4.12.2024

[film] Kim’s Video (2023)

4月7日、日曜日の昼、夕方のロンドンに戻る便に乗る前に、Quad Cinemaで見ました。

監督はDavid RedmonとAshley Sabinのふたりで、David Redmonがカメラを抱えてナレーションもしていくドキュメンタリー。

90年代にNYのイーストヴィレッジにできて、ビデオのレンタルと小売り、あとレコードやCDも売っていて、2014年に閉店したカルト/マニア向けのお店で、St Marks pl.の本店の他にBleecker stにも”Kim's Underground”ていうのがあって、”Underground”の方はレコード等を買いによく通った。底なしの穴倉のように暗くてごちゃごちゃ怪しく、なにもかも見つけにくいのだが、実験音楽やプログレも含めて英国盤や欧州盤を入手できるレコ屋は珍しくて - 価格は決して安くない - で、The Magnetic Fieldsなんかも確かここで出会ったのではなかったか。映画のVHSなどは、90年代はそんなに映画を追っていたわけではなかったし、レンタルしたのって返しにいくのが面倒だし、『神の道化師、フランチェスコ』のブートレッグみたいなVHSを買ったくらい(まだ自宅にあるはず)。

で、ドキュメンタリー映画になった”Other Music” (2019)のあのお店もKim’sにいた店員らが立ちあげた、と聞いたので、Kim’sはその親玉みたいなもの – だからそのドキュメンタリーはあのお店がどんなふうにできあがって、あのコレクションとか品揃えは誰がどこからどう持ってきたのかとか、或いは”Other Music”のようにあの場所に入り浸っていた人たちにとって、どんな意味のあるお店だったのかを聞いたり語ったりしていくようなやつだと思っていた。 ら、ぜーんぜん、ものすごくちがった。階段を6段くらい踏み外したかんじ。

まずは街角のひとにKim’s Videoを知っているか? って認知度を聞いたりしてどんなお店だったのか、の簡単な概要を説明してから、閉店した後に店にあったビデオたちがどうなったのか? を追って話は突然イタリアのSalemiに飛ぶ。現地を襲った震災からの復興を目的とした観光資源のひとつとすべくお店のコレクションを町に寄贈したのだ、って。

で、カメラを抱えて現地に飛んでみると、ビデオたちは段ボールに入れられ積まれたまま倉庫で雨ざらしのひどい状態になっていて、その場の誰に聞いても責任者がわからないので、警察とか市長にまで話がとんで、追求があまりにしつこいのでやばい人たちも出てきそうになって、最終的にはビデオたちを救え! って深夜の強盗に近いようなところまで転がっていく。監督本人が楽しそうにナレーションしているので、どこまで本当なのか、仕込みじゃないのか、みたいな気がしてくる。

Kim’sが特徴的にコレクションしていたカルトで変てこな犯罪映画みたいなノリの話が寂れた裏町で – というより陽が降り注ぐ言葉も通じないイタリアの田舎町で起こる - 店の名前は”Kim’s Upland”だし。本当のところは… なんて大多数の人にはどうでもよい話なので、まあどうでもいいか、になっちゃうところも含めてー。

途中で今は普通のビジネスマンになっている(たぶん)Kim氏本人も登場するのだが、これだってひょっとしたら… かも知れず、他方でKim’s Videoは通い詰める、というほどではなかったにせよ、間違いなく存在したので、そういう謎と真実の間のどこかに大量のVHS – 必要としている人はそんなにはいない - が積まれていて、発見されるのを待っている、のだろうか…? 相当いろんなものが「プラットフォーム」上にあると思われる今、VHSでしか見れない(ので救われなければならぬ)ものって、どれくらいあるのだろう? フィルムを残そう! はなんとなくわかるのだけど。

最後、米国に戻ってきたコレクションはAlamo Drafthouseにまるごと買い取られた、と。この映画のDistributorがDrafthouseなので更に怪しいかんじがめらめら湧きあがってくるのだが、こういうのは破棄されるよりは残された方がよいに決まっている派、なのでとりあえずはよかった、にしておく。ぜんぶ冗談でしたー、でも怒らない。


映画の後はUnion Squareの辺りを少し歩いた。みんなどこかで配られたチューリップを抱えていて羨ましかった。

NYでの残りのは、このあとだらだら書いていきます。

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