3月23日、土曜日の夕方、Curzon BloomsburyのDocHouseで見ました。
ニュー・ジャーナリズムの旗手として知られるTom Wolfe (1930-2018)の評伝ドキュメンタリー。
映画化された“Moneyball” (2003)や”The Big Short” (2010)の作者としても知られるMichael Lewisが2015年にVanity Fair誌に発表した記事”How Tom Wolfe Became … Tom Wolfe”(Webで読める)をベースにMichael Lewis本人やTom Wolfeの家族(娘さん)も登場して、WolfeがどうやってWolfeになっていったのか、どんな人だったのか、等について主要著作 – 主に初期のドキュメンタリータッチのもの、後期の小説は軽めに – を紹介しつつ追っていく。Tom Wolfe自身の声はJon Hammがあてている(すごく巧い)。
全体としておしゃれでかっこいい(かっこよかった、誰もがかっこいいと言う)Tom Wolfe – Michael Lewisももろにそういうかんじだし - を肯定的に捉えて、彼のファッションも含めたああいう語り口が当時の言論やジャーナリズムにどんな影響を与えて、それはいまのとどんな形で遺ったりしているのか、というところまで行けばよかったのだが、そこまでは広がらず、あくまでTom Wolfeの主要著作の紹介(とその同時代への影響を少し)に留まってしまったのは少し残念だったかも。彼のなにがどうして”Radical”だったのか、最後まであんまわからなかったような。
大学に通いながらマサチューセッツの新聞社に勤めて、その後Washington Post等にも記事を書いたりしながら、新聞社がストをやっていた時に取材した西海岸のホットロッド、カスタムカーの人と文化についての記事 - "There Goes (Varoom! Varoom!) That Kandy-KoloredTangerine-Flake Streamline Baby" (1963)をEsquire誌に発表して、これが当たって評判になって、ライターとしていろいろ書いていくことになる。
ニュー・ジャーナリズムという切り口だとTom Wolfeといろいろ対照的なHunter S. Thompsonとの違いについてはあれこれ言及されたり、Gay Taleseがコメントしたりする程度、Joan Didionも申し訳程度しか出てこないのはなんかー。
誰もが知っている気がする題材を取りあげて、掘りさげる角度や深度が新しげなので読み物としてまずおもしろくてへーってなり、ちょっとだけセンセーショナルなネタもあって、読後はなんだかためになって自分が賢くなった気がする、というのが自分にとってのニュー・ジャーナリズム(読み物)で、それならその分野の研究書とか難しめの小説とか読んだ方が、だった。いやいやそうじゃない、ここのところが当時としては画期的だったのだ – なぜかというとー、というのがあったら学びたかったのだけどー。
いまはそこ(方法論的な正しさ)に行く手前で、逆張りだの揚げ足取りだのいちゃもんがいくらでもあって触るとノイズにまみれてしまうし、ジャーナリズム自体がろくでもないとこに堕ちてしまっているので、そうじゃないやつ、となった時にあの時代のこれらはかえってストレートで新鮮でおもしろく読めるのかも、というのは少しだけ。読まないよりは読んだほうがいいのは言うまでもなくー。
あと、彼のファッション的なところも含めたテキストのありようって、はっきりと彼を推してくれる白人の共和党支持層のウケを狙ったもので、そういうのをやってそれなりに成功したケースとして珍重された、というのはあるんだろうなー。この辺を暴露、じゃなくて事実を並べて淡々と描いてくれてもおもしろくなっただろうにー。
あとね、監督もMichael Lewisも、Wolfeを今でいうインフルエンサーのようにしか見ていないところがある気がして、もっとWolfeの語り口とか展開のおもしろさそのものに着目して、だからこんなにもWolfeは! みんなWolfeを読もう! っいう方に向かわせてもよかったのでは、とか。 見たあとで特に読みたい! ってならなかったのはどうなのかー。
4.02.2024
[film] Radical Wolfe (2023)
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