4.01.2024

[film] Love Lies Bleeding (2024)

3月24日、日曜日の昼にBFI Southbankで見ました。この前日にクロージングのあったBFI Flareで見た最後の1本。この作品、Flareで3回上映があったのだがどの回もぱんぱんにSold Outしていて、普通だとSold Outした回でも当日の昼くらいに何枚かリリースされたりするのだが、この作品だけはまったくそれがなくて、しょうがないので当日に窓口のキャンセル待ちに並んだ。それくらいの人気だったと。

監督Rose Glassの長編2作目。デビュー作の“Saint Maud” (2019) - 日本では配信のみみたい-はすばらしく極上のホラーで、この監督すごい! と思っていたら2作目は(やっぱり)A24だよ。これがまた、すばらしくよかったの。ホラーというより、ロマンティック・アクション・クライム・スリラー、みたいな。音楽はClint Mansell。

1989年、ニューメキシコで場末のジムのマネージャーをしているLou (Kristen Stewart)がいて、ひとりでやりくり - 便器に手をつっこむトイレ掃除までしていて大変そうなのだが、そこにボディビルをやっていてもうじきベガスの大会に出るというJackie(Katy O'Brian)が流れてくる。Jackieの笑顔とぴきぴきの筋肉にやられてしまったLouはうちに泊まっていいからここにいて、って闇で流れてくる筋肉増強剤とかをあげたりしてふたりは親密になっていく。ずっとLouの世話になるのも悪いから、とJackieが近所の射撃場にバイトの口を探しに行くと、そのオーナーLou Sr. (Ed Harris)はLouの父で、Louは彼を毛嫌いしているのであいつのところには近寄るな、と強く言ったりする。

ここでのEd Harrisの極悪っぽいメイクと喋り方がすごくて、ハゲ頭の脇後ろだけ長髪のしわしわで、どういうかんじかというとJohn Carpenterの“Big Trouble in Little China”(1980)に出てくる妖怪Lo Pan(の変身前)だ、ってようやく思いだした。

Louの姉のBeth (Jena Malone)の夫のJJ (Dave Franco)が酷い恒常的DV野郎で、ある晩にBethが病院送りになるくらいひどい怪我をして、いい加減にしろよあのくそったれ、ってLouが怒り悲しんでいるのを見たJackieは、ひとりでJJのとこに向かって素手で簡単に殴り殺してしまう。まさかJackieがそこまでやるとは思わなかったLouは、JJの死体をカーペットに丸めて車に入れて町はずれの崖の上まで運んで火をつけて落っことす。ここの崖の下にはLou Sr.にとって都合の悪いいろんなのが…

そのうち警察の手は近くに迫ってきて、通常であれば軽く警察に手を回せるLou Sr.がなんとかするから取引しよう、とか、他方でLouに憧れる町娘があたしなんか見ちゃった… って寄ってきたりとか、そういのをめぐってLouとJackieの間に亀裂も走って、Jackieのボディビル大会の本番もうまくいかなくて追いこまれていって、どうなる…? って最後まで目が離せない。

監督の前作 - “Saint Maud”でも宗教・信仰を起源とする肉体の変容表現がおもしろかったが、ここでは愛や怒りが絶頂に達するのにあわせて筋肉を膨張・爆発させるさまがとても巧みかつ自然に描かれていて、それがスーパーヒーローものでもなんでもない文脈で唐突にまき起こるのになんの違和感も感じさせないのがすごい。

これ、男女間のノワールのような形式であればいくらでも転がっていそうなネタだが、女性同士 – しかも周囲にいるのがジャンクとしか言いようのないクズ男ばかり、という設定にしているところがよいのかも。その状態でどん底に置かれた彼女たちが立ちあがる、というよりも火をつけて焼き払って知るか、という。最後のところは評価が分かれるかも知れないが、荒唐無稽のなんだこれ?になるぎりぎり手前でふたりの愛の物語 - “Love Lies Bleeding” - 血のようにほとばしる愛 - になっていると思った。

場内はずっと拍手と爆笑の嵐で、やはりKristen Stewartの超絶としか言いようのないクールネスとかっこよさ、があるから、としか言いようがない。最初から最後まであんなに汚物とゲロと血と煙まみれなのになんであんなふうな笑みを浮かべて爽やかに立っていられるのだろう? って。

とにかく、そんな彼女たちがEd HarrisとかDave Francoとか、いかにもな「男」たちをぼこぼこにするのがたまんないの。

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