ここ数年、年の初めの映画はクラシックを、ということにしていて(ちなみに昨年はThe Ghost Goes West (1935)だった)、今年はなにかしら? と思っていたらBFI(ここは1/1から通常営業)で、”Carole Lombard: The Brightest Star”という問答無用の特集上映が始まってしまい、こーんなに縁起のよいものはないので、夕方から続けて2本見た。もういっこ、Felliniの回顧特集も始まったのだが、正月からFelliniを見てしまうと、なんか終わらないどんちゃん騒ぎばっかりの大変な一年になりそうな気がしたので少し留まった。
NYの裕福な名家 - Lenox家のBronson (Frank Morgan) とCarrie (Winifred Harris)夫妻は真面目で人望も厚いのに息子のBertie (Henry Wadsworth)と娘のMarion (Miriam Hopkins)はそんなでもないふうなのでちゃんと結婚できるかしら、って親ははらはらで、Bertieは街のコーラスガールのAlice (Carole Lombard – ちなみにこれ以前のクレジットはCarol Lombardだった) に入れこんでいて、Marionはお見合いした男が余りにぼんくら(見ればわかる。すごい)だったので嫌気がさしてひとり車を走らせて夜の浜辺に逃げこんだら、そこにひとりで泳ぎに来ていたHenry (Charles Starrett)っていう車の整備工と知りあって、互いにつんけんしながらも近寄っていく。
元はブロードウェイで“The Best People” (1924)ていうタイトルで上演されていた戯曲を映画用に書き直して、そこに更にPreston Sturges(これがハリウッドふたつめだって)がダイアローグ周りのアレンジを施していて、これが素敵ったらない。 金持ち階級のバカっぽさを嘲笑うテイストはもちろん、Marionの思い上がりをHenryが真面目に諌めたりしてMarionがしおしおと寄っていくところ、ふたりが夜の浜辺で泳いでいって突然キスしちゃうところとか、AliceのアナーキーなダチがLenox家の堅物のおじさんをいじりまくるところとか、最後はあたりまえのハッピーエンディングで、パパがHenryとAliceを指して最近の若い子たちは我々よりもよっぽどしっかりしておるわい、っていうの。
主演はこれが長編映画デビューとなるMiriam Hopkinsさんの方で、伸び縮みするエモのもしゃくしゃした表現とか表情が絶妙にうまくて、Carole Lombardさんは役柄として芯のしっかりした娘、だったせいかややおとなしい。けど、お話しとしておもしろくて終わったらみんな大拍手だった。
No Man of Her Own (1932)
上のに続けて、元旦の20:00からの上映。 邦題は『心の青空』(.. まったくわかんない)。
これと同じタイトルでMitchell Leisen監督、Barbara Stanwyck主演の1950年に作られたすばらしい作品があるのだが、あっちはノワールで、こっちはrom-comなの。
のちにカップルとなるClark GableとCarole Lombardが最初で最後、唯一共演した作品 – これが撮られた時は、互いにぜんぜんそんな気配はなかったらしいのだが – そういう1本なの。
NYの裏社会で仲間とポーカー賭博で稼いでいる"Babe" Stewart (Clark Gable)は、いつものようにカモから巻きあげたところで、仲間で情婦のKay (Dorothy Mackaill)もうるさいし、警察も動きだしそうなのでしばらくNYを離れることにする。てきとーに列車に乗り込んででGlendaleていう街で降りて宿を取り、することもないので図書館に行ってそこで司書をしている真面目そうなConnie(Carole Lombard)に目をつけて軽くひっかけてみようとする。
Connieは退屈な街も仕事も放り出したくてたまらないのだがBabeの前ではよいこにして家族にも紹介したりして、でもクールなその裏には何かがあるようで、BabeがNYに帰るとき、別れ際にホームでコイントスの賭けをしてその結果ふたりは結婚してしまう(えー)。
NYで、堅気の会社員ということになっているBabeは昼間にどこかの会社に机と電話番号だけ借りて夜中の博打稼業を続けるのだが、Connieを毎日だましていくのが辛くなり、そのうち仲間から南米にでっかいヤマがあるから行かないか、ていう誘いを受けると..
ものすごく爽快だったり豪快だったりのオチが来るわけではないのだが、Carole Lombardさんは既にCarol Lombardさん – つーんとかしているのに瞳だけは静かに燃えてて、すべてわかっていてお見通しで何をやってもかなわないな – になっていて、その佇まいがちょっと爬虫類ぽいClark Gableのねちねち男と絶妙の相性を見せる。ま、最後には彼の方が溶けてしまうわけだが。
“To Be or Not To Be” (1942) のJack Benny(彼もすてきだけど)がClark Gableだったらなあ、とかちょっとだけ思った。
というわけで映画に関してはすばらしい一年の滑りだしだったの。
1.07.2020
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