21日、火曜日の晩、CurzonのBloomsburyで見ました。 Soundtrack担当があの2人だったので見ようと思ったのだが、とんでもなくよかった。これもA24の。
フロリダの高校生、Tyler (Kelvin Harrison Jr.)は、部活のレスリングに打ち込んでいて、恋人のAlexis (Alexa Demie)とも仲良いし、父はスポーツのところは厳しい(腕相撲やってもまだTylerよかぜんぜん強い)けど家族みんな - 母は継母だけどとても家族想いで、あと妹のEmily (Taylor Russell)も - との仲も悪くない、ほんとそこらにいるふつうの高校生とその家庭で。
ある日、腕の調子がよくないのでTylerは医者に行ったら相当やばい状態なのでレスリングはすぐに止めて治療に専念するように言われるの。でもチームとか父親の期待もあるので今のトーナメントが終わってからにしたい、と断って痛み止めを飲みつつ無理していったら試合で動けなくなって、父親からはどうしたなにやってる? と怒られるし、そうするとすべてが悪い方に向かってAlexisとも喧嘩してIMをブロックされて逆上し、酒をあおって彼女のいるパーティ会場に向かい、言い争いの果てに手が出て殺してしまう - で、捕まって裁判の後に収監され、家族の前から消える。
あの晩、パーティ会場にいてTylerがAlexisを引っ張って奥にいくのを見ていたEmilyはあの時なんで自分が止められなかったのだろう、ってずっと苦しんでどんよりしていて、そんな時同じ高校のLuke (Lucas Hedges)がおどおど声をかけてきて、いろんなことを話しながらゆっくり仲良くなって、ふたりでマナティー見に行ったり(いいなー)、やがてLukeの疎遠になっていた父 - DV歴あり - が末期ガンでもう長くないことを知ると、Emilyは会いに行かなきゃだめだ、って強く言って、ふたりでミズーリまで行くことにするの。
前半のTylorのパートでは彼の腕の件をきっかけに家族が積みあげてきたものすべてが粉微塵にされてしまう過程が描かれ(画面の幅も縮んでいく)、後半のEmilyのパートでは、彼女自身も、父も母もぎこちなくゆっくりと会話ができる状態に - 前と同じに戻れないことはわかっているけど - 戻っていく(画面の幅もまた)。 寄せては返す波のように。
前半のぐるぐる回りながら転がり落ちていく勢いとそのテンション、後半のひとつひとつを確かめながら踏みだそうとする惑いと揺らぎ、どちらも怖いくらいに生々しくて誰もがその感覚を自分のどこか/いつかに起こって刻まれているなにかとして感じることができるのではないか。そういうのを通して家族とか恋人とかの不可思議な関係のありようについて考えてしまう - ていうのが自分にとってのよいホームドラマってもんなの。
そういうのよりもなによりも、EmilyとLukeのふたりの出会いから旅に踏みだすまでの時間の描き方が素敵ったらなくて、どちらも傷を負った状態でおそるおそる近寄っていって互いになんとかしようとがんばるとってもよい女の子と男の子の絵、ひさびさに見た気がした。ふたりの萎れたかんじがめちゃくちゃよいの。
すばらしい音楽映画でもあって(最初はミュージカルにしようとしていたって本当?)、
Dinah Washingtonの”What a Difference a Day Makes"みたいなクラシックが全体のドリーミィな背景を作りつつ、Frank OceanやAnimal Collectiveのモダンな音(知らないやつばかりだった)が若者の心象とリンクして上昇気流をつくり、その隙間をTrent Reznor & Atticus Rossのオリジナルが埋めて、驚くべきことにこれらがぜんぶひとつの音楽のように段差なく繋がってずっと輪になって踊っていく。ピアノを中心としたTrentのあのコード進行がここではやたら切なく響いて、劇中の音響処理(脳内でじんわり鳴っているようなところとか)も含めて、この辺は是非映画館で。
それにしても”The Farewell” (2019)といいこれといい、A24の家族映画はすばらしいねえ。”Midsommar” (2019)も広義の家族 .. ?
まあ、よい猫とマナティーが出てくるだけで、この映画はじゅうぶんさいこうなの。
日本でも公開されますように。変な邦題がつきませんように。
1.24.2020
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