18日の晩、『カビリアの夜』に続けてFellini特集で見ました。彼が単独で監督をした最初の作品。
英語題は”The White Sheik”。邦題は『白い酋長』 - これ、日本ではビデオ公開のみなの?
ついこないだ、NYのFilm Forumでも公開されて話題になっていた。とにかくすばらしくおもしろいやつなの。
新婚のカップル - 夫のIvan (Leopoldo Trieste)と妻のWanda (Brunella Bovo) がハネムーンで列車に乗ってローマにやってくる。ホテルに着くまでにIvanはWandaに旅行中のスケジュールについてこまこま指示をする。ヴァチカンに務める堅物のおじと会って、観劇して、食事はどこそこで、夜にはもちろんホテルに戻ってきて … めちゃくちゃ張りきっているのだがWandaは聞いていてもどこかそわそわ上の空で、ホテルで着替えて、紙の束を抱えて、ある住所を聞くとそこに出かけていってしまう。
彼女は当時イタリアで女子みんなを虜にしていたphoto comic - “fumetti”と呼ばれていた - のシリーズ活劇 - “The White Sheik”に夢中で、その主演男優Rivoli (Alberto Sordi)の大ファンで、ファンレターの返事を大切に持ってて、彼の似顔絵を抱え、せっかくローマに来たんだからひと目会えれば、って制作会社までやってきたの。(旅先でつい脇にそれて別行動してしまうかんじはようくわかるよ)
fumettiについては、ちょうど一年前、ここでやっていたMichelangelo Antonioniの短編ドキュメンタリー - “Lies of Love” (1949)でその制作現場が描かれていたのでよくわかる。毎週発売されるたびに女子を中心にものすごい人気を呼んでいて、その制作は映画を撮るみたいな大所帯で、でも俳優とかはそこらの工場にいる兄ちゃんだったり。
とにかく彼女はRivoliに会おうとするのだが、彼は週末にならないとここには来ないとか、それがやがてすぐそこに来ているけど会う?に変わり、会いに行こうよ、ってつい車に乗せられたらどんどんローマから離れてしまい.. かわいそうなのは夫のIvanで、彼女に会わせろって親戚はうるさいし、でも彼女はどこに消えたのか見当もつかない、ひょっとしたら嫌になって逃げてしまったのではないか、とか顔面蒼白で(かわいそうだけどめちゃくちゃおかしい)。
他方、Wandaはロケ先でついにRivoliと会うことができて、似顔絵を渡してお話して、comicに出演することまでできちゃって、すっかり新婚の夫のことなんか忘れてしまう(忘れちゃえ)のだが、我に返るとやばいやっぱし帰らないとかも、って。
だいたい昼間から次の日の昼間まで、24時間くらいのお話なのだが、夢のおとぎ話と現実のぐったり話が混濁して支離滅裂が螺旋になって加速していくさまはすでにFelliniかも。screwballのような取り違えのおもしろさとは別で、ここに出てくる連中はぜんぶ自分のことしか考えていないし自分の見たいものしか見ないので踏み外して脱線して大火事になる。『カビリアの夜』のCabiria (Giulietta Masina)も登場してIvanの方に絡むのだが、すぐ忘れて火吹き男に夢中になってしまうし。
コメディなので最後はめでたしめでたしなのだが、それにしてもおもしろすぎる。Felliniを見る最初の1本がこれだったら印象変わったかも。 実際変わった気がする。
1.22.2020
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