4月5日の金曜日と6日の土曜日の二日間の晩、Town Hallで見ました。これのために大西洋を渡った。
BAMと同様、Town Hallも懐かしい場所。最後にここに来たのは2013年のLiza MinneliとAlan Cummingのショーだったかも。
前世紀末のマスターピース(感はゼロだけど)“69 Love Songs” (1999)の全曲披露公演、Day1で35曲めまでを、Day2で残りの34曲を順番通りに演奏していく(だけ)。前座はなし、途中20分の休憩が入り、アンコールもなし、だいたい22:30少し前に終わる。
このサイトにきて日本語でこういうのを読むひとのなかに”69 Love Songs”が熱狂的に好きでそのために飛行機に乗るようなばかはそんなにいないと思うので、少しだけいうと、ここには幸せに浸れるような愛とか希望の歌は殆どなくて、だいたいがバーで酔っぱらった負け男がひとりぶつぶつぐちぐち吐き続ける失望とか呪いとか恨みとか卑下とかそんなのをCharles IvesとかStephen Sondheimとかが書いてきたようなアメリカのしなびたメロディー艶歌・哀歌に乗っけておもしろおかしく歌うだけ、ほんとにただそれだけなので今の若者がこれらを聞いても「きもい」で終わりだと思うのだが、こっちはこっちで、ほっとけ、って飛行機にのる - 例えばこんなすれ違いにもならないようなしみったれた境遇についての歌とか、とにかく健康的でなく生産的でもないやつはぜーんぶここの虫かご(or 箱)に入っている、はず。
そしてこんな曲たちにとって、25年とは一体どんな時間であり歳月でありえたのか? - 若返るわけがないので全員が等しく老いてボケて、もちろん、バカは死ななきゃ でも 死んでも でも、どっちにしても客たちにしてみればこの場所にたどり着ける程度には生き延びることができてよかったね、くらいしか出てこないし言ってくれないし。 ところでリリース時に生まれていなかったやつは?(ってClaudiaが客席に聞いてた)
わたしが最初に彼らのライブを見たのは”i” (2004)のとき、カーネギーホール内の小さいとこで、その時はClaudia GonsonとStephin Merrittの掛け合いが最高におもしろくて、その後の彼らのライブにClaudiaは出てこなくなったので、今回の再登場はとてもうれしい。漫談コーナーはあまりなかったけど。
ステージ上にいるのは7名 - レコーディングに参加したSam DavolもJohn WooもShirley Simmsもいて、袖にはDudley Kludtがいて、曲によって歩いてきてマイクを握る。
Stephin Merrittはステージの右端で、高い椅子に座って楽器も持たずにお腹を突きだして朗々と吠えるように歌うだけ - 二日目、一瞬だけハシゴに登ってClaudiaと掛け合いで歌ったり。
多くのひとがそうであるよね? と思うのだが3枚通してずっと聴く、というよりどちらかというと最初の方を聴きこんでばかり、そのうち別の用事が入ったりで時間がなくなって最後までたどり着けない、というのが多い気がして、だから客席のノリとしては初日の方が圧倒的によかったような。個人的にも最初のほうの”I Don't Want to Get Over You”から”The Book of Love”あたりまでの流れは本当に至福で、このパートだけでも十分に名盤入りだと思った。「レコードに入っている以上、やらないわけにはいかないのだ」と暗く不吉な表情でStephinが言った”Punk Love”もなんとかやっつけていた。
全体として25周年の祝祭感は微塵もなく、どちらかというと25年も経ってしまってどうするんだよ? ねえ? の徒労感や後悔や自嘲に溢れていて、これだよなー、しかない。他方でドラムマシーンやエレクトロを少しだけ、でも効果的に盛りこんだアンサンブルの繊細さ緻密さは揺るがず、ダメな人たち(曲の世界で、だよ)のシュールなミュージカル・レヴューとしてはすばらしい出来だったのではないか。何度もよく見る夢のなかをだらだら彷徨って抜けられなくなっていく感覚、というか。このままずるずる40年でも50年でもいったれ。
物販は入ったとき(開始30分前)にすさまじい行列ができててこりゃだめかー、と諦めたのだが、休憩時間にダメもとでいいや、って並んだらサイン入りのポスター2枚(Day1とDay2で別)をどうにか買うことができて、丸めたのを無傷で英国に持ちこむことに成功した。問題はこの丸まったのを額装できるかどうか、だな -(日本にはまだ丸まったままのいろんなのが20-30枚くらいある)。
4月9日(今日、今晩)、NYのFilm Forumではこの25周年を記念して彼らのドキュメンタリーフィルム” Strange Powers: Stephin Merritt and The Magnetic Fields” (2010)が上映されて、StephinとClaudiaがトークのゲストとして登場する。一回だけ。見にいける人いいなー。
次はロンドンだ。それまで生きていられますようにー。
4.09.2024
[music] The Magnetic Fields
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。