しているのか、ってどこかにあったけど、そうかもしれない。彼女を背後に隠して、えんえん主演のふたりに喧嘩させていた方が、おもしろくなったのでは。

そして最後の方では、芝居の演出とは、舞台における演出家とは? 演技とは? のようなところまで行って - タイトルはここに絡まる - だから演劇はすばらしいのだ! 演劇ばんざい! みたいなところにまで到達してしまうの。あれだけ罵り合ったり引っ叩いたりやり合って嫌いあっていたのに。まるでハラスメントまみれで問題だらけのプロジェクトが本番開始日になったら何事もなかったかのように互いを称えあったり涙したり、あれってなんだったの? … しらーってなるあのかんじというか。(そういう世界があることはあるので、別にいいけど)

史実として本公演は無事に行われて当時のブロードウェイの興行記録もつくって、双方のキャリアに見事な足跡を遺しているようなので間違いなくめでたしめでたしなんだろうけど、なんかなー そういうもんなのかなー。 あと、あのラストの場面は余計だと思った。

真ん中のふたり - Johnny FlynnとMark Gatissの互いに一歩も譲らない押したり引いたりのやり合いがすばらしいことは確かで、それだけでも見る価値はあると思うのだが、少しだけー。

National Theatre Liveでもやると思うのでぜひ。

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