1.06.2020

[log] Rome

クリスマス直前にパリから戻って、クリスマスの間だけロンドンにいて、26日の朝にロンドンを発ってローマに行って、29日の晩に戻ってきた。昨年はフィレンツェとミラノだったので、今年はその続きで、最初はローマとヴェネツィアの予定だったのだが、11月頃、ヴェネツィアは洪水で大変なことになっていたのでやめて、その替わりに日帰りツアーのポンペイとナポリを加えた。ローマって、みんなふつーに観光で行くし、なんか俗っぽいかんじだしどうかしら、だったのだがヴァチカンだけはなんとしても行かないといけない案件だったので、行った。結果、とってもおもしろかった。

メモを書くけど、いろいろ溜まっているのでぜんぶきちんと網羅するような書き方はやめる。

Colosseo,  Palatino,  Foro Romano
着いたその日の午後、ふつうの観光ツアーに入って見た。本当はコロッセオのunderground の方も行けるツアーにしたかったのだが、売り切れていた。コロッセオのなかに立って、見て、丘の上から遺跡全体を見渡してみる、と遺跡と街の切れ目がないような錯覚がやってきてあらすごいかっこいい、と。モダンななにかが入りこむ余地がないような爛れた光景で、そのおかげですべてを停滞させるか、なにかを諦めてどんちゃん騒ぎするしかなくて、古都というのはそういうもの、とか、そうやって何千年もやってきたのだからべつにいいじゃん、と言われて終わるだけのー。

Musei Capitolini
そこの横にあった世界最古と言われたりしている美術館に入って大量の彫刻とかいっぱい。建物が3つあって地下を抜けて上に戻ったら別の建物だったとか、いろいろありすぎる。この、館の細部も含めていろいろあって混みいりすぎててなにこれお手あげ、の感覚はローマの美術館巡りで最後までついてまわった。これ、時間の余裕がある時は笑っていられるけど時間がない観光客にはしんどいったら。

Vatican Museums
今回の旅の目的はなんといってもヴァチカンの中に行くこと - 昨年ウフィツィ行って、ミラノで最後の晩餐を見て、今年はエルミタージュまで行ったのでヴァチカンは最後のほんもんの..  だった気がする(まだいっぱいあるよ)。ので宿もヴァチカンの傍に取って、毎晩広場のツリーを見て拝んでいた(なにを?)。

一刻も早く見たかったので朝食付きとかいう7:15に入れるチケットを取って暗い中並んだ。朝ごはんは館内のカフェでどうでもいいアメリカンのビュッフェで、横にいたおばさんなんてご飯なんてどうでもいいから早く見せろって、8:00に開いたら奥にすっ飛んでいった(同感・同様)。 目指すのはもちろんシスティーナ礼拝堂なのだがそこに行くまでにラファエロのとか迷路のようにあれこれありすぎてぜんぜん奥に行けなくて悪夢の中を彷徨っているようだった。 モダンまで出てきてマティスとかモランディはわかるけど、なんでKirchnerとかOtto Dixあたりのがヴァチカンにあるの? とか。

礼拝堂は確かにすごかったのだが、あんなに上空にわらわらひしめいていたら騒々しくてお祈りどころじゃないよなお祭りだよな、っていうのと、その喧噪を貫いて神の声を聞くことができたものだけが.. とか、割とふつうの感想しか来ない。

Biblioteca Angelica
本当かどうかは知らぬが世界最古のPublic Libraryだという。自分は古い本に囲まれてその匂いを嗅いでいるだけで幸せになれるタイプなので、ここは行って浴びるしかない。すばらしい香りだった。奥で勉強している人たちもいたけど、あんな中で静かに勉強できるのか.. (広げて散らかす派)。隣のBasilica di Sant’Agostinoにはカラヴァッジョの”Madonna di Loreto”があった(たまたま入った、程度なのに)。行く先々のごくふつうの寺にカラヴァッジョとかラファエロとかが貼ってある、ってなんなのこの街は。

Museo di Roma
図書館のそばのナヴォーナ広場を抜けたところのローマ博物館で、Canova展をやっていたので見る。ここの建物もなんか変なつくりで展示物とか天井に気を取られているとここはどこ? になる。
Canovaの彫刻はどれも滑らかで(大理石なんだからあたりまえか)すごくよくて、主要作は台の上でゆっくり回転してくれるので表のつるつるも後ろのひだひだとか結びめもじっくり見ることができた。展示のタイトルであるEterna bellezza - Eternal beautyっていうのはこの両者の表裏とか隠す隠されるのバランスなんだろうねえ。

Museo e Galleria Borghese
ボルゲーゼ美術館も行くならなんとしても、のひとつだったわけだが、ここもまたすんごいお化け屋敷だった。昔、NYのFrick Collectionあたりで興奮していた自分がかわいく思えてしまう(いや、Frick Collectionもいいのよ)。ここのゴージャスな積みあげ散らし - 大きい広間と小さな部屋の使い分けは素敵すぎ。はじめはカラヴァッジョの果物籠とラファエロの一角獣が見れればじゅうぶん、だったのだが彫刻の大群と天井の突き抜けぐあいがすさまじいの。ここで暮らしたら神々と悪魔とか獣とかの果てしない戦いが毎晩みられるんだとおもう。(”Night Museum”なんてアメリカのmuseumだから成立したお話で、ここでやったら毎晩黙示録が勃発してとんでもない事態になる)

Pompeii
ポポロ広場を朝7:30に出てPompeiiの遺跡を見てナポリに寄って晩の19:30に戻ってくるバスのツアー。 廃墟を見るのは好きだけど遺跡は知識が乏しくて、でも火山噴火でたった数日間で栄えていた町全体が灰に埋まった、ってなんかすごいな、と思って。まだ発掘が続いているその場所に行ってみると思っていたよりも広くでっかく町としての機能は一通り揃っていて、パン屋の話とか赤線地帯の話には感動する。
これ、大昔の他人事ではなくて、311にしても今のオーストラリアの火事にしても、文化や文明の消滅って、起こるときはこんな簡単に起こるんだな、って。

帰りにナポリに寄って1時間くらい自由時間があったのだが1時間だと歩いているだけで終わってしまう。昔からいろんな人が書いているようにとっても雑でざわざわした街だったような。夏は楽しいのだろうけど、冬はクリスマス後の吹きだまったゴミがものすごくて、わー、だった。

Basilica di San Pietro
美術館群だけ行って本堂にお詣りしないのは失礼ではないか、と最終日の朝に並んで入った。ここが総本山かー、て上を見あげて盛りあがるばかり。皇居に行って身震いする人たちって(いるのか知らんが)こんなふうなのかしら?

Castel Sant'Angelo
総本山の近所の五角形のお城(?)。眺めがいいだけでなく、砲台とか武器とかがいっぱい、美術品も少しはあって、でも全体としては野暮ったい野武士のたまり場、男くさー、みたいな。

Palazzo Barberini
バルベリーニ宮 - 国立古典絵画館。ここはなんといってもラファエロの「フォルナリーナ」なのだが、カラヴァッジョの首斬りby ユーディトとか、グイド・レーニの「ベアトリーチェ」とか、よいのがうようよあって、もう少し時間があったらなあ、だった。

Villa Farnesina
帰国する日の午後、まだ30分くらい時間があったので最後に車で寄った。
ラファエロのでっかいフレスコ画 – 『ガラテイアの凱旋』と”Cupid and Psyche”(ラファエロはデザインのみ)があって、どちらも漫画みたいにドラマがあって楽しいの。

食べものは何食べてもおいしい、といってもカルボナーラとカシオエペペとピザとアーティチョークとジェラートばっかりだったかも。 けどそれだけでじゅうぶん。あと1週間いたら内臓のどこかが膨満してぶっ壊れる気が少しだけ、した。

あと、足も疲れたけど目もたいへん疲れた - 予備の目があと4組くらいほしい。

やっぱりローマはフィレンツェともミラノともぜんぜん違う街だった。
フィレンツェは中世がそのまま生き延びているかんじ、ミラノはモダンが押して変に捩れて居座っているようなかんじ、ローマは古代からのなんかがそこらじゅうにあって、それらはただそこに遺っているだけでなくて、よくわかんないエネルギーだか念みたいなのを放っていて、人々はみんななんか酔っ払っているような、でもたった数日の滞在でそんなのわかるわきゃないから、またくる。

1月頭からBFIで始まったFellini特集で、さっき”La dolce vita” (1960)を見てきた。
ローマの記憶を噛みしめつつ掘っていけたらなー。

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